□6 仕込み(今回から三人称視点です)
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フリントは探るような目つきでヒサキの前までやって来ると、その右腕を無遠慮に掴んだ。
そのまま何かを探すように、にぎにぎとしながら角度を変えたりした。
「今、俺の手がちょっと滑れば勝手に折れそうだなあ?」
フリントはニヤリとして尋ねた。
ヒサキはただ掴まれている部位を注視していた。
抵抗もなく、声もなく、鳥肌立っている様子も、緊張している様子もない。
が、やがて静かに顔を上げ、困惑と信頼の微笑とともに首をかしげた。
危機感の無い子供そのものであったヒサキの姿に、フリントはフンと鼻をならして手を離した。
「今日は何も仕込んでないようだが?」
「と、いいますと?」
「昨日は杖のようなものを仕込んでいただろう。
俺はクィディッチをしている分、腕の動きには目敏いんだ」
「!?、洞察力の化身ですか!!?
わーわーわーその通りですッ!人混みで無くさないように杖を固定していましたッ!え、すごい」
ヒサキは驚きに目を開き、そしてそれを誤魔化すように談話室に声を響かせてフリントを見上げ、感心したいたように手を組んで口元に寄せた。
フリントはまんざらでもなさそうに口の端をつり上げた。
ヒサキは自分の懸念が的中したことに冷や汗の出る思いと、言い訳のつく早い段階で杖を外したことによる自分の判断の正しさにほっとしていた。
「それで今日は杖つけなくていいのか?」
「いやあ、改めて考えて不便かなと。あと見付かったらですが変な目で見られるかなと。
現にあなたの目に留まりこうして確かめられちゃいましたし」
「まあ」
「不審物の警戒を怠らないことは素晴らしいと思います!私、感動しちゃいました!」
続けて懐いたような素振りを見せてしばらく雑談とともに持ち上げれば、フリントはヒサキのことを敵ではないと認識したようで、警戒心を解いて受け入れていた。
そしてヒサキが――彼にとって劣等生の集まりである――ハッフルパフに配属されかけたことも忘れ、今度はフリントの方から雑談を持ち掛けていた。
フリントは、今日この時間に起きたのは偶々で、折角だから魔法の練習をするつもりだったと述べた。
ヒサキはその勉強熱心さを称賛し、気を良くした口から滑ってくる言葉が面白く、それを拾ってまた賛辞を述べてさらに口を滑らさせていた。
結局のところフリントは、談話室という必ず目につく場所で高学年の魔法を披露し、スリザリン新入生全員を朝から驚かせ羨望の視線を得たかったようだった。
それにヒサキは(早々に新入生へのマウンティング行うのかたまげたなぁ)と心の中で感心したのだった。
そんな楽しい接待をしばらく行ったあと、まだ早朝であったが、ヒサキは時間が気になり会話を切り上げた。
「あっ!お引き留めしてしまい、申し訳ありませんでした!
改めてこれからよろしくお願いします」
「ん?ああ。」
「それでは私はこれで。失礼します」
「おい、出るのか?朝食の時間は当分先だぞ」
「存じております。探検です」
「こんな朝っぱらからか?」
「多少迷ってもいいように早めに出たかったんです。
お気遣いありがとうございます」
結局これだけ話したというのに名乗り合うこともなくヒサキは談話室を出た。
フリントは気を付けろよとだけ言って、特に名乗りも呼び止めもしなかった。
§
ホグワーツの校内はとにかく複雑怪奇で、移動はかなりの骨だった。
6:30時頃になり業を煮やしたヒサキは、辺りを見渡し絵画やゴーストの目が無い通路の端でグラスを呼んだ。
大人しく、囁き声で話す静かな屋敷しもべ妖精のグラスが当然のように姿を表し、ヒサキが目的地を告げれば、静かに先導した。
長い道のりと階段に息を切らせながら、ヒサキは無事に8Fへと到着した。
ここから食堂への道を訪ねルーズリーフにメモし終えると、グラスを下がらせた。
そしてひたすら、おできを治す薬を短時間で作成する練習を、効率的に、存分に、何度でも、様々な方法を見比べながら、できる場所が『必要』だと念じてうろうろした。
扉は、現れた。