□1話・褥は虎穴に移り九死を得る
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ぽたりと、冷たい雫が彼女の額に落ちた。
「(寒……硬……なに?)」
それをきっかけにして、未だかつてない寝心地の悪さを感じて、彼女の意識は浮上し――。
「(えっなにここは)」
そして見渡した場所は、最後に身を沈めた自宅の寝床とは似ても似つかぬ大自然の中だった。
りんりんと虫の声が響き、風が吹けば木々がざわざわと音を出す。
月は大きく、真上に登っている。
布団など、影も形もなく。
けれどもパジャマとして着ていた、ゆとりとデザイン性のお気に入りなメンズの甚平はそのまま。
だが、湿った土で汚れてしまっていた。
そこまで状況を把握したときだった。
風上の方角から何者かが走ってくる音が飛び込んで来た。
「(!?)」
あまりに唐突のことで、彼女は息を呑む。
その音は一目散に向かってきた――切羽詰まった息遣いが聞こえて――すぐそこまで来て――その姿が目の前にいよいよ躍り出る―――!
「ぃぎゃあぁああーーっ!!」
――直前だった。空間を引きちぎるような男の悲鳴が響き渡った。
「(……!)」
あまりにも尋常じゃない空気。
彼女の身体はほぼひとりでに動いた。
身を低くかがめ、ほぼ四つ這いで素早く動き、ほど近くにあった大岩の影へと身を潜めた。
その間にも、『音』は彼女の背中へ塗りたくるように押し寄せる。
聞くに堪えない、濁った悲鳴はごぼごぼと水気を帯びて、吐血までしているはずだ。
それと一緒にして。
水気を帯びた、何かを引き裂く音。
鈍い何かがへし折れる音。
水たまりを踏み鳴らすような音。
そして。
「ルフホホホーーッ!激しく!無様に!惨めに!滑稽に!そして芳醇に!もっともっとォ!!あてだけのためにィ!!」
鼓膜を不快につんざく、気違いの声。
「(寒……硬……なに?)」
それをきっかけにして、未だかつてない寝心地の悪さを感じて、彼女の意識は浮上し――。
「(えっなにここは)」
そして見渡した場所は、最後に身を沈めた自宅の寝床とは似ても似つかぬ大自然の中だった。
りんりんと虫の声が響き、風が吹けば木々がざわざわと音を出す。
月は大きく、真上に登っている。
布団など、影も形もなく。
けれどもパジャマとして着ていた、ゆとりとデザイン性のお気に入りなメンズの甚平はそのまま。
だが、湿った土で汚れてしまっていた。
そこまで状況を把握したときだった。
風上の方角から何者かが走ってくる音が飛び込んで来た。
「(!?)」
あまりに唐突のことで、彼女は息を呑む。
その音は一目散に向かってきた――切羽詰まった息遣いが聞こえて――すぐそこまで来て――その姿が目の前にいよいよ躍り出る―――!
「ぃぎゃあぁああーーっ!!」
――直前だった。空間を引きちぎるような男の悲鳴が響き渡った。
「(……!)」
あまりにも尋常じゃない空気。
彼女の身体はほぼひとりでに動いた。
身を低くかがめ、ほぼ四つ這いで素早く動き、ほど近くにあった大岩の影へと身を潜めた。
その間にも、『音』は彼女の背中へ塗りたくるように押し寄せる。
聞くに堪えない、濁った悲鳴はごぼごぼと水気を帯びて、吐血までしているはずだ。
それと一緒にして。
水気を帯びた、何かを引き裂く音。
鈍い何かがへし折れる音。
水たまりを踏み鳴らすような音。
そして。
「ルフホホホーーッ!激しく!無様に!惨めに!滑稽に!そして芳醇に!もっともっとォ!!あてだけのためにィ!!」
鼓膜を不快につんざく、気違いの声。