□イーサンルート
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【弱者2】
誰が決めた定めなのだろうかと。
彼女は呟いた。
「助けた私が全部忘れてて…こんなだったせいで、私の指揮で沢山死んだ」
視線を感じ、書類を手伝っていたイーサンがデスクから視線を寄越した。
彼女はデスクに向かったままのようだった。
また、視線の元を探した際、秘書とその他の事務は席を外していることにも気が付いた。
今執務室に二人きりであることから、彼女が真昼間らしくないことを突然発したことに合点がいった。
「…前の私のままだったらよかったのに。皆が私を流石ドクターと言うんだ。何が流石で、何が相変わらずなんだ。
なんの偉業もない私をそんな大層に言う」
「あんま自分を下げていじけるなよ」
「いじけもするよ。私は誰の目にもうつらない。
どれだけ頑張っても、向けられる称賛は安堵が前提なんだ。それでいいとも思うし、その安堵に私も安堵する。でも、……たまにやりきれなくなる。私は望まれてないのだと」
「……なあ、俺はさ、今のドクターのが好きだぜ」
「……うん。言わせてごめん」
満足したのか、執務を再開したらしい。
イーサンも再び書類へと向かった。
――あの日から。
何かと、ドクターはイーサンに甘えるような弱音を吐くようになった。
自分の何が彼女の琴線に触れたのか、イーサンはついぞわからなかったが、ダメ押しとなったのは先日の件だとぐらいは自覚していた。
イーサンはそれを拒めなかった。
弱音を引き出してしまった責任感か、縋ってくる者への同情か。
元来人の良い彼だ。
記憶を失っているとはいえ大の大人が縋り付く様に肯定を求めてくるさまは面倒くさくもあり、しかし、どこか内気で弱い子供のようにも見えた。
生きた時間を喪失したのだから、もしやその精神は無知な子供で間違いないのかもしれないが。
大人の身体をし、地位を保有している以上、それは許されてはいない。
◇
しばらくすると、席を外していた面々が戻ってきた。
時計を見れば午後のはじめ。
今度はドクターとイーサンの休憩時間だった。
しかし二人はすでにデスクで栄養ゼリーを4つほど飲み終えていた。
「なあ、ドクター」
あるのは、ほんの少しの使命感。
なお仕事を続けようとするドクターを見かねて声を掛けようとする秘書より先に投げかけた。
イーサンの声に、彼女は口は開かないまま顔を上げた。
「気分転換にその辺回らねえか?」
アルゴスは静かに頷くと、離席のためデスクの上を片付け始めた。
彼女の秘書がイーサンに礼を言ったので、それはありがたく受け取っておいた。
人目がある時、することがないと仕事をし始めるのは彼女の良くない癖であり、彼女にとり付く無知と罪悪感の象徴でもある。と、イーサンは内心独り言ちてドクターを待った。
傍らを歩く際に『擬態』しているのは、他人がドクターに話しかけやすくするため。
おかげか、この日はシルバーアッシュが声をかけて、彼女と交流を持ちかけてきた。
なんとなく着いて行こうとしたところ、
「――久方ぶりに、二人きりでと言ったのだがな。……アルゴス?」
「フッ、我が盟友には敵わないな――下がれ。」
払われてしまったが。
へいへいっと、内心言ちて退散した。
盟友と呼び合う仲であるカランドの主シルバーアッシュも、中々に鋭い目を持っている。
察知能力についてはドクターに次ぐだろう。
「……これで二人だな、ディス?」
「フッ、我が盟友も衰え無いようで安心したぞ――下がれ。」
まあ、こと、察知に限定すれば、シルバーアッシュですらドクターに敵うことはないだろうとも。
彼が指を鳴らすとダクトからクーリエが顔を出し、同様に払われたの後目にイーサンは別方向に歩き出した。
シルバーアッシュについて。
一見すれば、似た者同士のようにも仲睦まじいようにも見えるが、アルゴスが彼を恐れながら手放せずにいることをイーサンは知っている。
彼は、難しい。
何がといえば、Dr.『アルゴス』の理解者および拠り所として。
ドクターが肩を預けることを覚えたのは好ましいが、その矛先が自分だけなのはいただけなかった。
何故、このようなことを考えるか。
依存させるわけにはいかないからだ。
ゆえに他者と彼女との交流は歓迎し、それで傷ついたならフォローする。
それが自分の役目であると。
この義務感は忠誠か同情か。
どのような感情から来るものなのか。
イーサンはまだ、気に留めたことがない。
END.
誰が決めた定めなのだろうかと。
彼女は呟いた。
「助けた私が全部忘れてて…こんなだったせいで、私の指揮で沢山死んだ」
視線を感じ、書類を手伝っていたイーサンがデスクから視線を寄越した。
彼女はデスクに向かったままのようだった。
また、視線の元を探した際、秘書とその他の事務は席を外していることにも気が付いた。
今執務室に二人きりであることから、彼女が真昼間らしくないことを突然発したことに合点がいった。
「…前の私のままだったらよかったのに。皆が私を流石ドクターと言うんだ。何が流石で、何が相変わらずなんだ。
なんの偉業もない私をそんな大層に言う」
「あんま自分を下げていじけるなよ」
「いじけもするよ。私は誰の目にもうつらない。
どれだけ頑張っても、向けられる称賛は安堵が前提なんだ。それでいいとも思うし、その安堵に私も安堵する。でも、……たまにやりきれなくなる。私は望まれてないのだと」
「……なあ、俺はさ、今のドクターのが好きだぜ」
「……うん。言わせてごめん」
満足したのか、執務を再開したらしい。
イーサンも再び書類へと向かった。
――あの日から。
何かと、ドクターはイーサンに甘えるような弱音を吐くようになった。
自分の何が彼女の琴線に触れたのか、イーサンはついぞわからなかったが、ダメ押しとなったのは先日の件だとぐらいは自覚していた。
イーサンはそれを拒めなかった。
弱音を引き出してしまった責任感か、縋ってくる者への同情か。
元来人の良い彼だ。
記憶を失っているとはいえ大の大人が縋り付く様に肯定を求めてくるさまは面倒くさくもあり、しかし、どこか内気で弱い子供のようにも見えた。
生きた時間を喪失したのだから、もしやその精神は無知な子供で間違いないのかもしれないが。
大人の身体をし、地位を保有している以上、それは許されてはいない。
◇
しばらくすると、席を外していた面々が戻ってきた。
時計を見れば午後のはじめ。
今度はドクターとイーサンの休憩時間だった。
しかし二人はすでにデスクで栄養ゼリーを4つほど飲み終えていた。
「なあ、ドクター」
あるのは、ほんの少しの使命感。
なお仕事を続けようとするドクターを見かねて声を掛けようとする秘書より先に投げかけた。
イーサンの声に、彼女は口は開かないまま顔を上げた。
「気分転換にその辺回らねえか?」
アルゴスは静かに頷くと、離席のためデスクの上を片付け始めた。
彼女の秘書がイーサンに礼を言ったので、それはありがたく受け取っておいた。
人目がある時、することがないと仕事をし始めるのは彼女の良くない癖であり、彼女にとり付く無知と罪悪感の象徴でもある。と、イーサンは内心独り言ちてドクターを待った。
傍らを歩く際に『擬態』しているのは、他人がドクターに話しかけやすくするため。
おかげか、この日はシルバーアッシュが声をかけて、彼女と交流を持ちかけてきた。
なんとなく着いて行こうとしたところ、
「――久方ぶりに、二人きりでと言ったのだがな。……アルゴス?」
「フッ、我が盟友には敵わないな――下がれ。」
払われてしまったが。
へいへいっと、内心言ちて退散した。
盟友と呼び合う仲であるカランドの主シルバーアッシュも、中々に鋭い目を持っている。
察知能力についてはドクターに次ぐだろう。
「……これで二人だな、ディス?」
「フッ、我が盟友も衰え無いようで安心したぞ――下がれ。」
まあ、こと、察知に限定すれば、シルバーアッシュですらドクターに敵うことはないだろうとも。
彼が指を鳴らすとダクトからクーリエが顔を出し、同様に払われたの後目にイーサンは別方向に歩き出した。
シルバーアッシュについて。
一見すれば、似た者同士のようにも仲睦まじいようにも見えるが、アルゴスが彼を恐れながら手放せずにいることをイーサンは知っている。
彼は、難しい。
何がといえば、Dr.『アルゴス』の理解者および拠り所として。
ドクターが肩を預けることを覚えたのは好ましいが、その矛先が自分だけなのはいただけなかった。
何故、このようなことを考えるか。
依存させるわけにはいかないからだ。
ゆえに他者と彼女との交流は歓迎し、それで傷ついたならフォローする。
それが自分の役目であると。
この義務感は忠誠か同情か。
どのような感情から来るものなのか。
イーサンはまだ、気に留めたことがない。
END.