□1話・褥は虎穴に移り九死を得る
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「うっ?(まぶしっ)」
彼女が我に返ったのは、朝日がその目を奪った時だった。
彼女の追撃が止まったにもかかわらず、鬼はぐったりとしたままだった。
すぐにその身は、ツタと共に、朝日に焼き潰されてボロボロと灰塵に帰していった。
彼女は目の前で驚異の霧散を然りと見届け、思わず長い息を吐いた。
瞬間、
「ゔっ"!゙」
忘れていた痛みがその身を一気につんざいた。
お気に入りの甚平どころか下着まで引き裂かれ、完全に全裸かつ全身汗だく。
ずっと同じ姿勢をとっていた足は完全に痺れて感覚がない。
夜通し振るい続けた腕は当然の如くギッシギシで、世界の悪夢のように痛い。
同様に痛む拳は、石を握り込んだまますっかり固まってしまって、その石を放すことすら今は出来そうにない。
しかも石の角が掌を切って拳の中で出血しているようだ。
出血といえば、彼女の全身も、もがく鬼やツタに引っ掛かれたり殴られたりした傷と打撲だらけ。ツタについていたり鬼がばたついた折に跳ねたりした土と血と汗は混じりあい、擦られたりして全身ドロドロ。
とても見れたものではなかった。
さらに、現状に安堵する暇もなく、とてつもなく重い泥のような眠気がドサドサとやってきている。
「(あれこれ完全に肉食獣の据え膳状態で気絶しそうなのでは?)」
彼女は再び命の危険を感じた。
「(……ここまでやって死ねようか?いいや、死ねねえよなあ!!)」
そうして彼女は己を奮い立たせた。
痛み痺れ軋む全身になお力を込め、なんとか這ってでも動こうとした。
しかし無慈悲にも、そこで草を踏む音が聞こえてきた。
「(なんでええええ!!今までネズミ一匹見かけなかったのに!!肉食獣くん帰ってくるの早すぎでは!?)」
彼女は必死にハッハッと断続的に呼吸を早めながら、なんとか横に転がってでも逃げようと横倒れになろうとした。
しかし鬼にマウントとった状態のままバカになっている足腰は固まったまま動きやしない。
全く身動きもとれず、しかしそれでも彼女はめげなかった。
土草を踏む音は、もうすぐ後ろにまで迫っている。
ならばもう、できることは、
「(脅かして追い払えればいいんだろォ!)うおおおおおおガオオオオオオーーッ!!」
凄まじき気合いと根性。
彼女は、大声をあげながら両腕を振り上げ、その勢いのままついに無理矢理立ち上がった。
すでに全身の感覚は恐ろしいことになっている。
「グオオオオオオーー」
最後の力を振り絞って背後の獣を恫喝すべく、威嚇の声を上げながら、ものすごい形相で彼女は振り返った。
そして
「オオァ"Σあぁ゙あ゙ッ゚?。!゚。ハエッ!゚?」
そこに居た『人物』に脳味噌が引っくり返りそうなほどに眼を剥いて言葉を失った。
「―――な、」
その人物は。
自らに伸びてくるその大きな手は。
「南無大師遍照金剛。光明淸淨句是菩薩位ぃゲホッワグッ…うう、わ…我が生涯に、一片の……悔い無し……ぃ」
彼女は速やかに合掌し、一気にその意識を手放したのだった。
そしてその句を受けた人物は。
「……!」
彼女の吐いた耳慣れぬ真言に若干の驚きを抱きつつも、その身体を然りと受け止めたのだった。
彼女が我に返ったのは、朝日がその目を奪った時だった。
彼女の追撃が止まったにもかかわらず、鬼はぐったりとしたままだった。
すぐにその身は、ツタと共に、朝日に焼き潰されてボロボロと灰塵に帰していった。
彼女は目の前で驚異の霧散を然りと見届け、思わず長い息を吐いた。
瞬間、
「ゔっ"!゙」
忘れていた痛みがその身を一気につんざいた。
お気に入りの甚平どころか下着まで引き裂かれ、完全に全裸かつ全身汗だく。
ずっと同じ姿勢をとっていた足は完全に痺れて感覚がない。
夜通し振るい続けた腕は当然の如くギッシギシで、世界の悪夢のように痛い。
同様に痛む拳は、石を握り込んだまますっかり固まってしまって、その石を放すことすら今は出来そうにない。
しかも石の角が掌を切って拳の中で出血しているようだ。
出血といえば、彼女の全身も、もがく鬼やツタに引っ掛かれたり殴られたりした傷と打撲だらけ。ツタについていたり鬼がばたついた折に跳ねたりした土と血と汗は混じりあい、擦られたりして全身ドロドロ。
とても見れたものではなかった。
さらに、現状に安堵する暇もなく、とてつもなく重い泥のような眠気がドサドサとやってきている。
「(あれこれ完全に肉食獣の据え膳状態で気絶しそうなのでは?)」
彼女は再び命の危険を感じた。
「(……ここまでやって死ねようか?いいや、死ねねえよなあ!!)」
そうして彼女は己を奮い立たせた。
痛み痺れ軋む全身になお力を込め、なんとか這ってでも動こうとした。
しかし無慈悲にも、そこで草を踏む音が聞こえてきた。
「(なんでええええ!!今までネズミ一匹見かけなかったのに!!肉食獣くん帰ってくるの早すぎでは!?)」
彼女は必死にハッハッと断続的に呼吸を早めながら、なんとか横に転がってでも逃げようと横倒れになろうとした。
しかし鬼にマウントとった状態のままバカになっている足腰は固まったまま動きやしない。
全く身動きもとれず、しかしそれでも彼女はめげなかった。
土草を踏む音は、もうすぐ後ろにまで迫っている。
ならばもう、できることは、
「(脅かして追い払えればいいんだろォ!)うおおおおおおガオオオオオオーーッ!!」
凄まじき気合いと根性。
彼女は、大声をあげながら両腕を振り上げ、その勢いのままついに無理矢理立ち上がった。
すでに全身の感覚は恐ろしいことになっている。
「グオオオオオオーー」
最後の力を振り絞って背後の獣を恫喝すべく、威嚇の声を上げながら、ものすごい形相で彼女は振り返った。
そして
「オオァ"Σあぁ゙あ゙ッ゚?。!゚。ハエッ!゚?」
そこに居た『人物』に脳味噌が引っくり返りそうなほどに眼を剥いて言葉を失った。
「―――な、」
その人物は。
自らに伸びてくるその大きな手は。
「南無大師遍照金剛。光明淸淨句是菩薩位ぃゲホッワグッ…うう、わ…我が生涯に、一片の……悔い無し……ぃ」
彼女は速やかに合掌し、一気にその意識を手放したのだった。
そしてその句を受けた人物は。
「……!」
彼女の吐いた耳慣れぬ真言に若干の驚きを抱きつつも、その身体を然りと受け止めたのだった。