□11 体育の授業
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(これからしばらくの間は、嗅ぎ回ってるところ誰かに遭遇したとき、私を送った帰りって言い訳するんだろうな)
消灯後、例のごとくクィレルに寮まで送って貰ったヒサキは照明も落ちた談話室を通過しようとして――そこに居た人物に、にこりと微笑みかけた。
この時間帯の談話室には、六割程度の確率で血まみれ男爵が佇んでいて、今日も居たと言うわけだ。
ヒサキは嬉しそうな小走りで、しかし静寂を乱さぬよう足音は殺しながら血まみれ男爵に近付いた。
そうしてローブの裾をまるでドレスのスカートに見立てるようにつまみ上げ、出来る限りの美しいドレープを作りながら片足を90°目指して捻り引き、軸足を曲げた。
所謂見よう見まねのカーテシーだ。
「ごきげんよう男爵。良い夜を」
「……良い夜を。Miss」
今やお決まりになった挨拶を交わした。
最初の5回ほどは完全無視されていたものだが、感慨深いものである。
機嫌を上げたヒサキはそうして談話室を通過し、女子寮へと続く通路を踏んだ。
折角の静寂を乱したくない心持ちを勿論携えて、ここでも足音を殺し、冷たく湿った廊下を歩く。
ようやく自室のベッドへと着地したところでヒサキは鞄を開けた。
取り出したるは、金平糖とハンカチ。
ドラコの言いつけ通りにせんと、
張ったハンカチの上へ瓶を逆さまに傾けた。
(複数食すると発生したりする呪いでもかかってたらやだな)
ざらざらと。
残らずハンカチの上に流れ出た金平糖。
「おお?」
瓶が空になると、不自然にも、底の和紙が摩擦を失ったようにツルリと出てきた。
深い緑に銀粉。
緑なら金粉が一般的なので、もしや特注かしらと瓶を置いたヒサキは
それを拾った。
(おや)
ヒサキの手の中で銀が蠢いた。
紙を広げると、それはクネクネと繋がって、文字を形成した。
《杖先をここに》
首を傾げたが、思考の末、サンザシの杖先をそこへ当てた。
「!」
その和紙がおこしたアクションに
ヒサキは思わず杖を引いた。
が、寝静まった辺りを見渡すと、すぐに当てなおした。
杖を当てて流れ出たのは、音。
もう2秒ほど聞き直し、ヒサキはまた杖を引くと
冷たい廊下へ出た。
音の聞こえ方に違和感があった。
「グラス」
しゃがみこんで名を呼べば、片目の屋敷しもべが姿を表した。
囁くように用件を問うたハウスエルフに、ヒサキは目線を同じ高さへ調整しつつ聞いた。
「この音が聞こえる?」
もう一度和紙に杖先を当てたヒサキの問に、屋敷しもべは首を横に振った。
振られた二つの大きな耳がわずかな風をつくり、間もなく謝罪を始めたしもべを、これは聞こえなくて正解だと止めつつ下がらせた。
ベッドに戻ったヒサキは、紙に杖先当てなおした。
当てた場所ではなく、やや上の方から声が振ってきた。
まるで大人から見下ろされて話しかけられているような位置だ。
「《ご機嫌はいかがでしょうか?》」
喉仏を暖かく撫で転がすような、低く、若さのない男性の声。
杖を当てた者にのみ聞こえるようにされているのであろう声の主が誰であるか、察せないほど短く生きてはいない。
「《私はドラコの父。名前は、ルシウス・マルフォイと申します。
お噂はかねがねうかがっております……Ms.ダンブルドア》」
紡がれた呼称に、ヒサキは息を吐いた。
(魔法省のコネマンめ)
予想はしていたが、まさかこんなにも早く関係を急いてくるとは。
フットワークが軽いものだと感心した。
「《私は魔法省に勤めていて……あの偉大なMr.ダンブルドアが養子を迎えたと、ちょっとした事件になっているよ。
もちろん、息子も手紙によく君の事を書くんだ。
息子と同じサンザシの杖であること、もう完璧なエピスキーを使えること、変身術では一度で成功させたこと、魔法薬学では誰よりも早く完成させたこと……、
組分けでは少しトラブルがあったようだが、最初の一週間でスリザリンに9点ももたらしてくれたこと……
さすがはMr.ダンブルドアのご息女だ。
金平糖は気に入ってくれたかな?
今はこのようなかたちではあるが、いつか、是非ともお会いしたく思うよ。
これからもドラコや、私とも仲良くしてくれればとても嬉しい……
君さえよければ、ドラコに返事を渡してくれ。
この紙の裏側に杖を当てながら喋りかけてくれれば返事が録れる。
それでは、ごきげんよう》」
ヒサキは杖を左手に持ち替えて当てなおし、空いた利き腕で言葉を文字に書き取った。
書き取り、返事を考えた。
伝えるべきことは
・お手紙ありがとう光栄です
・金平糖、気持ちは有難かった
・ダンブルドアの娘という事は秘匿としてほしい、既に言っていないのならドラコにも。
・どうぞこちらこそよろしく
・一人が好きなんで、人気者のドラコにあまり頻繁に声を掛けられたくない。もしまたお手紙くれるときは友達を使うようにドラコに言ってくれ
感情込めて読み上げる練習は演劇部でやったが、そのままではやかましく芝居がかる。
日常に応用するためには抑え控える。
そうして、返信は自然に読み上げた。