□8 授業
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スネイプがドラコの鍋に視線を向けたのを確認し、自分の鍋に向けて杖を降って仕上げる。
鍋からピンクの煙がたった。
成功だ。
教科書と鍋とを見比べて目をぱちくりさせたクラッブにウィンクをしたあと、ヒサキは席を立った。
そしてスネイプの方を向くふりをしてネビルを視界に入れた。
ネビルは鍋を火にかけたままで、
ヤマアラシの針を手にとって数えていた。
そのとき、スネイプがドラコの鍋を褒めた。
角ナメクジを完璧に茹でたから皆見るように、と。
それを聞いた、ネビルはギクリとして自分の鍋を覗き込んでから――恐らく自分の角ナメクジを確認し、自信がなかったのだろう。せめて早く完成させたいと思ったのか――焦ったように手の中の針を鍋の上に持って行った。
ネビルの手が開くと、ここぞとばかりにヒサキは「えっ」と目を見開いて声を上げた。
「火ィ止めろ!!」
ジュワッと。
投入されたヤマアラシの針を中心に鍋の中身が狂ったようにあぶき出し、緑色の煙を大量にあげ始めたと思えば――、
ヒサキが言い終わると同時に鍋は爆発した。
突然の発言に教室中の視線がヒサキへと向けられていたが、その視線は今、ネビルの方に向けられていた。
元は鍋であった、捻れた小さな塊が、重い音を立ててテーブルを転がった。
地下牢いっぱいに、強烈な臭いと緑の煙が充満した。
床に飛び散った薬品がじわじわと広がり、シューシューという音を立てて、付近の生徒の靴底を溶解していた。
生徒らはすぐに椅子の上へ避難したため、被害はほぼ無かった。
だがその中心の被害は甚大だった。
正面に居たネビルは案の定、緑色の煙を出す液体を浴びて、ぐっしょりと濡れていた。
濡れた場所には真っ赤なおできが次々と出来て、その痛みにネビルは顔を歪めてうめいた。
「バカ者!」
原作通り、スネイプの怒号が教室内に響き渡り、黒色の杖を一振りして失敗した薬を取り除いた。
「おおかた、大鍋を火から降ろさないうちに、山嵐の針を入れたんだな?
それを目撃したというわけだな?Ms.ヒカサキ」
「あ、はい」
向けられたスネイプの視線に素直にうなずいて見せればすぐに視線は外された。
スネイプに睨まれ、おできも広がってきて。ネビルはついにシクシクと泣き出していた。
「医務室に連れていきなさい」
苦々しげにスネイプがシェーマスに言い付けたところでヒサキは「あの!」と横槍を入れた。
「私が連れていきます。彼も後始末や続きがあると思うんで」
「君は自分の作業に戻りたまえ、Ms.ヒカサキ」
「いや、作業は一応…終わってて。瓶詰の前に確認お願いできればと思ったんですが」
ヒサキはピンク色の煙が立っている、自分とクラッブの鍋を指差した。
教室内が密かにざわめいた。
「丁度スネイプ先生を呼ぼうとしてそちらを見た時に彼の挙動に気付いて叫んだわけですし」
「……完成したとでも?」
「ました」
「……ならばよかろう。
Ms.ヒカサキ、君が連れていくことを許可する」
「はい。よろしくお願いします!」
ヒサキはスリザリン生のヒソヒソ声が聞こえるテーブルの間をぬって、ネビルに駆け寄った。
ドラコやクラッブの顔は見れなかった。
教室を出るとき、ハリーを理不尽に減点する声が背に届いた。
うまいこと注意逸らせたと思ったが、そうはいかなかったか。ヒサキは「うぅん」と声の乗った溜息を鼻から吐いた。
§
医務室に向かう道中。
ヒサキは驚きに涙がちょっぴり引っ込んだネビルの背を軽く押して一緒に階段を登っていた。
「ご、ごめん……っ、ぼ、僕……焦っちゃって」
ネビルは痛みに呻きながらヒサキに謝った。
大丈夫だと優しく微笑めば、ネビルの呼吸が少しだけ落ち着いた。
「気にしないで。
あと口元、動かすと痛いでしょ。無理して喋らなくて良いよ」
「ありがとう……」