□カポネさんルート
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「ふーん」
アルゴスの態度にラップランドはゆっくりと拘束を外した。
細められた視線はアルゴスの視界を横切って、進路を開けた。
「それじゃあ聞こうか。どうするの?」
「話す」
「へえ。果たしてうまくいくだろうか?」
自由となった身体を伴って、アルゴスは未だ疲労にきしむ足を向けた。
口元を触りながら優位に笑う銀狼を通過し、緑の双眸が『目的』の姿を拾う。
その先には。
睨み上げてくる鋭い瞳と、単純な困惑を湛えた探るような眼。
また一歩踏み出したところで、銀狼が鳴いた。
「ねえ、ボクから離れるの?ボクは動く気分じゃないんだ。危なくなったら助けられないよ」
「それでいい。必要ない」
「ええ?ドクターは、ついかぶりつきたくなる肌と指をしてるから、おすすめできないけどなぁ」
「ラップランド」
「はいはい。ボクの忠告を聞かないなんて、どうなっても知らないよ」
雌の銀狼は甲高くケラケラと嗤う。
さも耳障りそうに、男達の伏せられた耳が、一振り揺れた。
アルゴスは歩く。
その目前まで来て、膝を折った。
「カポネさん」
しゃがみ込んで、這いつくばる男の片方に声を掛けた。
探る目つきと、視線が合う。
「あんた……何者なんだ?」
吐かれたのは、予想通りの言葉だった。
「組織のトップにほど近い重鎮。あなたと同じようなものです」
「なぜ俺を助けた?」
口元に伝うものを拭いながら、カポネはアルゴスを見上げた。
それに彼女が答える前に、その背後でラップランドが噴き出した。
「うわあ!このゴミ、助けられたと認識するのが早いよドクター。それだけの価値がはたして自分にあるとでも思っているのだろうか!」
「ラップランド」
「ねえドクター!そっちが入り用なら、もう片方はいらないよね?ボクの好きにしてもいいかなぁ?」
「だめだ」
「我が主はケチだ」
カンッと、転がる空き缶がアルゴスの背中にぶつけられた。
却下中断の代償に、アルゴスの背中に汚れと痛みが付着した。
だがその痛みも汚れも、目前に這いつくばる二人の男に比べれば些事だ。
ガンビーノは屈辱に上げた唸り声をカポネに制されていた。
「刺激するな」などと。
――その賢明さがなお鼻につく。愚かなのは俺の方だというのか。
頭の隅で分かっているからこそ認められない。それすらも屈辱だった。
「反抗的だね」
「頼むから抑えてくれ。ラップランド」
暗がりに見える、濃い紫色の髪をした女は、どう見ても弱く脆い。
それなのに、その女はあの凶悪なヒトリオオカミを言葉一つで宥めた。
それが気に入らない。
睨み付けていれば、その気味悪く鮮やかな緑色の眼が、怯えもなく注がれた。
恐れられないことが、気に入らない。
「私が明らかに不審な自覚はあります。ただこれだけは信じて欲しいのです、私にはあなた方に対し敵意も蔑視も無いのだということを」
その女は瞳を閉じて膝をつくと、頭を垂れて言葉を続けた。
身を起こそうとするも、その背後のヒトリオオカミが剣先を壁に叩き付けて牽制してきた。
優位を確立しておきながらへりくだる女の悪趣味さと、それで怯んでしまった己に苛立つ。
「改めて自己紹介をさせていただきます。
私はアルゴス。移動都市を保有する製薬会社、ロドスアイランドの戦場指揮官です」
「製薬会社の戦場指揮官だと?」
カポネの言葉に瞳を開けたアルゴスが頷いた。
「正しくは最上級軍事戦術指揮官、敬称は『ドクター』…を、務める者ですが。
お二方は……ロドスの名をご存じでいらっしゃいますか?」
「製薬会社だの宣っておきながら、感染者を使って感染者狩りをしている連中だろ」
吐き捨てるように答えたのはガンビーノだった。
カポネの「お前がいち企業の情報を記憶に留めることができたのか」と意外そうな視線を無視してアルゴスを威圧するように睨み付けたが、彼女は瞬き一つしかしなかった。
「正しくないとは言えませんが、それが目標ではありません。
鉱石病に対する研究を主にしつつ、感染者が各地で起こした問題の解決を目的に活動を行っている企業です」
「俺達には縁のない話だな」
ガンビーノの言葉にアルゴスは軽く首を振る。
「例えば、つい本日の日中に、龍門への襲撃を企てた感染者組織を殲滅したのがロドスです」
「知らねえな」
「そうですか。
では、ペンギン急便が持つパイプの先。その一つとでも認識していただければ結構です」
「何?」
「それで、そのロドスの最上級指揮官様がいったい何の用だ」
ペンギン急便のパイプ先という言葉に反応したカポネの呟きへ被せるようにガンビーノが問いかけた。
アルゴスは、間をおいて答えた。
「お二方を、ロドスに迎えたい」
アルゴスの態度にラップランドはゆっくりと拘束を外した。
細められた視線はアルゴスの視界を横切って、進路を開けた。
「それじゃあ聞こうか。どうするの?」
「話す」
「へえ。果たしてうまくいくだろうか?」
自由となった身体を伴って、アルゴスは未だ疲労にきしむ足を向けた。
口元を触りながら優位に笑う銀狼を通過し、緑の双眸が『目的』の姿を拾う。
その先には。
睨み上げてくる鋭い瞳と、単純な困惑を湛えた探るような眼。
また一歩踏み出したところで、銀狼が鳴いた。
「ねえ、ボクから離れるの?ボクは動く気分じゃないんだ。危なくなったら助けられないよ」
「それでいい。必要ない」
「ええ?ドクターは、ついかぶりつきたくなる肌と指をしてるから、おすすめできないけどなぁ」
「ラップランド」
「はいはい。ボクの忠告を聞かないなんて、どうなっても知らないよ」
雌の銀狼は甲高くケラケラと嗤う。
さも耳障りそうに、男達の伏せられた耳が、一振り揺れた。
アルゴスは歩く。
その目前まで来て、膝を折った。
「カポネさん」
しゃがみ込んで、這いつくばる男の片方に声を掛けた。
探る目つきと、視線が合う。
「あんた……何者なんだ?」
吐かれたのは、予想通りの言葉だった。
「組織のトップにほど近い重鎮。あなたと同じようなものです」
「なぜ俺を助けた?」
口元に伝うものを拭いながら、カポネはアルゴスを見上げた。
それに彼女が答える前に、その背後でラップランドが噴き出した。
「うわあ!このゴミ、助けられたと認識するのが早いよドクター。それだけの価値がはたして自分にあるとでも思っているのだろうか!」
「ラップランド」
「ねえドクター!そっちが入り用なら、もう片方はいらないよね?ボクの好きにしてもいいかなぁ?」
「だめだ」
「我が主はケチだ」
カンッと、転がる空き缶がアルゴスの背中にぶつけられた。
却下中断の代償に、アルゴスの背中に汚れと痛みが付着した。
だがその痛みも汚れも、目前に這いつくばる二人の男に比べれば些事だ。
ガンビーノは屈辱に上げた唸り声をカポネに制されていた。
「刺激するな」などと。
――その賢明さがなお鼻につく。愚かなのは俺の方だというのか。
頭の隅で分かっているからこそ認められない。それすらも屈辱だった。
「反抗的だね」
「頼むから抑えてくれ。ラップランド」
暗がりに見える、濃い紫色の髪をした女は、どう見ても弱く脆い。
それなのに、その女はあの凶悪なヒトリオオカミを言葉一つで宥めた。
それが気に入らない。
睨み付けていれば、その気味悪く鮮やかな緑色の眼が、怯えもなく注がれた。
恐れられないことが、気に入らない。
「私が明らかに不審な自覚はあります。ただこれだけは信じて欲しいのです、私にはあなた方に対し敵意も蔑視も無いのだということを」
その女は瞳を閉じて膝をつくと、頭を垂れて言葉を続けた。
身を起こそうとするも、その背後のヒトリオオカミが剣先を壁に叩き付けて牽制してきた。
優位を確立しておきながらへりくだる女の悪趣味さと、それで怯んでしまった己に苛立つ。
「改めて自己紹介をさせていただきます。
私はアルゴス。移動都市を保有する製薬会社、ロドスアイランドの戦場指揮官です」
「製薬会社の戦場指揮官だと?」
カポネの言葉に瞳を開けたアルゴスが頷いた。
「正しくは最上級軍事戦術指揮官、敬称は『ドクター』…を、務める者ですが。
お二方は……ロドスの名をご存じでいらっしゃいますか?」
「製薬会社だの宣っておきながら、感染者を使って感染者狩りをしている連中だろ」
吐き捨てるように答えたのはガンビーノだった。
カポネの「お前がいち企業の情報を記憶に留めることができたのか」と意外そうな視線を無視してアルゴスを威圧するように睨み付けたが、彼女は瞬き一つしかしなかった。
「正しくないとは言えませんが、それが目標ではありません。
鉱石病に対する研究を主にしつつ、感染者が各地で起こした問題の解決を目的に活動を行っている企業です」
「俺達には縁のない話だな」
ガンビーノの言葉にアルゴスは軽く首を振る。
「例えば、つい本日の日中に、龍門への襲撃を企てた感染者組織を殲滅したのがロドスです」
「知らねえな」
「そうですか。
では、ペンギン急便が持つパイプの先。その一つとでも認識していただければ結構です」
「何?」
「それで、そのロドスの最上級指揮官様がいったい何の用だ」
ペンギン急便のパイプ先という言葉に反応したカポネの呟きへ被せるようにガンビーノが問いかけた。
アルゴスは、間をおいて答えた。
「お二方を、ロドスに迎えたい」