□カポネさんルート
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カポネは薄々感づいてはいたようだが。
その横のガンビーノは、ぐっと疑り深く眉を顰めた。
「なんだと?」
「私の職権濫用で引き入れるので、風当たりは強いでしょうし、地位も役職も約束はできません。
しかし今、あなた方には行き場も命の保証もないと予測します。だから、この道で停泊区の方を向いてここに倒れているのだろうと」
「……」
「ゆえに、私があなた方の命の保証となり、居場所を提供します。悪い話ではないと思いますが、いかがでしょうか」
「下らん脅しだな。何をやらせるつもりだ?」
「真っ当な仕事を。危険も無ければ莫大な収入もない…囚役のような業務を、ずっと」
「何を、させるつもりか聞いたはずだが」
「そうですね……おそらくは、後方業務か、私の側近として秘書の手伝いを頼む可能性が高いですね」
「……つまり、ここで死ぬか、飼い殺しか選べと?」
「抑えろガンビーノ。…アルゴスさん。」
「はい」
「その申し出は確かに、今の俺達には願ってもないものだ。けど、解せねえな。
これは、お前にいったい何のメリットがある?」
カポネの問いにアルゴスの背後からラップランドが「そうだよねえ!」などと鳴いた。
アルゴスは変わらぬ無表情のまま、カポネへと向けていた目を細めた。
「あなたの生存です」
「どういうことだ」
「私はあなたが欲しい。
あなたが私の視界に入った時から私はあなたに惚れている。私を騙し売ろうとしたマフィアの重鎮であろうとも、惚れている。
そして、そのマフィアのボスであるガンビーノさん。あなたにも」
「ふざけてんのか?」
「いいえ」
思わず吐き出したガンビーノの言葉を彼女はすかさず否定した。
「アルゴスさんよ」
「はい」
「ボロは出してなかった筈だが……出会ってから今までの短時間でそこまで知ったのか?」
「ええ。そしてファミリー解散の経緯まで。これでも私は唯者ではありませんから」
先ほどマフィアの男に貰った言葉をちゃっかりと絡めながら、アルゴスは薄く微笑んだ。
カポネは上耳をより低く伏せてジトリとその顔を見上げた。
「……とっくにな。あんたが唯者じゃないってのは、あのサンクタ男や、そこの狼を侍らせた時点で疑っちゃいない」
「そうですか。それで、返答は――」
「それで、だ。
それほどの人物が、顔色一つ変えずに掲げた理由が、惚れた腫れたってのは、あまりに馬鹿げてないか?」
「――ドクターを疑うの?」
暇を持て余すラップランドが、耐えかねたように茶々を入れた。
もしくは、噛みつきどころを見つけて嬉し気に。
「ねえ!ドクター!聞いたかい!?選択権のないゴミクズの分際で、愚かにも、ドクターの言葉を疑った!なんて頭の悪い、…もういいよね!いらないよねえ?」
「要る。ラップランド、私には要るんだ。辛抱してくれ」
アルゴスは腰を上げて振り返り、ラップランドをなだめる様に見つめた。
安定感のない彼女だが、しかし今回は視線だけで随分と落ち着いたようだ。
「フフ…ねえ、本当に正気かい?ドクターってさ、趣味悪いよ」
「惚れた男を前に正気も何もあるか」
「それは失礼、ドクター。どうか後悔無きように」
慇懃無礼に芝居がかったお辞儀をしたラップランドから視線を外し、目前へと向き直る。
アルゴスは、「ですが」と呟いてカポネを見下ろした。
「彼女の言い分にも、一理あります」
その声色に、男二人の背がゾッと冷えた。
今。始めて威圧された。
幾重もの意識に体内を侵し潰されるような、不快で奇妙な重圧感。
恐れによるものだろうが、初めての感覚に、意図せず全身が強張った。
生い立ち上、恐れから怯んだ経験すら豊富だった彼らにとっても、これは初めて感じる『恐れの感覚』だった。
尤も。
アルゴスの『無数の視点』を利用した『威圧』の感覚は無二であるからして。
これに名を付けるとするなら『百眼の重圧』といったところだろうか。
得体の知れない圧に、強張った身体が、未だ出血し続ける深い傷の痛みを主張する。
その痛みがさらに、脳髄と精神を力ずくで引き裂かれながら掻き回されるような苦痛を思い出させる。
カポネは、依然変わらず『伏せた姿勢』のまま、彼女を『見上げた』。
ギラリと光る一対の緑は、そこに孔をあけて魔界の空を繋げたのではと錯覚してしまうほどに底無しで、不穏に遠く、恐ろしく不気味で、されど怖いくらいに美しかった。
――そうだ。この姿勢こそが、この場の力関係をはっきりと物語っているじゃないか。
怯んだ視線を受け、アルゴスは圧をそのままに、ゆっくりとしゃがみ込んだ。
「警戒し疑う気持ちも、納得できるものが無いと安心できない気持ちも予測していました。だから会話に応じただけで、選択肢を増やしたり譲歩する気も無いんですよ」
「……っ気付かれてたのか」
「きちんとあなたの意思で諦めてくれることを期待していましたが、急かされてしまったからには、私も彼女をいつまでも待たせることはできません」
ふっとアルゴスはガンビーノに視線を向けた。
睨み癖のある、立派なループスの男。
もしオペレーターとするなら、総合評価星3前衛あたりだろうか。総合評価星5先鋒のテキサスにやや遅れを取っていたところからして。
無論そのような予定はないが。
カポネほどの魅力を感じているわけではないにしろ、ガンビーノにも惚れていると言ったのはあながち間違いではない。
ガンビーノの思想は、攻撃的で危険だが。
しかしアルゴスは、スカベンジャーやイフリータのような攻撃的な性格のオペレーターが好きだった。
尤も。
まとめて拾い上げようとする一番大きな理由は、ガンビーノを見捨てればカポネの恨みを買ってしまうような気がしたから、であったのだが。
「……根拠の無い益、根拠の理解できない益は怖いでしょうが、もはや理解させる時間も失ってしまった」
アルゴスは片膝をつき、両手を差し出した。
「返答を。
牙と命を引き換えて、どうかロドスへ」
手の先はガンビーノとカポネ、それぞれに向いている。
背後のラップランドが「やめた方がいいと思うんだけどね」などと極めて正論を謳っているが、聞こえないふりをした。
その横のガンビーノは、ぐっと疑り深く眉を顰めた。
「なんだと?」
「私の職権濫用で引き入れるので、風当たりは強いでしょうし、地位も役職も約束はできません。
しかし今、あなた方には行き場も命の保証もないと予測します。だから、この道で停泊区の方を向いてここに倒れているのだろうと」
「……」
「ゆえに、私があなた方の命の保証となり、居場所を提供します。悪い話ではないと思いますが、いかがでしょうか」
「下らん脅しだな。何をやらせるつもりだ?」
「真っ当な仕事を。危険も無ければ莫大な収入もない…囚役のような業務を、ずっと」
「何を、させるつもりか聞いたはずだが」
「そうですね……おそらくは、後方業務か、私の側近として秘書の手伝いを頼む可能性が高いですね」
「……つまり、ここで死ぬか、飼い殺しか選べと?」
「抑えろガンビーノ。…アルゴスさん。」
「はい」
「その申し出は確かに、今の俺達には願ってもないものだ。けど、解せねえな。
これは、お前にいったい何のメリットがある?」
カポネの問いにアルゴスの背後からラップランドが「そうだよねえ!」などと鳴いた。
アルゴスは変わらぬ無表情のまま、カポネへと向けていた目を細めた。
「あなたの生存です」
「どういうことだ」
「私はあなたが欲しい。
あなたが私の視界に入った時から私はあなたに惚れている。私を騙し売ろうとしたマフィアの重鎮であろうとも、惚れている。
そして、そのマフィアのボスであるガンビーノさん。あなたにも」
「ふざけてんのか?」
「いいえ」
思わず吐き出したガンビーノの言葉を彼女はすかさず否定した。
「アルゴスさんよ」
「はい」
「ボロは出してなかった筈だが……出会ってから今までの短時間でそこまで知ったのか?」
「ええ。そしてファミリー解散の経緯まで。これでも私は唯者ではありませんから」
先ほどマフィアの男に貰った言葉をちゃっかりと絡めながら、アルゴスは薄く微笑んだ。
カポネは上耳をより低く伏せてジトリとその顔を見上げた。
「……とっくにな。あんたが唯者じゃないってのは、あのサンクタ男や、そこの狼を侍らせた時点で疑っちゃいない」
「そうですか。それで、返答は――」
「それで、だ。
それほどの人物が、顔色一つ変えずに掲げた理由が、惚れた腫れたってのは、あまりに馬鹿げてないか?」
「――ドクターを疑うの?」
暇を持て余すラップランドが、耐えかねたように茶々を入れた。
もしくは、噛みつきどころを見つけて嬉し気に。
「ねえ!ドクター!聞いたかい!?選択権のないゴミクズの分際で、愚かにも、ドクターの言葉を疑った!なんて頭の悪い、…もういいよね!いらないよねえ?」
「要る。ラップランド、私には要るんだ。辛抱してくれ」
アルゴスは腰を上げて振り返り、ラップランドをなだめる様に見つめた。
安定感のない彼女だが、しかし今回は視線だけで随分と落ち着いたようだ。
「フフ…ねえ、本当に正気かい?ドクターってさ、趣味悪いよ」
「惚れた男を前に正気も何もあるか」
「それは失礼、ドクター。どうか後悔無きように」
慇懃無礼に芝居がかったお辞儀をしたラップランドから視線を外し、目前へと向き直る。
アルゴスは、「ですが」と呟いてカポネを見下ろした。
「彼女の言い分にも、一理あります」
その声色に、男二人の背がゾッと冷えた。
今。始めて威圧された。
幾重もの意識に体内を侵し潰されるような、不快で奇妙な重圧感。
恐れによるものだろうが、初めての感覚に、意図せず全身が強張った。
生い立ち上、恐れから怯んだ経験すら豊富だった彼らにとっても、これは初めて感じる『恐れの感覚』だった。
尤も。
アルゴスの『無数の視点』を利用した『威圧』の感覚は無二であるからして。
これに名を付けるとするなら『百眼の重圧』といったところだろうか。
得体の知れない圧に、強張った身体が、未だ出血し続ける深い傷の痛みを主張する。
その痛みがさらに、脳髄と精神を力ずくで引き裂かれながら掻き回されるような苦痛を思い出させる。
カポネは、依然変わらず『伏せた姿勢』のまま、彼女を『見上げた』。
ギラリと光る一対の緑は、そこに孔をあけて魔界の空を繋げたのではと錯覚してしまうほどに底無しで、不穏に遠く、恐ろしく不気味で、されど怖いくらいに美しかった。
――そうだ。この姿勢こそが、この場の力関係をはっきりと物語っているじゃないか。
怯んだ視線を受け、アルゴスは圧をそのままに、ゆっくりとしゃがみ込んだ。
「警戒し疑う気持ちも、納得できるものが無いと安心できない気持ちも予測していました。だから会話に応じただけで、選択肢を増やしたり譲歩する気も無いんですよ」
「……っ気付かれてたのか」
「きちんとあなたの意思で諦めてくれることを期待していましたが、急かされてしまったからには、私も彼女をいつまでも待たせることはできません」
ふっとアルゴスはガンビーノに視線を向けた。
睨み癖のある、立派なループスの男。
もしオペレーターとするなら、総合評価星3前衛あたりだろうか。総合評価星5先鋒のテキサスにやや遅れを取っていたところからして。
無論そのような予定はないが。
カポネほどの魅力を感じているわけではないにしろ、ガンビーノにも惚れていると言ったのはあながち間違いではない。
ガンビーノの思想は、攻撃的で危険だが。
しかしアルゴスは、スカベンジャーやイフリータのような攻撃的な性格のオペレーターが好きだった。
尤も。
まとめて拾い上げようとする一番大きな理由は、ガンビーノを見捨てればカポネの恨みを買ってしまうような気がしたから、であったのだが。
「……根拠の無い益、根拠の理解できない益は怖いでしょうが、もはや理解させる時間も失ってしまった」
アルゴスは片膝をつき、両手を差し出した。
「返答を。
牙と命を引き換えて、どうかロドスへ」
手の先はガンビーノとカポネ、それぞれに向いている。
背後のラップランドが「やめた方がいいと思うんだけどね」などと極めて正論を謳っているが、聞こえないふりをした。