□オリオペ鍋
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アガウは今日も今日とて、スポットの部屋に入り浸っていた。
休日が重なる日、暇さえ見つけては彼の自室を訪ね、漫画やアニメ感傷にゲームといった娯楽を共有しているのだ。
だいたいサーブとブッキングするのだが、今日はどうやらアガウの独り占めのようで、最高に上機嫌だった。
それはもう、スポットの部屋に来るなり、無遠慮に彼のベッドに飛び込み、グルグルと喉を鳴らしながらシーツに顔をすり寄せるほどに。
「……襲われにでも来たのか?」
「いやねえ、けちんぼ」
彼の遠回しな注意に、アガウはベッドの上でくるりと四つ這いの姿勢になって、不満げにスポットを見上げた。
フリフリと太くしなやかな長い尾を揺らめかせて、ムーッと見上げてくるこの雌豹の無防備さにスポットはため息をつく。
「それで?今日はどれを借りるんだ」
そう言いながら彼は棚の方へと歩み寄る。
その言葉を待ってました!と言わんばかりに目を輝かせたアガウは、ピョンとベッドから飛び降り、彼の隣に立って並んだ。
相変わらずの力強い身軽さである。
「この前借りれなかったやつ、あるかしら?」
「ああ……あれか。ほら」
「やった!」
そう言って手渡してやれば、彼女はまた嬉しそうに喉をグルグルと鳴らして笑った。
彼女の尻尾がブンブン振られる度に、風圧で先ほどスポットが呼んでいた漫画本がパラパラとはためく。
「おい」
「え?……あ、やだ!ごめんなさい!」
慌てて尻尾を抱きしめるように隠し、シュンと耳を伏せられるものだから、どうにも憎めない奴だと呆れてしまう。
めくれてしまった漫画本を手に取り、ページを確認してから椅子に腰掛け直した。
それから読み始める前にふと思い出して、横目でアガウの様子を窺う。
すると、彼女も丁度こちらを見ていたようで、目が合った瞬間ぴるぴるっと彼女の耳が動いた。
そして、何か期待するように、じいっと見つめ返される。
「……読まないのか?」
「! よ、読むわよぅ」
ピョンッとベッドの方に飛んでいく後ろ姿を見ながら、スポットは再び手元の漫画本へ視線を落とした。
男の部屋に上がり込んでベッドの上に寝そべるなど、本当に何を考えているんだか……。
あの時もそうだ。
今のようにベッドの上に寝そべって、彼が貸していた漫画を読んでいた彼女に声をかけたのだ。
『そんな格好をしてたら襲ってくれと言ってるようなものだぞ』
まぁ……今思えばよくあんなことを言えたものである。
それなのにあの女ときたら、『いいわよぉ~』とか間延びした声で応えて……。
いや待て、何を思い出そうとしているんだ俺は。
馬鹿らしい。
しかし、あの時は随分無防備なものだと思いつつ声をかけたのだ。
普通、異性の部屋に上がり込んだら警戒するものだろう? だが、彼女には全くそういう様子がなかったからこそ、逆に戸惑ってしまったというところだろうか。
それにあの時も。
ベッドの上に居座る彼女と漫画の受け渡しをしていた瞬間、突然艦内が大きく揺れたせいで体勢を崩して、そのまま二人ともベッドに雪崩込むように倒れたわけだが……その時、運悪くスポットの膝打ちが彼女の股間に当たってしまったらしくて。
まあ、当然の反応というべきか。
何が起こったかわからずに硬直してしまっていた彼と、自分の下腹部を襲う痛みのせいで『う、うおぉ……っ……おごぉおぉおっ……』と地を這うような声でプルプルと悶絶していたアガウだったが。
そんなことがあった後でもこうして平然と遊びに来る辺り、やはり図太い性格をしているなと思う。いや、単に鈍感なだけなのか?……どちらにせよ、あまり良いことではないが。
なんにしても、彼女がこの部屋に入り浸っている限りこの手の事故は何回も起こりうることなのだろうと察しがつく。
それだけに気が重いし、心配でもあった。
だからといって追い出す気もないのだが。幸い、ほとんどの場合サーブがいるから大丈夫かと思える部分もある。
今日はいないが。
そういう日に限って、いつにも増して無防備な気がする。
……いや、無防備というよりも隙だらけと言った方が適切かもしれない。
「おい」
漫画を読みながら何度か呼びかけても、全く反応がない。
……。いや……まさかな。いくらなんでもそこまで危機感皆無なタイプではないはずだ。
「おい、聞いているのか」
「んんー……?うんー……、」
やっと返事を寄越してきたアガウの方を見ると、彼女は横向きになりながら枕を抱きしめている状態で眠っていた。
その手にはしっかりと漫画本が握られているが、ページが開きっぱなしになっている。
おいおい……漫画読んでる途中で寝落ちるってどういうことだ……。
そう思いつつも読みかけだった漫画本を机に置き、アガウの漫画も取り上げて机へ避難させた。
そうしても起きないので仕方なく彼女の肩を揺すった。
「おい起きろ」
「ん~……むぅ……」
……駄目だこりゃ。
ぎゅっと枕に顎先を擦り付けるように身動ぐアガウを見下ろし、ため息をつく。
まったく……人のベッドの上でよくもこんな堂々とした寝顔を晒せるものだ。
これではどっちが男の部屋にいる女だかわからないじゃないか。
「はぁ……」
どうしたものかと思いながらもとりあえず彼女を仰向けに転がしてみると、寝返りを打った拍子に彼女のフカフカした真っ白なお腹が堂々と晒された。
…………。
まぁ。いいか。
いつも出しているってことは、別に隠さなければいけないようなものでもないんだろうし……。
そんなことを考えながら、ふと思い立ってアガウのお腹に手を伸ばしてみる。
すると、想像以上に柔らかい感触と共に指先が沈み込み、程よい弾力と温もりが返ってきた。
ふんわりと押し返す毛布のような毛並みは、中々心地良くて、思わず撫でるように触れてしまう。
「……」
スポットはそのまま暫くの間柔らかさを堪能するように手を滑らせていたが、やがて我に帰るなり慌てて引っ込めた。
「何をやってるんだ俺は……」
自嘲気味に呟きながらアガウの隣へ腰掛ける。そしてまたため息が出た。
本当に何をしているんだ俺は。
頭を抱えつつ項垂れていると、突然膝の上に何かが乗っかってきて驚いた。
見下ろすと、パッチリと目を開けたアガウの頭が、スポットの顔を覗き込むように見上げていた。
まさか、狸寝入りしていたのか?
「……性格が悪くないか」
「あら、お互い様じゃないの」
「……はぁ……」
アガウの言葉にため息をつきながら視線を逸らす。
そういえば、さっきまで読んでいた漫画本の続きはどうなったのだろうか。
「どけ。ここはいつからお前の仮眠室になったんだ?」
「……いいじゃない。昨日ちょっと面倒があって徹夜だったのよ……あ、ちゃんとお風呂には入ってきたわよ?臭くないでしょ?」
「それは気付かなかったな。寝るなら自分の部屋で寝てもらえるか」
「つれないわねぇ……」
アガウの尾がスリスリとスポットの肩や背中を摩るように動き回り始めた。
それを跳ね除けるように腕を振るが、しつこく絡んでくる。
いい加減にしろ。
「っふぎゃ!?」
尾を思い切り掴んでやると、彼女は猫のような悲鳴を上げて飛び上がった。
ボワッと尻尾が膨らみ、逆立っている。少し面白い。
「な、何するのよぉ……!」
尻尾を両手で押さえ、涙目で睨まれるが、知ったことか。
「目が覚めて良かっただろ。そのために、わざわざ弱点を絡めてきたんじゃなかったか?」
「なんでそんなかっこいいこと言うの……!?」
「あーなんてこった。耳と脳に異常があるようだから医務室に行ってくるといい。ついでに記憶喪失になってくれば一件落着だ」
だいたい、何故こいつはこうも頻繁に一人きりで男の部屋に上がり込んで来るのだろうか。
スポットはため息をついて立ち上がった。
もうこれ以上構うのは時間の無駄だろう。それに、漫画の続きが気になるのだ。邪魔されては困る。
無理矢理どかされた彼女はまた何事かニャーニャー文句を言っていたが、全て無視した。
すると彼女はそれをいいことにか、布団まで被り始めた。
おいおい……いい加減にしてくれ……?
呆れを通り越して苛立ちすら覚えるスポットの気持ちなど知る由もなく、彼女はモゾモゾと芋虫のように丸まりながら彼の方をチラ見した。
「お昼寝しましょうよぉ~……」
「あいにく睡眠は足りてるもんでね。俺はこれから最新巻を読むんだよ」
「なら仕方ないわね」
「ああ、そうだな。俺のことは気にせず、お前も自室のベッドで好きに過ごすといい」
「やーだー!」
「……」
なんだこの駄々っ子は。
「スポットと遊びたい、寝たい。ここなら同時に出来るんだもの」
指を二本立ててそう言った彼女に、スポットは再びため息をついた。
「遊びたきゃ勝手に遊べばいい。だが、寝るのは駄目だ。自分の部屋へ帰れ」
「やだぁ……うぅ~」
「いいからほら、部屋へ帰るんだ。今すぐ。……それとも、サーブでも呼んで無理やり部屋に引きずらせるか?」
「うううううう……やだぁ……やだやだやだやだやーだぁ……!やぁぁ……!」
なんか幼児退行起こしてないか?大丈夫か?寝不足って怖いな。
ピャーピャーと子猫のように喚き始める彼女を黙って見ていると、ついに布団を頭から被ってゴロンと背を向けた。
おい。
「……はぁ……わかった。もう好きにしろ」
尻尾の生えた芋虫のように丸まったアガウが、満足げにフンスッと鼻を鳴らした音が聞こえた。
パタパタと上機嫌に尻尾が揺れているが。
……後ろから見ると完全によくわからない物体だな、これ。
スポットはもう一度大きく溜め息を吐いて、漫画本を開いた。
休日が重なる日、暇さえ見つけては彼の自室を訪ね、漫画やアニメ感傷にゲームといった娯楽を共有しているのだ。
だいたいサーブとブッキングするのだが、今日はどうやらアガウの独り占めのようで、最高に上機嫌だった。
それはもう、スポットの部屋に来るなり、無遠慮に彼のベッドに飛び込み、グルグルと喉を鳴らしながらシーツに顔をすり寄せるほどに。
「……襲われにでも来たのか?」
「いやねえ、けちんぼ」
彼の遠回しな注意に、アガウはベッドの上でくるりと四つ這いの姿勢になって、不満げにスポットを見上げた。
フリフリと太くしなやかな長い尾を揺らめかせて、ムーッと見上げてくるこの雌豹の無防備さにスポットはため息をつく。
「それで?今日はどれを借りるんだ」
そう言いながら彼は棚の方へと歩み寄る。
その言葉を待ってました!と言わんばかりに目を輝かせたアガウは、ピョンとベッドから飛び降り、彼の隣に立って並んだ。
相変わらずの力強い身軽さである。
「この前借りれなかったやつ、あるかしら?」
「ああ……あれか。ほら」
「やった!」
そう言って手渡してやれば、彼女はまた嬉しそうに喉をグルグルと鳴らして笑った。
彼女の尻尾がブンブン振られる度に、風圧で先ほどスポットが呼んでいた漫画本がパラパラとはためく。
「おい」
「え?……あ、やだ!ごめんなさい!」
慌てて尻尾を抱きしめるように隠し、シュンと耳を伏せられるものだから、どうにも憎めない奴だと呆れてしまう。
めくれてしまった漫画本を手に取り、ページを確認してから椅子に腰掛け直した。
それから読み始める前にふと思い出して、横目でアガウの様子を窺う。
すると、彼女も丁度こちらを見ていたようで、目が合った瞬間ぴるぴるっと彼女の耳が動いた。
そして、何か期待するように、じいっと見つめ返される。
「……読まないのか?」
「! よ、読むわよぅ」
ピョンッとベッドの方に飛んでいく後ろ姿を見ながら、スポットは再び手元の漫画本へ視線を落とした。
男の部屋に上がり込んでベッドの上に寝そべるなど、本当に何を考えているんだか……。
あの時もそうだ。
今のようにベッドの上に寝そべって、彼が貸していた漫画を読んでいた彼女に声をかけたのだ。
『そんな格好をしてたら襲ってくれと言ってるようなものだぞ』
まぁ……今思えばよくあんなことを言えたものである。
それなのにあの女ときたら、『いいわよぉ~』とか間延びした声で応えて……。
いや待て、何を思い出そうとしているんだ俺は。
馬鹿らしい。
しかし、あの時は随分無防備なものだと思いつつ声をかけたのだ。
普通、異性の部屋に上がり込んだら警戒するものだろう? だが、彼女には全くそういう様子がなかったからこそ、逆に戸惑ってしまったというところだろうか。
それにあの時も。
ベッドの上に居座る彼女と漫画の受け渡しをしていた瞬間、突然艦内が大きく揺れたせいで体勢を崩して、そのまま二人ともベッドに雪崩込むように倒れたわけだが……その時、運悪くスポットの膝打ちが彼女の股間に当たってしまったらしくて。
まあ、当然の反応というべきか。
何が起こったかわからずに硬直してしまっていた彼と、自分の下腹部を襲う痛みのせいで『う、うおぉ……っ……おごぉおぉおっ……』と地を這うような声でプルプルと悶絶していたアガウだったが。
そんなことがあった後でもこうして平然と遊びに来る辺り、やはり図太い性格をしているなと思う。いや、単に鈍感なだけなのか?……どちらにせよ、あまり良いことではないが。
なんにしても、彼女がこの部屋に入り浸っている限りこの手の事故は何回も起こりうることなのだろうと察しがつく。
それだけに気が重いし、心配でもあった。
だからといって追い出す気もないのだが。幸い、ほとんどの場合サーブがいるから大丈夫かと思える部分もある。
今日はいないが。
そういう日に限って、いつにも増して無防備な気がする。
……いや、無防備というよりも隙だらけと言った方が適切かもしれない。
「おい」
漫画を読みながら何度か呼びかけても、全く反応がない。
……。いや……まさかな。いくらなんでもそこまで危機感皆無なタイプではないはずだ。
「おい、聞いているのか」
「んんー……?うんー……、」
やっと返事を寄越してきたアガウの方を見ると、彼女は横向きになりながら枕を抱きしめている状態で眠っていた。
その手にはしっかりと漫画本が握られているが、ページが開きっぱなしになっている。
おいおい……漫画読んでる途中で寝落ちるってどういうことだ……。
そう思いつつも読みかけだった漫画本を机に置き、アガウの漫画も取り上げて机へ避難させた。
そうしても起きないので仕方なく彼女の肩を揺すった。
「おい起きろ」
「ん~……むぅ……」
……駄目だこりゃ。
ぎゅっと枕に顎先を擦り付けるように身動ぐアガウを見下ろし、ため息をつく。
まったく……人のベッドの上でよくもこんな堂々とした寝顔を晒せるものだ。
これではどっちが男の部屋にいる女だかわからないじゃないか。
「はぁ……」
どうしたものかと思いながらもとりあえず彼女を仰向けに転がしてみると、寝返りを打った拍子に彼女のフカフカした真っ白なお腹が堂々と晒された。
…………。
まぁ。いいか。
いつも出しているってことは、別に隠さなければいけないようなものでもないんだろうし……。
そんなことを考えながら、ふと思い立ってアガウのお腹に手を伸ばしてみる。
すると、想像以上に柔らかい感触と共に指先が沈み込み、程よい弾力と温もりが返ってきた。
ふんわりと押し返す毛布のような毛並みは、中々心地良くて、思わず撫でるように触れてしまう。
「……」
スポットはそのまま暫くの間柔らかさを堪能するように手を滑らせていたが、やがて我に帰るなり慌てて引っ込めた。
「何をやってるんだ俺は……」
自嘲気味に呟きながらアガウの隣へ腰掛ける。そしてまたため息が出た。
本当に何をしているんだ俺は。
頭を抱えつつ項垂れていると、突然膝の上に何かが乗っかってきて驚いた。
見下ろすと、パッチリと目を開けたアガウの頭が、スポットの顔を覗き込むように見上げていた。
まさか、狸寝入りしていたのか?
「……性格が悪くないか」
「あら、お互い様じゃないの」
「……はぁ……」
アガウの言葉にため息をつきながら視線を逸らす。
そういえば、さっきまで読んでいた漫画本の続きはどうなったのだろうか。
「どけ。ここはいつからお前の仮眠室になったんだ?」
「……いいじゃない。昨日ちょっと面倒があって徹夜だったのよ……あ、ちゃんとお風呂には入ってきたわよ?臭くないでしょ?」
「それは気付かなかったな。寝るなら自分の部屋で寝てもらえるか」
「つれないわねぇ……」
アガウの尾がスリスリとスポットの肩や背中を摩るように動き回り始めた。
それを跳ね除けるように腕を振るが、しつこく絡んでくる。
いい加減にしろ。
「っふぎゃ!?」
尾を思い切り掴んでやると、彼女は猫のような悲鳴を上げて飛び上がった。
ボワッと尻尾が膨らみ、逆立っている。少し面白い。
「な、何するのよぉ……!」
尻尾を両手で押さえ、涙目で睨まれるが、知ったことか。
「目が覚めて良かっただろ。そのために、わざわざ弱点を絡めてきたんじゃなかったか?」
「なんでそんなかっこいいこと言うの……!?」
「あーなんてこった。耳と脳に異常があるようだから医務室に行ってくるといい。ついでに記憶喪失になってくれば一件落着だ」
だいたい、何故こいつはこうも頻繁に一人きりで男の部屋に上がり込んで来るのだろうか。
スポットはため息をついて立ち上がった。
もうこれ以上構うのは時間の無駄だろう。それに、漫画の続きが気になるのだ。邪魔されては困る。
無理矢理どかされた彼女はまた何事かニャーニャー文句を言っていたが、全て無視した。
すると彼女はそれをいいことにか、布団まで被り始めた。
おいおい……いい加減にしてくれ……?
呆れを通り越して苛立ちすら覚えるスポットの気持ちなど知る由もなく、彼女はモゾモゾと芋虫のように丸まりながら彼の方をチラ見した。
「お昼寝しましょうよぉ~……」
「あいにく睡眠は足りてるもんでね。俺はこれから最新巻を読むんだよ」
「なら仕方ないわね」
「ああ、そうだな。俺のことは気にせず、お前も自室のベッドで好きに過ごすといい」
「やーだー!」
「……」
なんだこの駄々っ子は。
「スポットと遊びたい、寝たい。ここなら同時に出来るんだもの」
指を二本立ててそう言った彼女に、スポットは再びため息をついた。
「遊びたきゃ勝手に遊べばいい。だが、寝るのは駄目だ。自分の部屋へ帰れ」
「やだぁ……うぅ~」
「いいからほら、部屋へ帰るんだ。今すぐ。……それとも、サーブでも呼んで無理やり部屋に引きずらせるか?」
「うううううう……やだぁ……やだやだやだやだやーだぁ……!やぁぁ……!」
なんか幼児退行起こしてないか?大丈夫か?寝不足って怖いな。
ピャーピャーと子猫のように喚き始める彼女を黙って見ていると、ついに布団を頭から被ってゴロンと背を向けた。
おい。
「……はぁ……わかった。もう好きにしろ」
尻尾の生えた芋虫のように丸まったアガウが、満足げにフンスッと鼻を鳴らした音が聞こえた。
パタパタと上機嫌に尻尾が揺れているが。
……後ろから見ると完全によくわからない物体だな、これ。
スポットはもう一度大きく溜め息を吐いて、漫画本を開いた。