□6 仕込み(今回から三人称視点です)
ドリーム設定
ドリーム設定□このブックはドリーム機能を使用しています。
名前を入れると、登場人物に自動変換します。
より楽しく読むために名前を記入して下さい。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ヒサキは直接的に誰も話し掛けてこない事実について「警戒されてんなあ」と楽しそうにしていた。
そしてヒサキは気が付いた。
就寝前に、同じ部屋の全員が、おそらく家族に宛てるのであろう手紙を書いていたことに。
(なるほど同胞愛。家族愛)
ヒサキは心の中で微笑ましく頷いた。
――実際は、ヒサキへの接し方についての相談の手紙だったのだが――
そして自分だけレターセットすら持っていない疎外感を感じたが、不快感はなく、むしろスリザリン生の生態を早々に垣間見れてヒサキは嬉しい気持ちだった。
§
全員が寝静まるまで、ヒサキは耳をすませていた。
やがて自分以外の全員が寝息やいびきをたて始めたことを確認すると、ヒサキは布団を退けて身を起こした。
バッグを掴んで寝室を出て、ヒサキはぶるりと身震いをした。
談話室に続く通路の空気は、深夜ということもあり冷たく、声を出すのをためらうほどにシーンとしていた。
ヒサキはバッグからハッカ入りキャンディがくるまっているハンカチを取り出した。
「ピーキー。グラス。おいで」
名を呼べば、二体の屋敷しもべ妖精が姿を表した。
「来てくれてありがとう、私の可愛いハウスエルフ」
ヒサキは満足げに微笑んだ。
二体の屋敷しもべ妖精はヒサキの声を聞くと、地面につくほど深くお辞儀をした。
片耳の屋敷しもべ妖精が穏やかに言った。
「ご主人様がピーキーをお呼びになった。ピーキーは現れるのです」
片目の屋敷しもべ妖精は囁くような声で言った。
「ご主人様はグラスとピーキーを拾い上げてくださった。何なりと」
二体に向けてすでにホグワーツの厨房を手伝うよう申し付けていたヒサキはまず、調子はどうかと近況を聞いた。
その返答から、うまくやっていけていると判断したヒサキは、よかったと胸を撫で下ろした。
そしてヒサキは二体にハッカ入りキャンディを一つずつ渡し「良かったら食べて」と、目の前で最後のひとつを口に入れて見せてから持ち場に戻らせた。
ピーキーはキャンディを掲げてピョンピョン跳ねまわりながら、
グラスは、宝物を貰ったみたいに目を潤ませ、
二体は姿を消した。
寝室に戻ったヒサキはバッグをベッドに置いた。
「ミルキークォーツ君でーておいで~」
歌うように口ずさみ、鞄からダイアゴン横丁で買っていた35ガリオンの水晶セットと暴れ柳の杖を取り出した。
その乳白水晶を15cmの杖で小突けば、それはたちまち4つにばらけた。
ヒサキはそれらを、同室の女の子などに無意識に蹴飛ばされたりしないよう設置場所を工夫しつつ、自分のベッド周辺を囲う様に置いた。
「…お?」
すると、ふわふわと白い霧が範囲内を確認するように出始めた。
しかし少し薄っぺらい気がしたヒサキがその霧に向けて「高さの範囲はこの部屋の天井から床までにして欲しいんだけど…出来たりする?」と言えば、言う通りに霧が広がった。
「あ、いい感じいい感じ。その範囲でお願いします」
そう言うと霧はすうっと消えていった。
聞いた説明通りに動作した魔道具にヒサキは満足げにうんと頷いた。
そうして自分の領域を意識外へ逸らすための仕込みを終えたヒサキは、靴を脱いで自分のベッドの上へと戻った。
そのまま眠るのではなく、胡座をかいて座り、目の前に改めて三本の杖を並べた。
そして今日、キャラクター達の前で無事に格好つけられた喜びを伝え、サンザシの杖を誉めて撫でた。
そのあと、次にヒサキはハンノキの杖を持ち、振った。
何も唱えていないのに、いつも姿を現すミルメコレオを見上げる。
獅子と蟻が歪に、ある意味では綺麗に融合したような姿。
まるで守護霊のように銀色に透けていて、普通の獅子と同じくらいの大きさをしていた。
最後に改めて暴れ柳の杖が壊れていないかよくよく確認し、たった今さっき仕込みの際に機能してくれた礼とともに、明日もよろしくと撫でた。
そしてヒサキは思案した。
杖を両腕につけるにしても、11才の身体にハンノキの25センチは、普通に着けると袖口からはみ出る。
だから、そうならないよう肘側につめてごまかしていた。
しかしながら、腕を曲げたときに現れる謎の出っ張りは…ローブを着ていれば隠せるが、ローブを取ったときのそれは怪しすぎる。
今日試しに着けて、特に誰にも聞かれなかったわけだが、私が話しかけんなオーラ出してて聞かれなかっただけかもしれない。
杖がばれたら、どこで買った?ってなるだろう。
出所がばれたら目を離したハグリッドの立場が悪くなる。
これは余計な面倒増やすために買ったもんじゃない。
「もう少し背と腕が伸びてからにするか」
ヒサキはそう呟いて、ハンノキの杖を鞄の中に投げ入れた。
他の二本も同じようにバッグへと仕舞いこんでから、やっとヒサキは布団を被り、眠りについた。