□カポネさんルート
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差し出された手に、ガンビーノが舌を打った。
「テメェの駒になれというわけだ」
アルゴスは「端的に言えば」と頷いた。
ガンビーノはニヒルに笑み「ハッ」と息を吐いた。
そうして彼女の手に、持ち上がったガンビーノの太い右腕がかけられる――その時。アルゴスは断続的に二回息を吸った。
その指示を受けて、不可視が揺らめいた。
「ギャアアアアッ!!」
そして、ガンビーノの悲鳴。
取り落とされたナイフが地面に落ちた音。
カポネが息を呑む音。
ラップランドの感嘆符。
ガンビーノの左手にぽっかりと空いた穴。
引き抜かれたマンティコアの尾の先を伝う流血。
はぁっと短い息を吐いたアルゴス。
「手が早いですね。ガンビーノさん」
「ぐっ…テメェ、何をした…!?」
大穴のあいた左手からの流血と痛みを抑えるように、右手で左手首を強く掴みながらガンビーノはアルゴスを睨み上げた。
伝う冷汗は、痛みによるものだけではないのだろうが、その威勢の良さは死んでも崩れないのだろう。
「ナイフを抜くスピードと、絶妙に注意を逸らす右腕の角度は評価します。
恐ろしく速い手さばき――常人であれば間違いなく見逃しますね」
「俺は何をしたかと聞いたんだ!!」
「それに答える義務はありません。私の手を刺し、もしくは殺す気だったのであろうあなたに」
図星だった。
「くっ…」
ガンビーノは言葉を詰まらせる。
まさに彼の手から落ちたナイフが、言い訳を許さなかった。
アルゴスはなんてことは無く、一周目の記憶からガンビーノの感情を予測していた。
他でもない彼に殺されたのだから。
予想が的中した。それだけのことであり、特に怒りも悲しみもなかった。
「…ハハ。ねえドクター、君はいったい何を、いや…『誰を連れてきている』んだい?」
ラップランドの言葉にアルゴスは緑色の双眸のみを返した。
そうして振り返っていた首を戻してなおも問う。
「それで、どうしますか?」
ガンビーノの行動に顔面を蒼白にしていたカポネに。
アルゴスの両手はまだ降ろされていなかった。
「これで……まだチャンスがあるとでも言ってくれるのか?」
カポネの言葉にアルゴスは指先を巻くように揺らした。
「私は鼠王ではありませんから」
思えばこのパターンは、暴走する視界の一つが拾った鼠王とマフィアの一人が交わした会話を思い起こさせた。
――『ガンビーノさんが初めて会った時に剣を振り回していなければこうにはなりませんでしたか?』
――『特にビジネスの場では第一印象というものは非常に重要じゃ』
学習という言葉を知らないわけではないのだろう。
ただ、学習したがらないだけで。
かつての誇りが、それをさせないだけで。
彼ほど狼のアルファらしい人物もそう居ない。
良い意味でも、悪い意味でも。
ループスの最上位者とはかくあるべきなのではないか。彼の故郷においては、おそらくは。
アルゴスはいつの間にかガンビーノに向けていた双眸の先をカポネに戻した。
カポネは呆れた顔を隠しもせずに視線を返した。
「選択肢なんてないと言いたいんだな。ずっと、得体の知れない刃を振りかぶっていたわけだ」
「私は弱い。その自覚があるだけだ」
「その自覚がある奴はこんなところに出しゃばらないはずだがな」
「困ったな、私に何を求めているんだ」
「テメェの駒になれというわけだ」
アルゴスは「端的に言えば」と頷いた。
ガンビーノはニヒルに笑み「ハッ」と息を吐いた。
そうして彼女の手に、持ち上がったガンビーノの太い右腕がかけられる――その時。アルゴスは断続的に二回息を吸った。
その指示を受けて、不可視が揺らめいた。
「ギャアアアアッ!!」
そして、ガンビーノの悲鳴。
取り落とされたナイフが地面に落ちた音。
カポネが息を呑む音。
ラップランドの感嘆符。
ガンビーノの左手にぽっかりと空いた穴。
引き抜かれたマンティコアの尾の先を伝う流血。
はぁっと短い息を吐いたアルゴス。
「手が早いですね。ガンビーノさん」
「ぐっ…テメェ、何をした…!?」
大穴のあいた左手からの流血と痛みを抑えるように、右手で左手首を強く掴みながらガンビーノはアルゴスを睨み上げた。
伝う冷汗は、痛みによるものだけではないのだろうが、その威勢の良さは死んでも崩れないのだろう。
「ナイフを抜くスピードと、絶妙に注意を逸らす右腕の角度は評価します。
恐ろしく速い手さばき――常人であれば間違いなく見逃しますね」
「俺は何をしたかと聞いたんだ!!」
「それに答える義務はありません。私の手を刺し、もしくは殺す気だったのであろうあなたに」
図星だった。
「くっ…」
ガンビーノは言葉を詰まらせる。
まさに彼の手から落ちたナイフが、言い訳を許さなかった。
アルゴスはなんてことは無く、一周目の記憶からガンビーノの感情を予測していた。
他でもない彼に殺されたのだから。
予想が的中した。それだけのことであり、特に怒りも悲しみもなかった。
「…ハハ。ねえドクター、君はいったい何を、いや…『誰を連れてきている』んだい?」
ラップランドの言葉にアルゴスは緑色の双眸のみを返した。
そうして振り返っていた首を戻してなおも問う。
「それで、どうしますか?」
ガンビーノの行動に顔面を蒼白にしていたカポネに。
アルゴスの両手はまだ降ろされていなかった。
「これで……まだチャンスがあるとでも言ってくれるのか?」
カポネの言葉にアルゴスは指先を巻くように揺らした。
「私は鼠王ではありませんから」
思えばこのパターンは、暴走する視界の一つが拾った鼠王とマフィアの一人が交わした会話を思い起こさせた。
――『ガンビーノさんが初めて会った時に剣を振り回していなければこうにはなりませんでしたか?』
――『特にビジネスの場では第一印象というものは非常に重要じゃ』
学習という言葉を知らないわけではないのだろう。
ただ、学習したがらないだけで。
かつての誇りが、それをさせないだけで。
彼ほど狼のアルファらしい人物もそう居ない。
良い意味でも、悪い意味でも。
ループスの最上位者とはかくあるべきなのではないか。彼の故郷においては、おそらくは。
アルゴスはいつの間にかガンビーノに向けていた双眸の先をカポネに戻した。
カポネは呆れた顔を隠しもせずに視線を返した。
「選択肢なんてないと言いたいんだな。ずっと、得体の知れない刃を振りかぶっていたわけだ」
「私は弱い。その自覚があるだけだ」
「その自覚がある奴はこんなところに出しゃばらないはずだがな」
「困ったな、私に何を求めているんだ」