□3 買い出し
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オリバンダーの店はまあ今にも壊れそうな店構え。
室内に腰かけてしばらくすれば現れるオリバンダーさんにハグリッドとハリーは飛び上がった。
ただ腰を浮かせることもなくじっとしていれば、その場の空気は完全にハリーが中心のものとなった。
素晴らしいシアターを鑑賞していれば、ハリーの杖が決まった。
赤と金の火花が散る様子が面白い。
お金を払ったところでハリーはようやく私のことを思い出したようで、こちらに振り向いて私の名前を呼んだ。
いくら楽しみだったからって友達の存在を忘れるなんて面白い子だ。
重い腰を上げてオリバンダーさんに頭を下げる。
「私も杖を見に参りました。見繕っていただけますか」
オリバンダーは勿論と頷いた。
では私はハリーの隣。オリバンダーの前まで歩み、利き腕を差し出した。
「ヒサキ・ヒカサキと申します。よろしくお願いいたします」
「よろしく。君も右?」
「はい」
「では失礼します」
さっきまでハリーを測定していた巻き尺に囲まれ、測られた。
「アジア系に見えますが、出身は中国?」
「それより少し東の日本という島国です」
「おお、日本ですか。
素晴らしい、日本の方が発する呪文はとくに発音が素早い」
「あー…」
「言語そのものだって、同じ意味なのに目まぐるしく聞くものを混乱させる母音の滝は抑揚が少なく不規則なのに一定で隙がない……文字だって、3種類も難なく扱う。全く不思議じゃ」
「まあ、確かに日本語は独特で難しいと聞きますけれども」
ハリーが「そうなの?」と興味深そうに訪ねてきたので「慣れだよ」と返しておいた。
「さあ!
ふさわしい杖を選ばなくては……はて。その年でずいぶんと英語がお上手ですな」
「母国語を誤魔化す薬です」
「なるほど。
ならば――気付いてないでしょうが――その滑舌のよいすべらかな早口の説明がつく」
「そうなんですか」
「ええ。素早い呪文の素質がある。
さて日本といえばもうひとつ、サクラの杖が非常に重要視されていると聞きます」
「ああ、まあ日本において菊や桜は国花として特別に愛されていますね」
「春が近づくと、国中の人々が――マグルも魔法使いも関係なく――桜の開花を待ち焦がれるとか」
「まあそうですね。国を挙げて」
「そうでしょうとも。
そう、世界的にもサクラの杖は非常に不思議で珍しく、どんな芯材を用いても、死をもたらすほどに強力な力を宿します。
特に、ドラゴンの心臓の琴線との組み合わせは、並外れた自制心と精神力を持つものにしか扱えない」
「じゃあ私には無理ですねハハハ」
「さて、そんな日本からのお客人である君には……、
この杖などいかがかな?」
オリバンダーは手近な箱の山に手を伸ばして、ひとつ掴み取った。
いつのまにか巻き尺はどこかへいっていた。
「日本で育ったサクラの木に、不死鳥の羽根。30センチ。独立心が高く、頼りになる」
取り出された杖は、立派な迫力があり、そして私には過ぎたものだと思った。
そぐわない気がした。
「私にその杖は買い被りすぎです」
「杖はそんなことないと言っておる。まあ、持って振るだけでも」
差し出されたことには仕方がないので手に取れば、手応えがあるというか、高貴というか、これは駄目だな。
私が触れて扱うには立派すぎる。
「振ってごらんなさい」
言われた通り振れば、淡い桃色と銀色の光が糸のように広がり、私の全身を逃がさんとばかりに絡み付き私の視界をふさいだ。
わーたすけてー。
「いけない!」
素早く杖をもぎ取られた。
光はたちまち消えて、見渡せば驚いた顔のハリーとハグリッド。
「いけない?とても良さそうに見えたけど」とハリーが聞いていたが、オリバンダーは杖を箱に仕舞いながらだめだめと首を振った。
「杖がヒカサキさんを気に入りすぎていました。忠誠ではなく、恋のような執着。むしろ支配したがっていた。珍しい!非常に、こんなことは珍しいが、良いことではありません」
なるほど杖との恋…ふむ…新しいジャンルだな。
「それに使い使われるという関係に対してヒカサキさんの想いが負けていました。杖に主導権を奪われるのは、とても良くない。
……さあ次はこちらをお試しください。
トネリコに一角獣のたてがみ。23センチ。柔軟性があり、純真でやさしい。」
受け取って振れば、杖が青い煙を噴いて私の手を覆ったと思えばまた杖を取り上げられる。
「駄目だ。また想いが負けていたね」
「そんな人を意志薄弱みたいに」
「そうではない、君は物に対する想いがとても優しい。
きっと、使うとか、支配するというより、使わせてもらう、力を借りる、という心構えでいますでしょう?」
「ほとんどの日本人はそうなんじゃないですかね」