□8 授業
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「……痛いよね」
涙でぐしゃぐしゃになったネビルの表情と、群生するおできが痛々しさは、こっちまで痛痒くなってきそうなほどだった。
「歩くのしんどいよね。休憩したかったら喉からでも声だしてくれれば止まるよ」
階段の踊り場で様子を伺いながら方向転換する。
ネビルは痛みに呻き涙をにじませながら、黙って進んだ。
ヒサキは支えた。
スリザリンの生徒を思い出す。
「ありがたいことに、ウスノロのお手本がいらっしゃるわ」「おできがほら、鼻にまで!醜いわ」「良い気味だ」
「あのおチビは何を考えてるんだ」「ウスノロでもロングボトム家だから優しいんでしょ」「スリザリンとしての自覚はないのか」
分からない子供だからこそ、嘲笑できるものだ。
他を助けるという行為を貶せるものだ。
グリフィンドールを思い出す。
「あの小さいの、グリフィンドールの心配をして点を稼ぐ気だぞ」「狡猾だ」「腹では見下しているくせに」「医務室に着くまでにとどめをさす気じゃないだろうな」
分からない子供だからこそ、とっさに心配ではなく敵意が出るものだ。
階段を登りきり通路を歩いていれば、血まみれ男爵が向かいからスーッとやって来た。
全身を強張らせ停止したネビルとは対照的に、合わせて足を止めたヒサキはにこやかに「ごきげんよう」と声をかけた。
血塗れ男爵はそのどちらにも反応せず、通り過ぎていった。
ヒサキが大丈夫と言ってあやすように背を叩けば、落ち着いたのかまた歩き出した。
医務室の扉を押そうと前に出たところで、ヒサキはノックの手を直前で止めて、ネビルに振り返った。
「自分だけできないんじゃないかって焦る気持ち、よくわかるよ」
「え」
思わず声が出たネビルに改めて背を向けて、ヒサキは医務室の戸を叩いた。
出てきたマダム・ポンフリーはネビルを見るなり、「まあ!」と声を上げた。
おできを治す薬を作る途中の事故でこうなったと伝えればマダム・ポンフリーはネビルを医務室の中へと迎え入れた。
マダムがヒサキに労りの言葉と共にもう教室へ戻るように言いつけると、医務室の戸は早々に閉じられた。
ヒサキはグラスを呼び、屋敷しもべの姿現しでショートカットして地下牢教室の近くまで戻った。
教室に入れば、緑色の煙はマシになっていたが、まだ臭いが残っていた。
教室に戻り、生徒の鍋を見て回っていたスネイプの元までまっすぐ向かった。
「先生、ただいま戻りました」
「席に戻りなさい」
「はい」
戻りがてらクラスを見渡せば、まだ完成していない生徒と完成している生徒で半々くらいというところだった。
ドラコやノット、ザビニ、それにハリーやハーマイオニーなどは既に瓶詰め作業に入っていた。
席に戻ってくれば、クラッブは思ったよりも嫌悪を示してこなかった。
なんでも、私が退室した後、グリフィンドールが減点されただとか、ヒサキの行いにスリザリンは1点もらっただとかそんなことをまず教えてくれた。
その後で、薬は完成しているから瓶詰作業に入って良いと言われた事を、やっと教えてくれた。
ならばすぐにとヒサキは瓶詰作業に取り掛かった。
ヒサキは瓶のふたを開けながら、今時点で貰った得点を数えた。
(ノーバートの一件までに、20点は稼がなくては…)
授業が終わると、ハリーを初めとしたグリフィンドール生は今までの大人しさが嘘のような機敏さで後片付けを終え、飛び出すように出ていった。
一方、ヒサキは立ちながらのんびりと後片付けをしていた。
道具を出してもいなかったクラッブは早々に片付けを終えてドラコとゴイルの片付けを待って居る。
退室した生徒の席を確認して歩いていたスネイプがさりげなくヒサキの元まで近付いてきた。
通りすぎざま、スネイプは呟くように「残れ」と言った。
ヒサキはそのまま遠ざかっていくスネイプを見送ることなく、わざとなにか思い出したように羊皮紙を広げ直し、着席もせずに適当なことを書き足していた。
そうしていれば片付けの終えた生徒が次々退室していき、やがて気配的にはあと数人かと言うところ。
ヒサキは背後から足音が近付いてくるのが聞こえ、音の方に振り返った。
黒人。
それがザビニと分かるとヒサキは(なんだ自分への用じゃないな)と瞬時に判断し、微笑んで会釈をしてから自分の羊皮紙に向き直った。
「君で最後だぜ」
しかしザビニはヒサキの髪を手に取りながら話しかけた。
ザビニにとって自分はお呼びでないと確信していたヒサキは予想外の接触に目を丸くして、もう一度その姿を見上げた。