□カポネさんルート
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アルゴスはカポネの後ろで脚の矢を抜き始めたガンビーノに目を向けた。
もともと痛みに強いのか、脳に寄生した結晶がそれを和らげているのか。
「まずは。その人を止めて、こうして対話に応じてくれてありがとうございます」
転がり薄汚れようとその眼光は怯まず、すぐに剣を構え、視線すら切り伏せてやろうかと臨戦態勢を取っている。
唸り声が鳴らないだけ奇跡のようにすら感じる。
カポネはそれを横目でちらりと確認し、視線をアルゴスに戻した。
「いいや、こちらこそ。アルゴスさんがその女を止めてくれなけりゃ俺たちはどうなっていただろうな」
「へえ!ゴミクズのくせに身の程を察する脳はあったわけだ」
「カポネ…てめえ」
「認めたくないが本当のことだ。挑発には乗らねえ」
アルゴスは眩し気に瞳を細めた。
見たところカポネの気は決して長くもなく温厚でもない。ないが、彼には龍門に揉まれて得たのであろう賢明さがあった。
引き際を心得るのは、自分の限界を認め、対峙した相手を格上と認め、不確定要素への恐ろしさを認める強さの証だ。
それを持っている人は、とても好きだ。
その容姿以外にも好きになれる要素を持っていることがアルゴスは嬉しかった。
見た目だけに惚れたというのも決して勘違いや想いの軽さの証明にはなり得ないはずだが、それはそれだ。
「それで、色々と聞きたいことはあるが……俺に質問権はないんだろ?」
カポネからかけられた言葉に、アルゴスはパチパチと瞬きをした。
眩し気に細めていた目から、再び感情が消えるのをまっすぐ見つめながら、カポネは言葉を乞う。
「何を話してくれるんだ?」
彼女が息を吐く。
カポネはアルゴスの息遣いと声も好きだった。
「単刀直入に言います」
カポネの耳に待ちわびた声が届く。
「あなた達を私の側近として迎えたい」
アルゴスはポケットの一つから、その『布』の端を掴んで取り出した。
多少滲んだが原形をとどめて既に乾いている、マフィアの男から貰った血文字の番号がカポネの視界に入る。
「それは…そいつは」
「断っておくと彼には手を出していません。これは、彼きっての頼みなんです。あなたを保護してほしいと」
「……いつだ…?」
「数刻前、龍門の中心で」
「――」
「ねえ。キミは、なにを言ってるの?ドクター」
カポネの声を待たずして、雌の銀狼が鳴いた。
捕まれた肩に、アルゴスがラップランドに顔を向けた。
「どういうつもり?誰に頼まれたか知らないけど、なにをしようとしているのかわかってる?ドクター」
「あまり良くない人材をスカウトしているのはわかっている」
「違うね」
アルゴスの黒い肩口に、ラップランドの青白く細い指先が食い込んだ。
「権力を振りかざし、ボクから獲物を残らず奪おうとしている!」
アルゴスは静かに首を横に振った。
「申し訳ないが、私も彼らが欲しいんだ。……痛い、ラップランド、痛い」
「いくら、みんなの大事な大事なドクターでも、ボクを無視して好き勝手することは許せない。許容できないよ」
笑みを消したラップランドが、牙を見せてアルゴスを睨み上げた。
本気で殺気を向けてきた銀狼に、やはりアルゴスは目を閉じて首を横に振った。
――手を出すな。
その後ろで毒尾を構える、もう一つの殺気を宥めるように。
「言い分を聞こう。確かに彼らを先に見つけたのはラップランドの方だ」
「ボクはね、懐かしい過去を追走する切っ掛けをあげたいんだ。テキサスに、あげたいんだ。昔馴染みの首を転がして」
一周目と同じ意図。
アルゴスは手にしていた布をポケットに仕舞った。
「譲れないか」
「ボクが?」
「……」
「このボクの方が譲れと?」
口角は上がらないまま、強く目を合わせ、禍々しく鼻筋を寄せ、牙を出し、耳を前に立てている。
獣の要素が、ラップランドの攻撃性を顕わにし続けている。
一周目では踏みとどめられたように見えたが、今回はそうではないらしい。
もしくは…一周目はおとなしく従ったフリだけで、隙を見て狩るつもりだったとも否定はできない。
肯定もできないが。
「頼むよ」
それだけ言って、アルゴスはラップランドの手を振り払い、視線を外し、歩んだ。
ぐるぐると唸り出しそうな目つきでアルゴスを睨む彼女の手は、しかし異様なほど簡単に外れた。
野生のカンのようなものだった。
アルゴスはラップランドの手を振り払ったほうとは逆の腕にぶら下がる人差し指の先を、クイと曲げた。
それに感づいたマンティコアが『ラップランドの眼前にセットしていた』毒尾を下げて、そろりとついてきた。
アルゴスは一歩一歩と前進し、カポネとガンビーノそれぞれ手を伸ばせば届くほどの間合いにまで入った。
「良い待遇とは言えない。けれど命が失われる程ではない」
足を止めて、アルゴスは両手を差し出した。
一週目の時のように、ガンビーノとカポネ、それぞれに向けて。
「あなた達を助けたい」
もともと痛みに強いのか、脳に寄生した結晶がそれを和らげているのか。
「まずは。その人を止めて、こうして対話に応じてくれてありがとうございます」
転がり薄汚れようとその眼光は怯まず、すぐに剣を構え、視線すら切り伏せてやろうかと臨戦態勢を取っている。
唸り声が鳴らないだけ奇跡のようにすら感じる。
カポネはそれを横目でちらりと確認し、視線をアルゴスに戻した。
「いいや、こちらこそ。アルゴスさんがその女を止めてくれなけりゃ俺たちはどうなっていただろうな」
「へえ!ゴミクズのくせに身の程を察する脳はあったわけだ」
「カポネ…てめえ」
「認めたくないが本当のことだ。挑発には乗らねえ」
アルゴスは眩し気に瞳を細めた。
見たところカポネの気は決して長くもなく温厚でもない。ないが、彼には龍門に揉まれて得たのであろう賢明さがあった。
引き際を心得るのは、自分の限界を認め、対峙した相手を格上と認め、不確定要素への恐ろしさを認める強さの証だ。
それを持っている人は、とても好きだ。
その容姿以外にも好きになれる要素を持っていることがアルゴスは嬉しかった。
見た目だけに惚れたというのも決して勘違いや想いの軽さの証明にはなり得ないはずだが、それはそれだ。
「それで、色々と聞きたいことはあるが……俺に質問権はないんだろ?」
カポネからかけられた言葉に、アルゴスはパチパチと瞬きをした。
眩し気に細めていた目から、再び感情が消えるのをまっすぐ見つめながら、カポネは言葉を乞う。
「何を話してくれるんだ?」
彼女が息を吐く。
カポネはアルゴスの息遣いと声も好きだった。
「単刀直入に言います」
カポネの耳に待ちわびた声が届く。
「あなた達を私の側近として迎えたい」
アルゴスはポケットの一つから、その『布』の端を掴んで取り出した。
多少滲んだが原形をとどめて既に乾いている、マフィアの男から貰った血文字の番号がカポネの視界に入る。
「それは…そいつは」
「断っておくと彼には手を出していません。これは、彼きっての頼みなんです。あなたを保護してほしいと」
「……いつだ…?」
「数刻前、龍門の中心で」
「――」
「ねえ。キミは、なにを言ってるの?ドクター」
カポネの声を待たずして、雌の銀狼が鳴いた。
捕まれた肩に、アルゴスがラップランドに顔を向けた。
「どういうつもり?誰に頼まれたか知らないけど、なにをしようとしているのかわかってる?ドクター」
「あまり良くない人材をスカウトしているのはわかっている」
「違うね」
アルゴスの黒い肩口に、ラップランドの青白く細い指先が食い込んだ。
「権力を振りかざし、ボクから獲物を残らず奪おうとしている!」
アルゴスは静かに首を横に振った。
「申し訳ないが、私も彼らが欲しいんだ。……痛い、ラップランド、痛い」
「いくら、みんなの大事な大事なドクターでも、ボクを無視して好き勝手することは許せない。許容できないよ」
笑みを消したラップランドが、牙を見せてアルゴスを睨み上げた。
本気で殺気を向けてきた銀狼に、やはりアルゴスは目を閉じて首を横に振った。
――手を出すな。
その後ろで毒尾を構える、もう一つの殺気を宥めるように。
「言い分を聞こう。確かに彼らを先に見つけたのはラップランドの方だ」
「ボクはね、懐かしい過去を追走する切っ掛けをあげたいんだ。テキサスに、あげたいんだ。昔馴染みの首を転がして」
一周目と同じ意図。
アルゴスは手にしていた布をポケットに仕舞った。
「譲れないか」
「ボクが?」
「……」
「このボクの方が譲れと?」
口角は上がらないまま、強く目を合わせ、禍々しく鼻筋を寄せ、牙を出し、耳を前に立てている。
獣の要素が、ラップランドの攻撃性を顕わにし続けている。
一周目では踏みとどめられたように見えたが、今回はそうではないらしい。
もしくは…一周目はおとなしく従ったフリだけで、隙を見て狩るつもりだったとも否定はできない。
肯定もできないが。
「頼むよ」
それだけ言って、アルゴスはラップランドの手を振り払い、視線を外し、歩んだ。
ぐるぐると唸り出しそうな目つきでアルゴスを睨む彼女の手は、しかし異様なほど簡単に外れた。
野生のカンのようなものだった。
アルゴスはラップランドの手を振り払ったほうとは逆の腕にぶら下がる人差し指の先を、クイと曲げた。
それに感づいたマンティコアが『ラップランドの眼前にセットしていた』毒尾を下げて、そろりとついてきた。
アルゴスは一歩一歩と前進し、カポネとガンビーノそれぞれ手を伸ばせば届くほどの間合いにまで入った。
「良い待遇とは言えない。けれど命が失われる程ではない」
足を止めて、アルゴスは両手を差し出した。
一週目の時のように、ガンビーノとカポネ、それぞれに向けて。
「あなた達を助けたい」