□アルート
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アは、同情と、不謹慎を自覚しながらももうひとつの感情を抱いていた。
「旦那」
「なんだ?」
「俺以外に、そういった話は?」
彼女の弱みを知っているのが自分だけであればいいという気持ち。
彼女を暴いたアーミヤに、存在するかもわからない第三者に嫉妬しかけていた。
「……」
アルゴスはアの表情を見つめた。
その細く黒い瞳孔が、己に何を求め、告げているのか。
「してない。機会もなかったからな」
そうして言葉を選んだ。
ゆらり、とアの尾が揺れ、心なしかその瞳が明るみを得たような気がした。
「ならさ…いつでもとは言えないけど、アンタさえその気なら―――」
「……」
「匿ってやるから。」
アの黒い爪先が、アルゴスの頬をなぞった。
「俺のラボに好き好んで近づくやつってのはそう多くないしな。」
何が言いたい?と見上げてくる三つの瞳に、アは微笑みかける。
決して慈悲のようなものは感じない、細長く小さな瞳孔はどこかぎらついている。
だが研究対象へ送る好奇心のようなものでもなさそうだ。
「一人になりたきゃ来てくれよ。まあ俺はいるけど、弱音吐きたきゃ聞いてやるし、ひとこと言ってくれりゃ隠してやるからさ」
アルゴスは返答に困った。
厚意はありがたいが、
「一人になりたいときか。」
自分でもその時になってみないと、頼りたいと思えるのか分からない。
故に、否定も肯定も今下してしまえば強制力となってしまうだろうと。
「アンタなら歓迎するぜ」
アもそれぐらいは心得ていた。
そして、引き時だなと、爪先でくすぐっていたアルゴスの頬をひと撫でして終えた。
―――かくして。
結局のところその数日後より、アルゴスはアの自室を意味もなく訪れるようになった。
アは、見透かすように「居ても良い。なんでも、いくらでも聞く」とアルゴスを肯定した。
アルゴスはその言葉に心地よさを覚えながら、薬品のにおいと検体の断末魔の中で心を休めた。
アルゴスの涙は、その日から目に見えて減っていた。
END.
「旦那」
「なんだ?」
「俺以外に、そういった話は?」
彼女の弱みを知っているのが自分だけであればいいという気持ち。
彼女を暴いたアーミヤに、存在するかもわからない第三者に嫉妬しかけていた。
「……」
アルゴスはアの表情を見つめた。
その細く黒い瞳孔が、己に何を求め、告げているのか。
「してない。機会もなかったからな」
そうして言葉を選んだ。
ゆらり、とアの尾が揺れ、心なしかその瞳が明るみを得たような気がした。
「ならさ…いつでもとは言えないけど、アンタさえその気なら―――」
「……」
「匿ってやるから。」
アの黒い爪先が、アルゴスの頬をなぞった。
「俺のラボに好き好んで近づくやつってのはそう多くないしな。」
何が言いたい?と見上げてくる三つの瞳に、アは微笑みかける。
決して慈悲のようなものは感じない、細長く小さな瞳孔はどこかぎらついている。
だが研究対象へ送る好奇心のようなものでもなさそうだ。
「一人になりたきゃ来てくれよ。まあ俺はいるけど、弱音吐きたきゃ聞いてやるし、ひとこと言ってくれりゃ隠してやるからさ」
アルゴスは返答に困った。
厚意はありがたいが、
「一人になりたいときか。」
自分でもその時になってみないと、頼りたいと思えるのか分からない。
故に、否定も肯定も今下してしまえば強制力となってしまうだろうと。
「アンタなら歓迎するぜ」
アもそれぐらいは心得ていた。
そして、引き時だなと、爪先でくすぐっていたアルゴスの頬をひと撫でして終えた。
―――かくして。
結局のところその数日後より、アルゴスはアの自室を意味もなく訪れるようになった。
アは、見透かすように「居ても良い。なんでも、いくらでも聞く」とアルゴスを肯定した。
アルゴスはその言葉に心地よさを覚えながら、薬品のにおいと検体の断末魔の中で心を休めた。
アルゴスの涙は、その日から目に見えて減っていた。
END.