□12 日常から抜粋した非日常
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どんなに素晴らしい冒険をしたとしても、それはそれという奴だ。
悪意による行いにより発生したリスクや苦労や恐怖もまた純然たる事実であり、やられたらやり返したくなるのは何も子供に限ったことですらない。
「わかった!じゃあこうしよう。ヒサキが昼食時にマルフォイだけを中庭におびき出す。そして僕とハリーがやっつける」
「それマルフォイに忘却術かけるか殺して隠すかしないと私がスリザリンで社会的に殺されるじゃんかね?」
「殺…なんでそんなことぱっと思いつくの?」
「ヒサキのケチ」
「ハハハそう言われてもなあ。そう育った身だしなあ」
ニンバス2000が届くまでの約一週間ハリーとロンと会話する機会は訪れたが、決まってマルフォイにどのように仕返しをしてやるかという方向に話題が流れつくのだった。
「なにかないの?マルフォイの弱点とか……」
「わからないねー。たまに話はするけど、そこまで心許されてないんだよ私も」
ヒサキはなるべく加担しないように、そんな嘘を吐いた。
§
こと話題の中心たるドラコ・マルフォイに至っては。
「おい、ヒサキ」
「はい?」
「今日の夕食後、図書館で宿題をする予定なんだ」
「そうなんですね」
「一緒にどうだ?賢い者同士で」
ヒサキと仲良くなりたそうにしていた。
「私と?」
「ああ。」
しかし、無償の友情と肯定に飢えているのだろう少年を哀れに思うことはあれど、下手にドラコの孤独を満たしきってしまうのは、ストーリーの進行上大変によろしくないとヒサキは考えていた。
「先約がありますね。申し訳ありません」
「そうか?なら、明日はどうだ?」
「日を改めるくらいなら他の人を誘っては?」
冷たい物言いに、ドラコは傷付いた顔をした。
そんな顔をさせると分かっていたヒサキなのに、彼女も少し傷付いた。
「賢い者ならザビニ様とノットさんをお誘いになればよろしいかと」
余談だが、ある日の思い立ちで毎朝『おはようございます、ノット様』と言っていたところを『おはようございます、ノットさん』と変えて反応がないか試した時から、惰性でそのまま彼のことをそう呼んでいた。なお何の反応も態度の変化もなかった。
そんなことは兎も角として、
ヒサキの切り返しにドラコは眉を寄せて俯いた。
「僕は……ヒサキを誘いたかったんだ」
「それは困りましたね」
「……」
彼は静かに顔を上げた。
これだけ言っても、首を縦に振る気配が全くないヒサキをしばらく見つめてから、ドラコは白状するように言った。
「ノットには断られたよ」
ドラコはヒサキだけを誘ったわけではなかったのだ。それを後ろめたかったが、ヒサキが出した選択肢はすでに試していることを知ってほしくて、真実を話した。
「え?そりゃまたまたどうして」
ヒサキは全く気にせず首を傾げた。
彼女にとって、実害の無い言葉の綾などは全くどうでも良いことであった。
そんなヒサキの調子に、ドラコは少しだけほっとした。
「一人で勉強していたいんだそうだ」
「ほーん、ザビニ様は?」
「ヒサキはノットとは仲が良いよな」
「へ?」
「ノットを呼ぶとき――『Mr.』の言い方とか――ほかの奴より言いなれてて親し気じゃないか」
「あー。毎朝通りがかるというかすれ違うときに挨拶してるからだと思います。あと発音が比較的簡単だから馴染んだだけですよ」
ドラコはむっすりと眉を寄せた。
「……少し見てれば分かるんだぞ。ヒサキとノットは、すごく気が合うってことくらい。座る席とか…行動とか…好みのスタイルとか…」
「そうなんですか?」
「まさか気付いてなかったのか?」
「よく視界に入ると思ってましたが。でも毎朝普通に挨拶シカトされますし、最低限しか喋らないので、親しくはないですね」
「二人ともしょっちゅう空き時間にいなくなるけど、一緒にいるわけではないのか?」
「わけではないですね。彼の過ごし方なんて見当もつきません」ヒサキは肩をすくめ、少し間をおいてから「それで」と続けた。「話戻りますけど、ザビニ様は誘ったんです?」
「断られた。仲良くなった上級生と勉強するほうがいいからって。
残すはクラッブとゴイルだがあいつらは勉強が嫌いだし、ふさわしくない…傍にはいてくれるけど…それだけだ」
「あー…ザビニ様なるほど。教えてもらえるの良いですね。ドラコ様もそうすればいいじゃないですか」
「でも僕は……」君と、と言いかけて、しかしまた断られたら彼女を嫌いになってしまいそうな気がして、それは嫌だったから、ドラコは首を振って言い直した。「じゃあ、次の魔法薬学の授業は僕と組め。それならいいだろ?クラッブもゴイルも、全く役に立たないんだ!どっちとも組んだ苦労人同士、君もわかるだろう?」
「いいですよ、次回は一緒に組みましょうね」
ヒサキはクラッブとゴイルの悪口を言いたくなかったので、ドラコの質問には答えず、ただ要望の承認だけした。
――余談だが、次の魔法薬学の授業でヒサキはドラコ諸共大変に贔屓され、ハリーとロンとハーマイオニーにはとても睨まれ、クラッブとゴイルの鍋は爆発した――