□カポネさんルート
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イグゼキュターはカポネが会計を終えて立ち去る姿を認めると、先ほどカポネが座っていた席に座った。
声を潜める必要の無くなったイグゼキュターは、気を取り直して情報の提供を再開した。
アルゴスは『視点』を1つカポネにつけながら話を聞き、返答していた。
車で移動していってしまったためすぐに範囲の限界を迎えたが。
「――で、頼む。パスワードは明日中に変えておく。私からは以上だ。」
「承知しました。では、録音を送信いたします。」
受けた情報に対する返答を終えた時には、既にカポネはアルゴスの視界から消えていた。
残念に思いつつも、イグゼキュターへの返答に淀みはない。
無数の視覚情報を同時に処理するには、関連性の無い複数の思考を同時並行することが不可欠であり、彼女にとってそれは自然なことだった。
彼女の思考の一つが今もカポネに向いていることなど露知らず、イグゼキュターは先ほどテーブルに置いた端末を取り、録音データをロドスに送った。
「送信完了しました」
「ああ、お疲れ様。悪かったなイグゼキュター。煩わせた」
「とんでもございません」
「出ようか」
「かしこまりました」
ガタと席を立ったアルゴスにイグゼキュターも続いた。
害意は感じられないが、未だに視線を集めていることに気付いているアルゴスは、いい加減居心地の悪さを感じ始めていた。
揃ってカフェの出入り口に向かい、アルゴスが店員に会釈をして退店した。
「は……あっありがとうございました!またおこしくださいませ!!」
店員は見とれるのもそこそこに、慌ててお決まりの挨拶を二つの背中に投げたのだった。
人形のような造形の男女が並び、淡々と言葉を交わしている姿は、その空間だけ、切り取られた別世界のようだった。
会計を終えた客にはなるべく早く離席を促すのがこの店の店員の仕事であったのだが、その不可侵さすら感じられる異質で美しい男女の空気に気圧され、彼等は声を掛けられずにいた。
そんな店員達を咎められる者は、少なくともこの場には居なかった。
一方。
退店してしばらく歩いたところで、イグゼキュターが自分についてきていることに気付いたアルゴスは顔を上げていた。
「直帰しないのか?」
「なぜです?」
「仕事は終えた筈だろう」
「それはドクター次第です」
イグゼキュターの返答に、アルゴスは首を傾げた。
「私にまだ何か?」
「ご同行します」
ああ、とアルゴスは合点の声を呟いた。
「護衛か」
「ええ。お一人で出ているとは想定外でしたので、急遽の人選となりましたが」
「すまない」
「受け取りましょう。一人であるというのに私の接近に気付けないほど無防備でいるとは、流石に不注意が過ぎるかと」
「一言もないな。次があれば気を付けよう」
「ところで、そちらは?」
イグゼキュターは、彼女の手にあるものを視線で差した。
何やら書きこまれた一枚の紙ナプキンを。
「……ただの記念だな」
アルゴスはそれを畳んで鞄に仕舞った。
視界はすでに動き透視している。通りすがりの観光客が持つ地図と、紙ナプキンに書かれた番地を見比べて進路を決めていた。
心当たりの無い方向に足を向けるアルゴスに、イグゼキュターは黙って続いた。
彼女はふとそんな彼に振り向いた。
「…イグゼキュターはカジノに行ったことはあるか?」
「職務として訪問したことはありますが、顧客としてはありませんね」
「だろうな」
「なぜそのようなことを?」
「見聞を広げようと思ってな」
「もしや、カジノに顧客として?」
「とめるか?」
「…………いえ。」
「また珍しく間があったな。嫌か?」
「いえ、断じて」
「そうか」
かくして、二人は紹介されたカジノに赴いた。
その様子は詳細語るに及ばす。
どんな煽りにも動じない冷血な男女がはした金で数度勝ち、退店した。
席を立ち出口に向かうところ、仕込みらしきスタッフや客に引き止められたが、彼女が、店内においてディーラーや客の区別なく行われた『繊細な細工の詳細』の実行時刻と実施テーブル名を残らず口にすれば、それらは黙った。
付近を歩き回っていれば、カジノ内で見かけた顔に恐喝されたが、彼が、謹んで『穏便な話し合い』に応じれば、残らずそれらは黙った。
「他に用向きは?」
アタッシュケースに付着した血を拭き取りながらイグゼキュターは、ついにアルゴスへと尋ねた。
アルゴスは首を横に振った。
「食事に娯楽。魅力的な露店や店は多いが、実際に食べたり体験したいと赴くような気にはならないものだな」
「同意見です。治安もあまり良くはないようですが、いかがなさいますか?」
「帰還するとしようか。堪能はできた」
「かしこまりました」
実際には、アルゴスは周辺でカポネの痕跡を探して歩き回っていたのだが。
そのような事を伝えるわけにはいかず、さりとてそれに代わる言い訳をしたところで誤解や面倒が無駄に増えるだけであった。
そうしてロドスに戻ったドクターはイグゼキュターと別れた。
一人で外出したことに対しアーミヤとケルシーに小言を貰うなどしてから、自室へと足を向けるのだった。
声を潜める必要の無くなったイグゼキュターは、気を取り直して情報の提供を再開した。
アルゴスは『視点』を1つカポネにつけながら話を聞き、返答していた。
車で移動していってしまったためすぐに範囲の限界を迎えたが。
「――で、頼む。パスワードは明日中に変えておく。私からは以上だ。」
「承知しました。では、録音を送信いたします。」
受けた情報に対する返答を終えた時には、既にカポネはアルゴスの視界から消えていた。
残念に思いつつも、イグゼキュターへの返答に淀みはない。
無数の視覚情報を同時に処理するには、関連性の無い複数の思考を同時並行することが不可欠であり、彼女にとってそれは自然なことだった。
彼女の思考の一つが今もカポネに向いていることなど露知らず、イグゼキュターは先ほどテーブルに置いた端末を取り、録音データをロドスに送った。
「送信完了しました」
「ああ、お疲れ様。悪かったなイグゼキュター。煩わせた」
「とんでもございません」
「出ようか」
「かしこまりました」
ガタと席を立ったアルゴスにイグゼキュターも続いた。
害意は感じられないが、未だに視線を集めていることに気付いているアルゴスは、いい加減居心地の悪さを感じ始めていた。
揃ってカフェの出入り口に向かい、アルゴスが店員に会釈をして退店した。
「は……あっありがとうございました!またおこしくださいませ!!」
店員は見とれるのもそこそこに、慌ててお決まりの挨拶を二つの背中に投げたのだった。
人形のような造形の男女が並び、淡々と言葉を交わしている姿は、その空間だけ、切り取られた別世界のようだった。
会計を終えた客にはなるべく早く離席を促すのがこの店の店員の仕事であったのだが、その不可侵さすら感じられる異質で美しい男女の空気に気圧され、彼等は声を掛けられずにいた。
そんな店員達を咎められる者は、少なくともこの場には居なかった。
一方。
退店してしばらく歩いたところで、イグゼキュターが自分についてきていることに気付いたアルゴスは顔を上げていた。
「直帰しないのか?」
「なぜです?」
「仕事は終えた筈だろう」
「それはドクター次第です」
イグゼキュターの返答に、アルゴスは首を傾げた。
「私にまだ何か?」
「ご同行します」
ああ、とアルゴスは合点の声を呟いた。
「護衛か」
「ええ。お一人で出ているとは想定外でしたので、急遽の人選となりましたが」
「すまない」
「受け取りましょう。一人であるというのに私の接近に気付けないほど無防備でいるとは、流石に不注意が過ぎるかと」
「一言もないな。次があれば気を付けよう」
「ところで、そちらは?」
イグゼキュターは、彼女の手にあるものを視線で差した。
何やら書きこまれた一枚の紙ナプキンを。
「……ただの記念だな」
アルゴスはそれを畳んで鞄に仕舞った。
視界はすでに動き透視している。通りすがりの観光客が持つ地図と、紙ナプキンに書かれた番地を見比べて進路を決めていた。
心当たりの無い方向に足を向けるアルゴスに、イグゼキュターは黙って続いた。
彼女はふとそんな彼に振り向いた。
「…イグゼキュターはカジノに行ったことはあるか?」
「職務として訪問したことはありますが、顧客としてはありませんね」
「だろうな」
「なぜそのようなことを?」
「見聞を広げようと思ってな」
「もしや、カジノに顧客として?」
「とめるか?」
「…………いえ。」
「また珍しく間があったな。嫌か?」
「いえ、断じて」
「そうか」
かくして、二人は紹介されたカジノに赴いた。
その様子は詳細語るに及ばす。
どんな煽りにも動じない冷血な男女がはした金で数度勝ち、退店した。
席を立ち出口に向かうところ、仕込みらしきスタッフや客に引き止められたが、彼女が、店内においてディーラーや客の区別なく行われた『繊細な細工の詳細』の実行時刻と実施テーブル名を残らず口にすれば、それらは黙った。
付近を歩き回っていれば、カジノ内で見かけた顔に恐喝されたが、彼が、謹んで『穏便な話し合い』に応じれば、残らずそれらは黙った。
「他に用向きは?」
アタッシュケースに付着した血を拭き取りながらイグゼキュターは、ついにアルゴスへと尋ねた。
アルゴスは首を横に振った。
「食事に娯楽。魅力的な露店や店は多いが、実際に食べたり体験したいと赴くような気にはならないものだな」
「同意見です。治安もあまり良くはないようですが、いかがなさいますか?」
「帰還するとしようか。堪能はできた」
「かしこまりました」
実際には、アルゴスは周辺でカポネの痕跡を探して歩き回っていたのだが。
そのような事を伝えるわけにはいかず、さりとてそれに代わる言い訳をしたところで誤解や面倒が無駄に増えるだけであった。
そうしてロドスに戻ったドクターはイグゼキュターと別れた。
一人で外出したことに対しアーミヤとケルシーに小言を貰うなどしてから、自室へと足を向けるのだった。