□2話・手中の一生を十にし百とする
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「(ふとん……)」
やがて彼女は知らないにおいの中で目を覚ました。
「(私の寝具じゃな)いっ……?!あ゛痛い痛い痛い色々と痛い!!」
そして次いでやってきた全身の痛みに思わず声を上げたのだった。よくよく見れば全身包帯とガーゼだらけで、包まれているのは様々な薬剤のにおいだった。
彼女が上げた声を聞き付けたように、何者かが駆け付けるようにしてその部屋を訪れた。
「お目覚めになりましたか、よかった」
彼女を覗き込んだのは、黒子衣装に身を包んだ女性――隠だった。
「しぬぅ……」
「お気が付きになったのなら死にやしませんよ。さあ、具合を見ますから大人しくしててください」
そう言って女性の隠は彼女の額に手をやったり、口の中を見たり、目の具合をよく見たり。
包帯を取り、患部を拭いて新しい薬を塗り込め新しい包帯を巻きなおしたりした。
「災難でしたね。安心してください。ここはあの山のふもとの村で、もう安全ですから」
「いや痛い痛い痛い!今ベリッて言いませんでした!?」
「我慢してください」
「はいィっ!」
「あら素直」
その痛みから気を紛らわせるためにか、隠は彼女に何かと話をかけながら世話をした。
気遣いなのか、鬼の話題は極力避けられていたが。
「はい、お疲れ様でした。おしまいです」
「……ッス。お疲れさまでした……」
「食欲はありますか?」
「あー……あんまり」
「では軽いものを用意してもらってきますね。あ、そうそう、あなたこの村の人じゃないみたいですね。よければお名前をうかがっても?」
「名前……は……」
名前を問われた彼女は、そこで少しだけの間をおいて答えた。
「鑰首錺……です」
「鑰首さん?珍しい名前ですね」
「まあ、よく言われます」
――偽名だし、という一言を飲み込んで彼女はハハハと笑った。
「(本名はあまり好きじゃないから……)」
隠の女性も特に詳しく追及することなく、さっそく彼女を鑰首さん、と呼んだ。
「見たところどこの傷も悪化していませんからこのまま療養すればすっかり治ると思いますよ」
そう言い残して隠の女性は部屋を出て行こうとした。
とっさに彼女――錺は「あの」とそれを引き留めた。
「気絶する間際、幻覚でなければあの神……ええと、私をここまで運んでくださったのは一体……?」
「ああ……悲鳴嶼さんという方です。鬼滅隊……鬼退治を生業とする組織の中でも屈指の実力をお持ちの方です」
「ヒェップリンセスは実在しっえっゆ、夢じゃなかったですと……!!(運んでもらうサービスなんだそれなんで死んでた私おのれおのれおのれ自分が憎い!!)」
――そう、彼女の言う生きがいもといプリンセスこそ、悲鳴嶼行冥のことだったのだ。
隠の女性は急に天を仰ぎハイカラな言語を述べ始めた錺に若干困惑しつつも続けた。
「お忙しい方ですので、あなたをここへ預けてすぐ発たれてしまいましたが」
「そんな……」
ズーン。
今度は絶望の涙を流し始めた。
「ええと……大丈夫ですか……?」
「だいじょばない……ふぐぅ……クォ・ヴァディス……!フォーエヴァー・イン・マイ・マインド……!」
突然の情緒不安定+意味不明なハイカラ言語に、隠の女性は完全に困惑したのだった。
さておいて、その後出された土鍋いっぱいの雑炊は、食欲あまりないと言った口でしっかりと完食したのだった。
やがて彼女は知らないにおいの中で目を覚ました。
「(私の寝具じゃな)いっ……?!あ゛痛い痛い痛い色々と痛い!!」
そして次いでやってきた全身の痛みに思わず声を上げたのだった。よくよく見れば全身包帯とガーゼだらけで、包まれているのは様々な薬剤のにおいだった。
彼女が上げた声を聞き付けたように、何者かが駆け付けるようにしてその部屋を訪れた。
「お目覚めになりましたか、よかった」
彼女を覗き込んだのは、黒子衣装に身を包んだ女性――隠だった。
「しぬぅ……」
「お気が付きになったのなら死にやしませんよ。さあ、具合を見ますから大人しくしててください」
そう言って女性の隠は彼女の額に手をやったり、口の中を見たり、目の具合をよく見たり。
包帯を取り、患部を拭いて新しい薬を塗り込め新しい包帯を巻きなおしたりした。
「災難でしたね。安心してください。ここはあの山のふもとの村で、もう安全ですから」
「いや痛い痛い痛い!今ベリッて言いませんでした!?」
「我慢してください」
「はいィっ!」
「あら素直」
その痛みから気を紛らわせるためにか、隠は彼女に何かと話をかけながら世話をした。
気遣いなのか、鬼の話題は極力避けられていたが。
「はい、お疲れ様でした。おしまいです」
「……ッス。お疲れさまでした……」
「食欲はありますか?」
「あー……あんまり」
「では軽いものを用意してもらってきますね。あ、そうそう、あなたこの村の人じゃないみたいですね。よければお名前をうかがっても?」
「名前……は……」
名前を問われた彼女は、そこで少しだけの間をおいて答えた。
「鑰首錺……です」
「鑰首さん?珍しい名前ですね」
「まあ、よく言われます」
――偽名だし、という一言を飲み込んで彼女はハハハと笑った。
「(本名はあまり好きじゃないから……)」
隠の女性も特に詳しく追及することなく、さっそく彼女を鑰首さん、と呼んだ。
「見たところどこの傷も悪化していませんからこのまま療養すればすっかり治ると思いますよ」
そう言い残して隠の女性は部屋を出て行こうとした。
とっさに彼女――錺は「あの」とそれを引き留めた。
「気絶する間際、幻覚でなければあの神……ええと、私をここまで運んでくださったのは一体……?」
「ああ……悲鳴嶼さんという方です。鬼滅隊……鬼退治を生業とする組織の中でも屈指の実力をお持ちの方です」
「ヒェップリンセスは実在しっえっゆ、夢じゃなかったですと……!!(運んでもらうサービスなんだそれなんで死んでた私おのれおのれおのれ自分が憎い!!)」
――そう、彼女の言う生きがいもといプリンセスこそ、悲鳴嶼行冥のことだったのだ。
隠の女性は急に天を仰ぎハイカラな言語を述べ始めた錺に若干困惑しつつも続けた。
「お忙しい方ですので、あなたをここへ預けてすぐ発たれてしまいましたが」
「そんな……」
ズーン。
今度は絶望の涙を流し始めた。
「ええと……大丈夫ですか……?」
「だいじょばない……ふぐぅ……クォ・ヴァディス……!フォーエヴァー・イン・マイ・マインド……!」
突然の情緒不安定+意味不明なハイカラ言語に、隠の女性は完全に困惑したのだった。
さておいて、その後出された土鍋いっぱいの雑炊は、食欲あまりないと言った口でしっかりと完食したのだった。