□8 授業
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ヒサキはスネイプに視線を向けたまま、その大演説をガリガリと羊皮紙に書き写していた。
たまに文字は曲がってないか間隔はおかしくなってないか一瞬目を落とすが、ほぼスネイプの勇姿を見届けていた。
手元を殆ど見ずにノートやメモを書き取る技能は、すでに学生時代を全うしたヒサキにとって難しくもなかった。
――教科書や、黒板いっぱいに書かれた文字や図だけでなく、教科書にない教師の発言や解説をひたすらノートに写すなんて数えきれないほどやってきた。その上で自然に身に付く技法だ。(もっとも、当然最初は文字が変な方向に向かったり漢字がバラバラになったり間隔が広すぎたり狭すぎたりして、それなりに身に付いたのは15才を越えてからだったが)――
「―――ただし、我輩がこれまでに教えてきたウスノロたちより諸君がまだましであればの話だが」
スネイプの大演説が終わり、シーンとした空気の中、数秒遅れてヒサキの羽ペンの音も止まった。
その数秒のうち、筆記音を聞き付けてスネイプは音のする席――話を聞かない不真面目な生徒――を睨みつけた、つもりだったが。
予想外にも、真面目に話を聞くヒサキの顔と思いきり目があったため、スネイプは何も言わずにヒサキの羊皮紙を一瞥し、視線を戻しただけだった。
ヒサキの羽ペンの音が止まり、数秒後
「ポッター!」
スネイプは声を張り上げた。
スネイプがハリーをいじめ始めたのを見計らってヒサキは視線を手元にやり、書き取ったメモの最後に閉じ括弧を付けていた。
そしてクエスチョンマークを書くと、ハリーへの理不尽な質問を書き取って、その下にアンサーマークと解答スペース幅をとってその次のクエスチョンを書いていった。
(生ける屍の水薬もベアゾール石も後に出番が来るから嬉しいなあ)
ヒサキは他の授業同様に、お得意の『話を聞く姿勢』を披露し、フムフム静かに頷きつつペンを走らせた。
「―――どうだ? 諸君、なぜ今のを全部ノートに書き取らんのだ?」
いっせいに羽ペンと羊皮紙を翻すような音が教室内に響き渡った。
「ポッター、君の無礼な態度で、グリフィンドールは一点減点。
Ms.ヒカサキ、君の慎ましく勤勉な態度は大いによろしい。スリザリンに一点与えよう」
慎ましく、のところでスネイプはこれ見よがしにハーマイオニーへと視線を向けていたため、スリザリンのテーブルから「でしゃばるからだ」などとという忍び笑い声が聞こえてきた。
ハーマイオニーは、思いきりヒサキを睨むと、やがて視線を落として拳を握りしめていた。
とうのヒサキは(ファッ!?)目を丸くしていたが、隣に座っているクラッブによくやったと肘でつつかれたところで我に返った。
とっさに微笑みを作り「ありがとうございます、先生」という空返事が口をついた。
掠れた声が出るかと思いきや、とっさに出たのは、静寂にすぅっと溶け込むような、聞き触りのよい声量と発音だった。
まるで打ち合わせでもしたかのように。
見渡せば、ナイスとサムズアップで笑いかけてくるスリザリン生徒。
それに微笑みで返し机に向き直りながらヒサキはまさかと思案した。
夕食以外に顔を出さない、夕食時も誰とも会話しない自分を見たスネイプはもしかして、自分がクラスで浮いていると思って、スリザリンに溶け込めるよう気を利かせてくれたのか?
だとか。
定番の事前メモを何となくでやってただけなのに、まさかハーマイオニーを笑い者にしちゃう結果となるなんて。思ってたのと違う!
だとか。
スリザリン贔屓素晴らしいこの学年で恐らくはじめてスネイプから点を貰ったぞウォウウォウたまんねえ!!
だとか。
しかしペアになったクラッブに、
『なにも言わずスネイプの視線を遮断し口も出さず全部やらせてくれるよう』誘導説得しているうちに、考えごとはさっぱりと消えていた。