■ヒビキ
□ドリーム設定
主人公□情報
名「オニゴエ ヒビキ」
体「黒髪黒目。血色の悪い真っ白な肌。かなりの細身。身体虚弱」
装「伏し目癖が付いている。ハーフリムタイプの四角眼鏡。背中に届く髪を七三分けにして後ろで束ねている」
□設定
転生トリップ者。前世は三次元
□名前変換
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「鬼越さん?」
突然笑顔を消して機敏に動いたヒビキ。
それに気付いた女子がとっさに聞いたが、ヒビキには聞こえなかった。
「(涯くんが動いた……!MADでしか見れないと思ってた……動いてる涯くん……!うっ……感謝っ……!世界に感謝っ……!)」
他の女子数名もそれに気付き、不思議に思ってヒビキ視線の先をたどった。
その先には、教室を出て行くところの涯が居た。
「ああ……」
それに気付くと女子たちは嫌悪感を隠すことなく顔を歪めて口を開いた。
「あいつ怖いよね……あの顔…見るからに不気味っていうか……」
「あれには関わらない方がいいよ……鬼越さんも……!」
「夏休み前とか……ほとんど登校してなかったし……!」
ヒビキは女子たちの陰口を聞き流し、涯にくぎづけだった。
一方、女子の言葉も当然聞こえているだろう涯は、煩わしそうな……今にも舌打ちしそうな顔で教室を出て行った。
「(……!)」
同時にヒビキ、立ち上がる…!
涯が出て行った方を見つめたまま……!とっさに……!
「わっ!?」
「鬼越さん……!?」
「あっごめん!びっくりさせて」
急に立ち上がったヒビキに驚いた女子数名に気付いたヒビキは、それに向かってすぐにペコッと頭を下げた。
「それで もひとつごめん皆!ちょっと席外すね!すぐ戻るから……!」
そのまま笑顔で手を振りながら、駆け出した。
涯が出て行った廊下へ……!
当然、教室はざわめく……。
女子間……そして横目で見ていた男子たちも……!
「え……どういうこと……?」
「もしかして……知り合いだったり?」
「どういう関係……」
「……行ってみる?つけて…」
ざわ…ざわ…と、憶測が飛ぶ……!
ヒビキ、浅はか……!!
転校直後にこれは目立ち過ぎ…!!
浮かれ過ぎ……!
「(涯くんが動いてるオアアア!!しかし感動にはまだ早い……!確かめねばならん……!!一刻も早く…先入観の無いうちに……!!)」
とにもかくにも、涯を追いかけて廊下に出たヒビキ……!!
すぐに追いかけた為、涯の背中は難なく見つかった!
そして足音を殺して様子を伺いながら追いかける……どこまで行くのか……!
「(どこまで……?)」
涯は、同階の端にある階段を曲がった。
ヒビキは迷わず追いかけた。
「どわっ!?」
曲がったところで、その階段すぐ手前に、涯が振り向いて立っていたものだからヒビキは思わずビビって跳ねた。
「……何の用だ……?」
涯は当然ながら不信感全開でヒビキを睨み付けていた。
ヒビキはふうと一息吐いて縮こまった身体をなだめてから顔を上げた。
そして意を決した。
「第一印象から決めてました!好きです!付き合ってください!」
バッ!と90度に届かんばかりの最敬礼!!
全力!教壇でした綺麗な背筋など忘れたような全力の最敬礼!!
そして突然の告白!
「は……?」
これには涯も耳を疑った!
「(えっ……ええええッ……!?)」
ついでに、こっそりつけて聞き耳立てていたクラスメートも…!
「(……)」
涯は、何かの間違いかと思って思わず天井を見上げた。
そして視線を降ろす。
しかし目の前で頭を下げる転校生の姿は確かにそこに居た。
「……何だって?」
「一目惚れしました!好きです!付き合ってください!」
「(……)ククク……!一目惚れ……?オレに……お前が?」
頭を下げたままに復唱された言葉は、到底信じられたものではなかった。
信じられなさ過ぎて、なんだか笑えて来た。
「冗談きついぜっ……いくらなんでも無理がある……!」
「……」
「どういうつもりだ……何が狙いだ?」
ヒビキは返答することなく、黙って頭を下げ続けた。
その姿を見下ろしながら、涯はひとつ思い当たった。
「……本気にしたオレを笑いものにでもして……ウケでも取る気かよ……?」
思い返せば、彼女は明らかに周囲に媚びていたように思える。
その延長か……と。
「乗ってたまるか……その手に……!『断る』ッ……!ノーだ、返事は……!」
吐き捨てるように涯は言った。
断ると。
姦しさにウンザリしてここまで来た涯は、この場所も居心地が悪くなったので、もっと移動すべく方向転換した。
「好きなんやが……?」
その時、彼女の口はボソリと衝動的に滑った。
「?」
何か言った彼女に思わず足を止めてヒビキへと視線を戻せば、丁度ヒビキがガバッと頭をあげた。
「フッたってことでいいんですよね」
「だからどうした……?」
「いっぱい好き……!(ヤッバ解釈一致ありがとう……感謝……神に感謝……)」
ウッとヒビキは口元と頭を押さえて軽くふらついた。
興奮半分、急に頭を上げた際の眩暈半分。
「はあ…?」
「いや……これで浮かれてOKなんてされた日にゃ死ねボケでしたけど……!だめだ嬉しい……!」
「何言ってんだお前……?」
「いや、はい。すみませんでした。見た目と雰囲気に惚れて性格の方も試させていただきました。結果、ガチで好きですお付き合いを前提に結婚してくださいあとお名前伺ってもよろしいでしょうか!」
ヒビキ、再び頭を下げてまくし立てる!
涯、当然ながら困惑!
「……ふざけてんのか?」
「……ちょっとふざけてました。すみません」
その言葉にヒビキはクスッと笑ってゆっくり頭を上げた。
「あなたが好きなのはマジですけど」
「だから、それが一番信じらんねえんだっ……!」
「あはは……!それで、お名前聞いてもよろしいでしょうか」
「(……)本当に知らないのか……?」
「うん。名簿は見たけど顔写真ついてないし誰が誰だか」
「名前も知らねえで告るか……?普通……?」
「そう言われましても」
ヒビキは飄々と肩を竦めた。
「……工藤涯だ」
「工藤くん」
即座に復唱したヒビキに、涯はなんだかドッと疲れて、溜息を吐いた。
「もういいだろ…!帰れっ!教室に……!」
「あ、はい。そいじゃ、ありがとうございました。また後で」
「……」
好き勝手なように見えて涯の言葉に逆らうなどとんでもないヒビキは、言われるまま手を上げて踵を返した。
足音は、教室へ向けて素直に遠ざかっていった。
「(……)」
残された涯はとりあえず屋上に昇り、直後の授業をサボった。