□オリオペ鍋
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【アガウ+ブローカ】
「あら、ブローカじゃない。こんにちは」
「……お前か」
人通りの少ない廊下の片隅で本を読んでいたブローカに声を掛けると、本から目を離さずにぶっきらぼうな返事が返ってきた。
その反応にはもう慣れているので特に気にすることもなくアガウは彼の横に腰を下ろした。
するとようやくこちらを見た彼が少しだけ眉根を寄せたのが分かった。相変わらず険しい表情をしているが、それがただの顔癖だということをアガウは知っている。
「お部屋じゃなくてこんなところで読書?珍しいわね」
尋ねると彼はすぐに本を閉じて口を開く。
「別にどこで読もうが俺の勝手だろう」
「あ、もしかしてキアーベやアオスタにも見せられないような疚しい本なのかしら?きゃあごめんなさい、邪魔しちゃったかしら!」
からかうように言ってみると彼はますます眉を寄せたので、思わず笑ってしまった。
「アハハ、ごめんごめん。冗談よ……それで、どうしてわざわざこんな場所で?」
「……ここは静かだ」
「静か……ああ、確かにそういう意味では静かね」
アガウはすぐに彼の意図を察した。
ここは廊下は廊下でも発電室とボイラー室を繋ぐ通路の物陰であり、いっそけたたましいほどの機械音が響き渡る場所だ。
つまり、それ以外の喧騒は一切遮断される。そういう『静けさ』がここにはあるのだ。
他の者が……例えば聴覚の優れたコータスなどは居るだけで顔をしかめ逃げ出さんばかりだが、だからこそ息を潜めて気配を消す必要も無ければ、おいそれとイタズラなオペレーターが作戦基地に選ぶようなところでもない。ある意味安全とも言える場所なのである。
「どんなに安全でも息を潜め、気配を消すのが癖になってると、必然的にその必要のない場所に安らぐわよね。かわりに気配を消してくれるから」
そう言ってからアガウは周囲を見回して首を傾げた。
「それならブローカは、天災ではない豪雨や強風、雷なんかも好きそうね。勿論、安全な室内で聞く分には、だけど」
「さあな」
否定も肯定もない、短い答え。
「あらそう」
つまりアガウは彼が雑談を望まないことを察し、それ以上追求はしなかった。
かわりに彼の逞しい身体に凭れ掛かり、瞳を閉じ、耳をすませる。
聞こえてくるのは無機質な機械音と、彼の体内音。実に安定していて、心地よい。
「……」
ふと思いついてゴロゴロと喉を鳴らせば彼も小さく喉を鳴らしてくれたので嬉しくなった。
彼は存外、気遣い屋で、こちらに恥をかかせまいとするところがある。
彼の喉鳴らしはごく小さく、数秒で終わってしまったが、嫌がっているわけではないということが伝われば充分だった。
「どこか行くことになったらちゃんと起こしてね」
それだけ伝えて微睡みに入る。返事はなかったが溜め息が聞こえたような気がしたので、きっと伝わったのだろう。
暇なのか?と言わんばかりだが、暇でなければとっくに通り過ぎているし、ブローカもそれを理解しているので何も言いはしないのだ。
最初は重いだの簡単に喉を鳴らすなだのと押しのけられたものだが、最近は諦めたのか好きにさせてくれるようになった。
人並みに刺々しいところもあるけれど、なににつけても彼は温厚で優しい男だということをアガウはもう知っている。
END.
「あら、ブローカじゃない。こんにちは」
「……お前か」
人通りの少ない廊下の片隅で本を読んでいたブローカに声を掛けると、本から目を離さずにぶっきらぼうな返事が返ってきた。
その反応にはもう慣れているので特に気にすることもなくアガウは彼の横に腰を下ろした。
するとようやくこちらを見た彼が少しだけ眉根を寄せたのが分かった。相変わらず険しい表情をしているが、それがただの顔癖だということをアガウは知っている。
「お部屋じゃなくてこんなところで読書?珍しいわね」
尋ねると彼はすぐに本を閉じて口を開く。
「別にどこで読もうが俺の勝手だろう」
「あ、もしかしてキアーベやアオスタにも見せられないような疚しい本なのかしら?きゃあごめんなさい、邪魔しちゃったかしら!」
からかうように言ってみると彼はますます眉を寄せたので、思わず笑ってしまった。
「アハハ、ごめんごめん。冗談よ……それで、どうしてわざわざこんな場所で?」
「……ここは静かだ」
「静か……ああ、確かにそういう意味では静かね」
アガウはすぐに彼の意図を察した。
ここは廊下は廊下でも発電室とボイラー室を繋ぐ通路の物陰であり、いっそけたたましいほどの機械音が響き渡る場所だ。
つまり、それ以外の喧騒は一切遮断される。そういう『静けさ』がここにはあるのだ。
他の者が……例えば聴覚の優れたコータスなどは居るだけで顔をしかめ逃げ出さんばかりだが、だからこそ息を潜めて気配を消す必要も無ければ、おいそれとイタズラなオペレーターが作戦基地に選ぶようなところでもない。ある意味安全とも言える場所なのである。
「どんなに安全でも息を潜め、気配を消すのが癖になってると、必然的にその必要のない場所に安らぐわよね。かわりに気配を消してくれるから」
そう言ってからアガウは周囲を見回して首を傾げた。
「それならブローカは、天災ではない豪雨や強風、雷なんかも好きそうね。勿論、安全な室内で聞く分には、だけど」
「さあな」
否定も肯定もない、短い答え。
「あらそう」
つまりアガウは彼が雑談を望まないことを察し、それ以上追求はしなかった。
かわりに彼の逞しい身体に凭れ掛かり、瞳を閉じ、耳をすませる。
聞こえてくるのは無機質な機械音と、彼の体内音。実に安定していて、心地よい。
「……」
ふと思いついてゴロゴロと喉を鳴らせば彼も小さく喉を鳴らしてくれたので嬉しくなった。
彼は存外、気遣い屋で、こちらに恥をかかせまいとするところがある。
彼の喉鳴らしはごく小さく、数秒で終わってしまったが、嫌がっているわけではないということが伝われば充分だった。
「どこか行くことになったらちゃんと起こしてね」
それだけ伝えて微睡みに入る。返事はなかったが溜め息が聞こえたような気がしたので、きっと伝わったのだろう。
暇なのか?と言わんばかりだが、暇でなければとっくに通り過ぎているし、ブローカもそれを理解しているので何も言いはしないのだ。
最初は重いだの簡単に喉を鳴らすなだのと押しのけられたものだが、最近は諦めたのか好きにさせてくれるようになった。
人並みに刺々しいところもあるけれど、なににつけても彼は温厚で優しい男だということをアガウはもう知っている。
END.