□12 日常から抜粋した非日常
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日々が過ぎていく中で、しかし日常の形成はまだ終わっていないと言わんばかりにヒサキには色々な物事が起きた。
「この手紙は、その一つでもある…なんてね」
同室の誰もが寝静まった深夜、ヒサキはベッドに横たわりながら一枚の便箋を天井にかざした。
杖先を光らせたサンザシの杖を頭の横に置いているので、暗くて読めないという事もなく、その文面を読み取ることができた。
「ぬわあああんお手紙苦手ぇ!文面考えるのだるびっしゅ!!」
ぱさっとヒサキは便箋を持ち上げていた腕を投げ降ろした。
優雅かつ洗練された筆記体は他でもない、ルシウス・マルフォイが書き連ねたものだった。
最初の手紙を返し、実はその翌日にヒサキはその返信をクラッブから渡されていた。
その早さに軽く唖然としたのは記憶に新しい。
「ネタが無いんだよなぁ」
身体を起こし、ベッドの横にあるサイドテーブルに手紙を置きながらヒサキがぼやいた。
何を隠そうまだ10月に差し掛かってすらいないというのに、この手紙はすでに3通目の返信であった。
始めの時と違い、返信は普通の書面であった。
それで分かった事と言えば、
ドラコにヒサキの正体は知らせていないという事、友達を経由してのやり取りを承知した事、これからも文面で交流を続けたいとの事。
それから、話しぶりや言葉が丁寧かつ聡明なもので驚いただの、普段の振る舞いや優秀さもよく聞いているだのという類のご機嫌取りもふんだんに散りばめられていた。
ヒサキはそれに対して、
願いを聞き届けてくれた感謝と共に文通の了承と、前回の話しぶりはあらかじめ文面を考えて読み上げたから整理されていたように見えたのだという白状と謙遜、文通の返信には一週間前後の猶予が欲しい旨などを伝え、それをクラッブに渡せばすぐ翌日にゴイルから返信を渡され、了承の言葉を貰った。
しかし猶予を了承されたとはいえ、あちらは送った翌日にすぐ返信を寄越すものだからたまらなかった。
「だが強い心で私は我を通すぞ。一年後や半年後の自分のためにな」
ヒサキは鞄からルーズリーフとペンを出して下書きを考えた。
交わす内容はほとんどが世間話や前回の話題の感想など、特に当たり障りのないものだったが。
それとなくダンブルドアの様子を聞きたがっているように感じる文面が散見されたし、今回に至っては先日ドラコの誘いを断った事について言及されていた。
「とりあえずパパのことは聞かれてる事に気付かないふりしてー…ドラコについても適当言っとくか」
ヒサキはペンを走らせた。
「ドーレイコーくんにはー、私よりもっと血統のはーっきりしたースリザリンらしい友達と親しくしてほしいー的なーパンジーちゃんとか特にー可愛らしくて賢くてヒエラルキー上位でーきっと数年後には監督生になっているだろうというー有望さを感じまーすとかー、
私はすでにー列車でよくして貰ってからドレイコくーん達のことはーとっても大好きでーだからこそー私なんぞより相応しい友好関係を築いてくれたほうがー彼のためになると思ってぇーみたいなー…うん、そんなんで」
暫くして返信を書き終えたヒサキは、この文通における使い回し用の、上等で丈夫な黒い封筒に便箋を畳み入れ、杖で叩いて封をした。
「ドラコには人混みの孤独でいてもらわにゃ」
余談だが、勿論レターセットなど持っていなかったヒサキであるのだが、ダメもとでクィレルに便箋欲しくて困ってると伝えてみたところ、丁度余っていたからとなんと50枚近くも貰うことができたのだ。
ついた臭いなども消してもらったうえで貰い受けた便箋は、そこそこの品質をしていた。
その時ばかりは割と初めて、心からクィレルに感謝したのだった。
「ドラコは人を殺すのに恐怖する純粋でかわいい子だから私と居たらだーめっめー。
咎められないからやれと言われればそりゃあ16にはすでに高倍率受験の不安感にバイト不採用の不満や採用の喜びの向こうで待ち受けていた接客の苦しみそして人間への憎しみとその他諸々で愚かに心の穢れはじめた私は見知った人間だろうとそれを新鮮な作業のような気持ちで殺すだろうともよ」
ヒサキは歌いながら広げた紙類やペンを鞄に仕舞い、自分と寝床にスコージファイを掛けて綺麗にしてから眠りについた。
(次あたりお勧めの小説つって人間失格の英訳版〝No Longer Human〟でもお勧めしてくれようかしら。そうすれば翌日返信記録打ち壊せるのでは?いや、今度読んでみるよで流される気しかしないな…ていうかマグルの本なんて勧めらんねぇか。ならアーサーおじさんと会う機会にでも)