「イグゼキュター８時の方向下段！」
「！！」

「がっ！？」

突如飛んできた聞き慣れた指示に、イグゼキュター身体はほぼ無意識に動かされた。
そして背後から這うように迫っていたザラックの男は蹴り飛ばされた。

「こいつ！」

リーベリの男がアルゴスを捕まえた。
疲れきったアルゴスは抵抗も出来ずに男の前に立たされ、ナイフを突きつけられていた。

「止まれロドス！愛しのドクターを殺されたくはないだろ？」

白い喉に突きつけられたナイフを見たイグゼキュターは、表情を崩すことなく動きを止めた。
そしてそのアルゴスの瞳には理性が宿っていることを確認した。
ならばイグゼキュターには懸念も不安もなく、次の『目的』を『達成』するだけだった。

「よし、いい子だロドスの兄ちゃん…そのまま武器を捨てて両手を頭に置け」

イグゼキュターは大人しく従った。

「あんたサンクタか？珍しい色の輪っかと羽だな？」
「ええ。その通りです。」
「まあいい……妙な真似をすればドクターは殺すからな…！」
リーベリの男はいましがた吹き飛ばされたザラックの男を呼んだ。
「銃を持って来い！」
「はいはい……」

ザラックの男はイグゼキュターの足に蹴りを入れたあと、彼の愛銃を拾った。
そしてリーベリの男が片手に銃を受け取った。

「へぇ、よし、お前ーー」

「今だ！」

「！」

リーベリの男の拘束が緩み、かつ他の敵の油断タイミングが重なった瞬間だった。
アルゴスは直下に落ちるようにしゃがみ、男の拘束から逃れながら声を張り上げた。
「なに！お前ッ……は！？」
同時に、アルゴスの声を待ちかねていたイグゼキュターは弾かれたように動き出していた。
弾丸のように真っ直ぐとリーベリの男へと飛び込み、得物を叩き落として投げ飛ばした。