□カポネさんルート
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「ハッ!俺とカポネを腑抜けた愛人にでもするつもりか?」
先に発したのはガンビーノの方だった。
カポネは慌てた様に「おい」と発し、アルゴスは何を思うでもなく「しませんよ」とだけ返答した。
「とことんコケにしやがる」
気に入らない。
ガンビーノは唸り声を上げた。
「あなたは魅力的ですが、この手にはそうした意図はありません」
怖じもせず淡々と返答するのが気に入らない。
得体の知れない、特有の威圧感が気に入らない。
命か、誇りか。
まさに、命が惜しけりゃ『テメエの牙をへし折って、代わりに首輪でもハメて大人しく』していろと脅されている。
「…どいつも、こいつも」
下等を、馬鹿を、小汚い獣を見るような目。
憎いあの女が向けてきたような眼差しに、虫唾が走る。
支配している気になって見下してくる目が気に入らない。
カポネの野郎が片手を浮かせていることも気に入らない。
この状況に至った全てが気に入らない。
あの女がいなければ!ペンギン急便の女どもがいなければ!そこの落ちぶれ狼がいなければ!このふざけた女がいなければ!
「なにもかも…女、女、女どもが!!ふざけやがってッ!」
そうしてガンビーノは、感情のまま身体を瞬発させた。
先ほどの一撃で取り落とし、ほど近くに転がっていた、抜刀済の剣に手を伸ばし――掴み取る。
「よせガンビーノ!」
カポネが発音を終えた時には、既にガンビーノも『終えていた』。
「!」
「あ、ドクター…!」
アルゴスの服が熱く染まり始めた。
その中心である腹部には、一本の剣。
然りと貫通していたそれは、次の瞬間、捻りながら引き抜かれていった。
「…あーあ…言わんこっちゃない」
男の愛剣は従順に、傷口へ空気を巻き込み内臓をかき混ぜながら、そこを抜けた。
その様子を見届けながら、雌の銀狼は呑気に肩を竦めた。
アルゴスの身体は、荒い呼吸だけを吐いて、静かに横倒れた。
「ガンビーノ……っのクソが!!なにもかも…本当にッ何もかもお前がぶち壊しやがった!学習って言葉を知らねえのか*龍門スラング*野郎!!」
「黙れカポネ。シチリア人の誇りを二度捨てる気はねえ。そう俺は何度も言ったよな、腰抜けがよ!」
「なら大人しくおっ死んでろ!!この女の手を掴めば少なくとも生きられたんだ……よくも俺を道連れにしやがったな!」
「うん、その通りだ。」
「!」
「……」
「非常に残念だ。彼女は『我が主』……『我らが主』であったのに…それを失うなんて世界の損失にほかならない。
そうしてしまったゴミも、それを止められなかったクズも、同罪だ。」
雌の銀狼は、ケタケタと愉し気に双剣を抜いた。
「おい、とっとと構えろカポネ」
「ハッ……意味ねえよ。俺達はもう」
「ハハハ!そうさ、君たち、もう楽に死ねないよ。
…うん、たとえ僕が飽きて許しても、ロドスのみんなは絶対に許しはしない」
ラップランドが舌なめずりとともにアーツを解き放たんと息を吸い込んだ。
瞬間。
「安心しろ、そうはならない」
アルゴスの声が、その場に鳴った。
注目を集めたアルゴスはやはり虫の息で、しかし、妙に凪いだ表情をしていた。
よくよく見ればこ慣れた様に回復体位で横たわっている姿は、どこか異様――などと、周囲が思考しかけたその時だった。
前触れもなく、突如として。
感染者が内包する鉱石が、瞬時に肥大化し、その皮膚を突き破り始めた。
「ぐっ…ぁっ!?」
血が飛び散り、痛み、アンテナのように体外へ鋭利に突き出た鉱石がもたらすは―――
「あ゛あっ!」
「ギャアゥッ!」
――その場の、『鉱石病患者』の悲鳴。
「が、がっ…あぁ…?!」
「ガンビーノ!?お前、な、なんだそれは、何が起きた?!」
後頭部から、鋭利な一本が突き出、崩れ落ちたループスの男も、『漏れることなく』。
ガランガランと、それぞれの剣が主人の手から滑り落ちる音が響く。
「そちらは、予想外だったな」
アルゴスは、すぐにガンビーノの頭部を視ていた。
その結晶の位置と状態は…身近なオペレーターに例えるならばスカベンジャーのものとよく似ていた。
カポネの反応を見るに、心当たりと自覚がありつつ秘匿していたのだろう。他組織に無頓着そうなこの男がロドスの存在を記憶していたことに対し合点がいった。
「まあいい…」
アルゴスは喉をひゅうと鳴らし、ふらふらと立ち上がり、振り返った。
『この状態に陥ったオペレーター』が求める視線と、伸ばされた手に応えるように。
アルゴスだけが、沢山見てきた、その姿に。
「はっ…ドクター…なんだい、これぇっ…、今にも、死にそうだ、ドクター…!」
感染者の身体から突き出た鉱石は、少しずつ熱を持ち、発光し始めていた。
耳鳴りのように甲高い音が鳴り始めれば、待ちかねたようにアルゴスは視界を閉じた。
「……大丈夫だ。
今には、まだ至っていないのだから」
かくして、アルゴスのアーツが作動した。
彼女の耳に、聞くに堪えない、聞きなれた破裂音と悲鳴が響いた。
◆
巻き戻り。
黒と静寂に感覚を奪われ。
巻き戻る。
ひとりでに目が開けば、完了の合図。
「――あ、俺か?ってあれ、あんた確か…」
「……、」
気が付いた場所は、龍門の中心だった。