□11 体育の授業
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翌朝。
予定通りヒサキは早朝から、昨日待機したのとまったく同じようにしてハリーとロンを待った。
今度は記憶の捏造と自己暗示をしながら。
お目当ての二人が出てくるとヒサキは人目の無い物陰で目くらまし呪文を解除してから、さりげなく通路に戻った。
何食わぬ顔で首から力を抜いて俯きがち少し歩き、ふと初めて二人を見つけたように明らかな反応をしてから、二人の背中目掛けて走り出した。
「ロン!ハリー!」
振り返った二人は、それぞれ微妙な表情をしていた。
「本当にごめんなさい!!」
ヒサキは全力で頭を下げた。
「ドラコがようやく意図を明かしたと思ったら、同室の女の子数名があいつの取り巻きで日付変わるまで見張ってきやがったんだチクショウ!!日付越えてからになるけど見に行ったら案の定誰も居なくて…ホーリーシットオブザイヤー出場ものですよこいつぁ!!」
ハリーはひとまず「今日も元気だね」と感想を言った。
その横でロンは、腕を組んで「ふーん、本当?」と疑いなじるように言いつけた。
たまに噴火するヒサキのテンションについては、二人とももう慣れたようだった。
ヒサキはこの勢いに驚かれて引かれるのを結構楽しんでいたので、それを受け流されて少しだけがっかりした。
「道中ピーブズに会ったよ。騒ぎ立てながらフィルチ先生呼ばれるもんだから見つかりませんようにってハチャメチャに肝が冷えたよ…」
さてもロンから寄越された想定通りの言葉には、昨晩の準備で故意に起こした出来事を思い出しながら恐ろし気に言ってみた。
――昨日の12時頃、ヒサキは再度目くらまし呪文を纏い、ピーブズの居場所を探して、今ハリー達と合流したように物陰で目くらまし呪文を解除してからあえて見つかったのだ。
しかし「いけないドーター!すぐにフィルチを起こさなきゃ!」などと騒ぎ立てられたところまでは一緒だが、そのままピーブズは寝付いているらしいフィルチを起こしに姿を消したのでその後は目くらまし呪文を再び纏って、比較的安全に寮へと戻ったのが真相だった――。
「そうなんだ。それはそれで大変だったね……いいよヒサキ、気にしないで」ハリーは言った。「おかげで凄い冒険ができたわけだし」
ロンもその言葉を聞いてウーンと唸ったが、やがて「まあ、それもそうか。結果的に」と言った。
「許してくれるの優しい……ありがとうハル……ありがとうロン……大好き……泣きそう」
ヒサキは泣きまねをするふりをしながら感謝してみた。
「わざとらしい」
ロンの呟きにヒサキは「えへ」とお茶目に笑った。
ハリーとロンはやれやれと肩を竦めた。
想像以上にすんなり和解できたようで、ヒサキは嬉しかった。
「それより、聞いてよヒサキ。昨日の夜、何があったか……」
「ちょっとストップ」
ハリーの言葉をロンが止めた。
「どうしたのロン?」
「あのさヒサキ、この際はっきりしておきたいんだけど」
ロンの言葉にヒサキはきょとんと首を傾げながら、内心どきりとした。
「ヒサキは、マルフォイとか…スリザリンの奴らに逆らえないんだよな?」
「そうだね」ヒサキは小さくとがった肩をすくめ、眉を下げながら微笑んだ。「向こう7年も自分の寮で嫌われたらおしまいだよ。ロンやハルが卒業までベッドをずっと貸してくれるって言うなら話は別だけど」
「それは無理だね。よーくわかったよ」
「うん」
ニヒルに頷いたヒサキに対し、ロンは厳しい顔をした。
「君はそこまで感じ悪くはないけど、スリザリンだ。だから、僕たちのことをすべて話すわけにはいかない」
「ロン!」
「ハルいいよ」
その言い草に声を上げたハリーだが、外ならぬヒサキがそれを止めた。
「いいよ。うん、私を疑うことは全く悪いことじゃないもの」ヒサキは全く傷付きもせずに微笑んだ。「間違いなく私はスリザリンで寝起きしているんだし、ロンとハルみたいにいざという時に助け合える同室の親友も居ないから」
「それは……そうだろうね」
「ヒサキ以外のスリザリンは、みーんな頭でっかちで、卑怯で、感じの悪い嫌な奴ばっかりだ」
ハリーとロンの同意にヒサキは「わかってくれてありがとう」と言った。「何されるかわからないから、ロンの言う通りスリザリンの生徒には逆らえないんだ。寮の中で一番の下っ端だよ」
「ヒサキはそれでいいの?」
ハリーの言葉にヒサキは「充分だよ」とニコニコ笑った。「大人しく逆らわずハイハイ言っとくだけで怒鳴られも殴られもしないし、酷い事もされないんだもの。生まれて一番の天国だよ」
「へ?」
「なんだって?」
「なんでもない。それじゃあ私、他に寄るところあるから、また後でね!」
ヒサキは明るい笑顔のまま手を振って走り出した。
ハリーとロンが引き留めるように声を上げたが、ヒサキは止まらず、横道を曲がっていった。