□11 体育の授業
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地上に戻ったヒサキは、黄色い瞳をギラリとつり上げたフーチが、ネビルの傍からは離れずに立ち上がったのを見た。
「何を考えているのですか!」
「すみません!」
フーチはカンカンだった。
飛んできた怒号に反射で謝りながらヒサキはすぐさま2本の箒を両手に持ち直すと、四方から聞こえる声を総無視してフーチの前へ走り寄り、頭を下げた。
「このままだと大事な教材が紛失するところでしたので、つい回収に出てしまいました!自己判断です。ごめんなさい」
「なんてバカなことを!箒が暴れ出して振り落とされて死んでいたかもしれないのですよ!?」
「おっしゃる通りです。もう二度としません。申し訳ありません、先生」
ギューッと頭を深く下げて謝るヒサキに、フーチは強く息を吐いた。
「反省しているのですね?いいでしょう。ええ、皆に動くなと言いつけなかったのは私の落ち度です。これから彼を医務室に連れて行くので、手伝いなさい。今回の件はそれで不問としましょう」
その言いつけにヒサキは感謝と了承の二つ返事をした。しかしこれで点数がもらえると思っていたヒサキはその予想は外れたことに、内心肩を落とした。
フーチは再びネビルに視線を向けた。
「待ってください」
もう一度フーチがネビルの上に屈み込む前にドラコが間髪入れず声を上げた。
「ヒサキの勇気ある行いに点を入れるのをお忘れではないですか?」
奇しくもヒサキが言いたかったことをドラコが代弁した。
「ご冗談を」フーチは、それを一瞥してつんと言い放った。「結果的には箒を回収する手間は省けましたが、そもそも、あの状況で飛び出すなど愚かとしか言いようがありません」
その回答にドラコやスリザリンの数名が何かと文句を投げたが、フーチはさっぱり気にしなかった。
2本の箒を急いで隅に置いて戻ってきながらヒサキは内心で(まじかーそっかー)とリアクションしていた。
「私がこの子を医務室に連れていきますから、その間誰も動いてはいけません。箒もそのままにして置いておくように。さもないと、クィディッチの『ク』を言う前にホグワーツから出ていってもらいますよ」
フーチが声を張り上げている間にヒサキはネビルの背を叩いていた。
「ネビル、ネビル、立てる?」
ヒサキの声にネビルは呻くばかりだった。
薬学での大失敗時以上に、涙と汗でグチャグチャの顔で、手首を押さえている。
箒から落ちた恐怖と手首の痛みで一杯一杯のようで、このひと悶着にも気付いていないようだった。
とにかくヒサキはネビルを立たせようと引っ張った。
「ネビル立って。立って治しに行こう。治ったら痛くなくなるから、少しだけ頑張ろう」
奮闘していると、生徒への言いつけを終えたフーチが「さあ行きますよ」と言って、ネビルを抱きかかえるようにして立たせた。
(さすがですアウトドアな大人の力)
ヒサキはすぐにその補助へとシフトした。
§
医務室から校庭へ戻る道中。
「ヒサキ・ヒカサキ・ダンブルドア」
「はい先生」
「あなたのことは各方面より伺っております。例えば、魔法薬学でも今回と同じようなことがあったようですね?」
「いやすみません友達の多いグリフィンドールと合同だって嬉しくてはしゃいじゃいましたホントにスミマセンもうしません慣れますもうしません」
「それで――箒に乗るのは初めてと聞いていましたが?」
「あっはい、その通りです」
「なるほど。初めてであれほどの飛行を行うとは。先が楽しみですね」
「え、あ、ありがとうございます。ですが実は、マグル暮らしの時に乗り親しんでいた自転車というものと操作性がそっくりだったので…あながち初めてというわけでは…」
「謙遜する必要はありません。それでも充分、一年生の中では上位レベルです。下手な二年生よりずっと」
「おふぇ、マジすか。恐縮です」
「そういえばスリザリンのシーカーは今年で卒業する予定ですが――もしや来年のシーカーはあなたかもしれませんね」
「いやそれはちょっと」
「何です?」
「あー…審判である先生を前にその、言いにくいんですけど、自分クィディッチはあまり興味なくて…」
「そうなのですか?ああなんて勿体無い…!」
§
フーチとヒサキがネビルを医務室へ引き渡して、校庭に戻ると当然ながらすでにハリーは消えていた。
ロンやドラコがそれぞれの主観で先ほどの出来事を説明し、ひとまず後ほどマクゴナガルに事情を聞くということにしてフーチは授業を再開した。
§
今日最後の授業でもあった飛行訓練の授業が終わり、そこそこ疲れたヒサキだが、また一人で暴れ柳に石を投げ夕食時まで時間を潰した。
そして夕食を摂りに大広間へ入り、スリザリンのテーブルへたどり着くが早いか、向かいからやってきていたドラコに捕まった。
「どこ行ってたんだ?まあいい、ヒサキも一緒に来い」
「え、あ、はい」
「おっと、ちょうど、面倒な双子のウィーズリーが出て言ったな。よし、行くぞ」
ドラコとクラッブとゴイル。
端っこの方で陰に隠れるように歩きたかったヒサキだが、今回はドラコに手首を掴まれてしまったため、できなかった。
どんどん近づくハリーとロンの姿にヒサキは半ば絶望し(いやあああ片方決別イベ来ませんように決別したくない決別は駄目…決別は駄目…)首を重力に委ねて軽く俯いたまま全力で存在感を消した。
どうあがいても無駄な抵抗ではあったが。
そんなこと気にもせず、ドラコはしっかりヒサキの手首を掴んだままハリーの元に到着し、ちょっかいを出し始めた。
「ポッター、最後の食事かい?マグルのところに帰る汽車にいつ乗るんだい?」
「地上ではやけに元気だね。小さなお友達もいるしね」
どう見たって小さくはないクラッブとゴイルにハリーの冷ややかな皮肉が向けられた。
しかしながら、原作と違い、クラッブとゴイルは本当に小さなヒサキの方に目を向けて疑問符を浮かべていた。
ドラコは鈍い二人をそれぞれひっ叩いていた。
その間に、ハリーはヒサキに声を掛けた。
「やあ、ヒサキ」
「やあ、ハ――」
それにヒサキが反射で顔を上げ終わるか否かのところで、
「僕一人でいつだって相手になろうじゃないか。」
ドラコがわざとそれを遮って大きめな声を上げ、ヒサキを隠すように進み出た。
ハリーはドラコを睨み付けた。
ドラコもまた嫌味たらしく攻撃的な表情をハリーに向けている。
「ご所望なら今夜だっていい。魔法使いの決闘だ。杖だけだ――相手には触れない。
どうしたんだい?魔法使いの決闘なんて聞いたこともないんじゃないの?」
「もちろんあるさ。僕が介添人をする。おまえのは誰だい?」
ドラコの売り言葉に、ロンがかみついた。
それを聞いたドラコは待ってましたとばかりに口を開いた。
「ヒサキだ」
「えっ」ヒサキは思わずドラコの背中を見上げたが、ドラコは振り向きもしてくれなかった。
ロンの「ふーん」という冷ややかに言う声がヒサキを硬直させた。
「真夜中でいいね?」ドラコが続けた。「トロフィー室にしよう。いつも鍵が開いてるんでね」
そう言い終わるなり、ドラコは踵を返した。
腕を掴まれたままのヒサキはそれに続かざるをえなかった。
「いやいやいやいや、ドラコさん?ドラコ様?聞いてないんすけど?ねえお待ちになって?」
ドラコはヒサキの声を無視した。
どうにもならずヒサキがせめてとハリーとロンの方を振り向こうにも、後ろに回ったクラッブとゴイルが邪魔で何も見えなかった。
(ファック!…と言いたいがまあ、無理やり隠されたって免罪符あるし誤魔化す手間が省けて良しってことにするか)