□11 体育の授業
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ヒサキは、目をぱちくりとさせた。
その顔をクラッブが覗き込んだ。
「僕をMr.ビンスと呼んだだろ」
「その節はすみません」
「僕はそれが好きだ」
「はい?」
「好きだ」
「……呼ばれるのがですか?」
「好きだ」
「……それは良かったです、ビンス様」
つまり、そう呼べと言うことかとヒサキが試してみれば、クラッブは満足げにパイを食べ始めた。
そこでゴイルがヒサキの肩を叩いた。
「僕もグレッグでいい」
「グレゴリー様も?」
「特別な感じだ」
「そうですか、グレッグ様(なんか変な呼び方定着させちまった)」
そしてヒサキはそろそろ首が痛かった。
見上げ続けながら左右に呼ばれるものだから。
§
放課後
「み、Ms.ヒカサキ」
今日も隙あらば入り浸るヒサキに、クィレルがふと声をかけた。
ヒサキが返事と共に顔を上げたすぐそこに彼は立っていた。
「今見ているその範囲は……い、一年生ではやりません」
「そうですか?面白いのに」
「……ときに、」
「はい?」
「あ、あなたは闇の魔術に興味がおありなのですか?その範囲が、お、お、面白いのなら……」
「はあ……。
え?」
予想よりあまりにも早い段階で当たり障りのある質問を貰ったことに対し、ヒサキはとっさに反応できず、聞き返すような感嘆声を漏らした。
それをどう受け取ったか、クィレルはハッとした顔をしたのち、ブンと首を振った。
「いえ、いえ。いいえ、し、失礼しました。なんでもありません」
肩をちぢこめたクィレルを見て、
ヒサキはパチリと瞬きひとつぶんの時間だけ思考した。
「……先生って、以前まではマグル学の先生でしたよね」
そして切り出した。
「へ?な、なぜそれを」
「まあ、入学式に。耳を張って情報収集してたときに聞こえてきたんです」
ヒサキは、嘘と言い様のない嘘をついた。
「は、はあ……そうでしたか。それがなにか?」
「私、ハリー・ポッターと同じで物心ついたときからマグル育ちなんですけど……
例えばですね」
「?」
「包丁が魔法なら、闇の魔術はコンバットナイフだと思うんです。
もっと言うと、猟銃が普通の魔法なら、闇の魔術はショットガン」
「……」
あまりに年不相応な例え話に、クィレルは動きを止めて瞬いた。
そもそも、目の前の小さな少女がショットガンなどという単語を知っているとは思わなかった。
「そんな感じなんで、憧れる人は憧れるし、身をもって牙を向かれたことのない人にとっては、そりゃかっこよく見えるものだと思いますよ。
強そうに見えるから」
ヒサキはヒラリと何かを差すように開いた手を振った。
「ところで青ジャージといえばウージーですよね。早く走れそう」
「さ、最後のはよくわかりませんが……」
「ようは、使いようですよ。
それに特化して作られているだけで、どう使うかは使い手の自由じゃないですか。
ファイティングナイフで料理したって構わないですし、猟銃でも人は殺せます」
「……それで、け、結局のところ、あなたはどうなのですか?」
「便利な道具も好きですけど、ロマンのある道具も好きですよ」
「というと?」
「闇の魔術もそれ自体は怖くもなく、むしろカッコいいと思いますよ。
怖くない人が持ってるのを眺めるだけなら」
「…………そ、そ、そう、ですか」
「はい」
興味本意か探りなのか、クィレルの質問をどう結論付けるか。
ヒサキは判断しかねたが、
ひとまず年齢のわりには、意見が違うものにも比較的当たり障りなく聞こえるような言い回しができると認識されることにした。
比較的、言葉と感情を知っているから、同年代の中じゃ使える部類だぞと。
ニコニコ顔を崩さずに。
「そういえば先生。
ここの脚注にあるプロテゴ・ディアボリカ覚えたいんですけど」
「ばっ?!ば、ば、馬鹿なことを言わないように!!勉強をするなら、それを終わらせるフィニートを覚えなさい!」
「これプロテゴってついてますけどやっぱ闇の魔術に分類されたりするんでしょうかね?
素朴な疑問なんですけど。」
「聞きなさい!」