□イグさんルート
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
【※性的表現注意】
他のオペレーターが歯噛みをし血眼になって、チェルノボーグ各地の捜索にあたっている。
その中で唯一イグゼキュターはその表情を崩すことなく捜索を続けた。
ドクターが拐われた。
作戦直後、あっという間だった。
相当な幸運を連れていたのか、身軽なレユニオンのゴースト兵と潜入者からなるチームは、突如として背後の廃ビルの窓を破り降ってやっきた。
そして着地するなり鮮やかな手際でドクターを拐っていった。それが僅か五秒ほどの出来事であった。
ロドスからの迎えが来る前の出来事であり、医療オペレーターと護衛を残し、動ける状態の出撃オペレーター各位は手分けをしてドクターの捜索にあたった。
混沌としたチェルノボーグの廃墟は、隠れられそうな場所が地上にも地下にも無数にある。
イグゼキュターは、屋根の残る廃屋のドアを蹴飛ばした。踏入り見て回るが、痕跡はない。ハズレだ。
残してきたオペレーターがロドスからの迎えに事情を話し、捜索部隊を編成してやってくるまでに、ドクターが無事でいられるかもわからない。
イグゼキュターも、ドクターの損失は多大なる損害であることは理解していた。証拠に、いつも通りに見えてその足運びは珍しいほどに急いていた。
「(なにも知らされていない末端の部隊か)」
一方、拐われたドクターアルゴスは、不幸中の幸いと決めて心を静めていた。
埃っぽいが、原型を保った地下室。家具が幾つも積まれているのは恐らく倉庫だったのか。
元は家具屋であったのだろう、地上部はほぼ吹き飛んで壁の骨組みばかりであるが……それ故この入り口は瓦礫を組んでうまく隠されている。
電気は当然通っておらず、しかし幾つかのランタンが吊るされ室内全体を見渡せる程度には明るい。
「上はドクターを捕らえたら最優先ですぐ引き渡せって言ってたがなぁ」
「引き渡すだけってないよな」
「じゃ俺達の溜飲は誰が下げてくれるんだって話だ」
アルゴスは、踏み砕かれて転がる変声機器に目を向けた。
フードやゴージットなどはとっくに外され、顔と声を晒してしまった。
固い地面の上にうつ伏せのまま転がされ、背にはゴースト兵らしい男が乗り、腕関節をとらえていた。男性にしては広い骨盤で、太ももに触れているのは細長い尾。種族はザラックのようだ。
妙な真似をすれば関節技を決められ激痛と麻痺がアルゴスを襲うだろう。
拐われ、狙撃オペレーターの射程外まで遠のいた瞬間からアルゴスは無抵抗を貫いていた。
「諦めが良いんだな、意外だぜドクター様」
側頭部に結った髪をハンドルのように髪を掴まれ、顔を無理矢理上げさせられようと。
誰もかれも頭ではなく、結った髪や顎を掴むものだから、額に隠された瞳にはまだ気付かれていない。
これを不幸中の幸い以外に何と言う。
「まさか憎きロドスのドクター様が女で、こんだけ綺麗な顔をしてるなんざ思いもよらなかったぜ?なあ、ドクター様」
「……」
目の前にしゃがみ、アルゴスの髪を掴んでいる潜入者の男は笑顔で眉間にシワを寄せた。種族はリーベリだろうか。
「なんか言えよ」
機嫌を損ねたらしい。背に乗る男に目配せでもされたらたまったものではない。
「私も口説かれるとは思わなかった」
「ほらオイ聞いたかよ!声まで綺麗ときたもんだ!」
それだけで男は機嫌を良くしたようで、アルゴスの髪をぱっと離した。
地面に頭が落ちる。ぶつけはしなかった。
「いくら美人だからって許される訳はないけどな」
別の男が言う。しゃがれた声が耳に残る、フェリーンの男。
「ああ当然さ。俺の友人だってさっき殺された」
また別の男がアルゴスを睨み下ろす。ペッロー……否、ループスだ。
「俺好みの女でよかったなぁドクターさんよ。お陰で五体満足だ」
彼がリーダーらしい。ゴースト隊長のクランタ。
全員男。
己を女と認識した瞬間、彼らの表情の作り方が変わった。
アルゴスはとっくに予想がついていた。
地上まで展開した視界に、まだ人影は映らない。
一方、イグゼキュターは引き続き捜索を続けていた。
「これは……水の落ちた跡……?何故ここにだけ……」
そして見付けていた。
アルゴスが残した痕跡を。
他のオペレーターが歯噛みをし血眼になって、チェルノボーグ各地の捜索にあたっている。
その中で唯一イグゼキュターはその表情を崩すことなく捜索を続けた。
ドクターが拐われた。
作戦直後、あっという間だった。
相当な幸運を連れていたのか、身軽なレユニオンのゴースト兵と潜入者からなるチームは、突如として背後の廃ビルの窓を破り降ってやっきた。
そして着地するなり鮮やかな手際でドクターを拐っていった。それが僅か五秒ほどの出来事であった。
ロドスからの迎えが来る前の出来事であり、医療オペレーターと護衛を残し、動ける状態の出撃オペレーター各位は手分けをしてドクターの捜索にあたった。
混沌としたチェルノボーグの廃墟は、隠れられそうな場所が地上にも地下にも無数にある。
イグゼキュターは、屋根の残る廃屋のドアを蹴飛ばした。踏入り見て回るが、痕跡はない。ハズレだ。
残してきたオペレーターがロドスからの迎えに事情を話し、捜索部隊を編成してやってくるまでに、ドクターが無事でいられるかもわからない。
イグゼキュターも、ドクターの損失は多大なる損害であることは理解していた。証拠に、いつも通りに見えてその足運びは珍しいほどに急いていた。
「(なにも知らされていない末端の部隊か)」
一方、拐われたドクターアルゴスは、不幸中の幸いと決めて心を静めていた。
埃っぽいが、原型を保った地下室。家具が幾つも積まれているのは恐らく倉庫だったのか。
元は家具屋であったのだろう、地上部はほぼ吹き飛んで壁の骨組みばかりであるが……それ故この入り口は瓦礫を組んでうまく隠されている。
電気は当然通っておらず、しかし幾つかのランタンが吊るされ室内全体を見渡せる程度には明るい。
「上はドクターを捕らえたら最優先ですぐ引き渡せって言ってたがなぁ」
「引き渡すだけってないよな」
「じゃ俺達の溜飲は誰が下げてくれるんだって話だ」
アルゴスは、踏み砕かれて転がる変声機器に目を向けた。
フードやゴージットなどはとっくに外され、顔と声を晒してしまった。
固い地面の上にうつ伏せのまま転がされ、背にはゴースト兵らしい男が乗り、腕関節をとらえていた。男性にしては広い骨盤で、太ももに触れているのは細長い尾。種族はザラックのようだ。
妙な真似をすれば関節技を決められ激痛と麻痺がアルゴスを襲うだろう。
拐われ、狙撃オペレーターの射程外まで遠のいた瞬間からアルゴスは無抵抗を貫いていた。
「諦めが良いんだな、意外だぜドクター様」
側頭部に結った髪をハンドルのように髪を掴まれ、顔を無理矢理上げさせられようと。
誰もかれも頭ではなく、結った髪や顎を掴むものだから、額に隠された瞳にはまだ気付かれていない。
これを不幸中の幸い以外に何と言う。
「まさか憎きロドスのドクター様が女で、こんだけ綺麗な顔をしてるなんざ思いもよらなかったぜ?なあ、ドクター様」
「……」
目の前にしゃがみ、アルゴスの髪を掴んでいる潜入者の男は笑顔で眉間にシワを寄せた。種族はリーベリだろうか。
「なんか言えよ」
機嫌を損ねたらしい。背に乗る男に目配せでもされたらたまったものではない。
「私も口説かれるとは思わなかった」
「ほらオイ聞いたかよ!声まで綺麗ときたもんだ!」
それだけで男は機嫌を良くしたようで、アルゴスの髪をぱっと離した。
地面に頭が落ちる。ぶつけはしなかった。
「いくら美人だからって許される訳はないけどな」
別の男が言う。しゃがれた声が耳に残る、フェリーンの男。
「ああ当然さ。俺の友人だってさっき殺された」
また別の男がアルゴスを睨み下ろす。ペッロー……否、ループスだ。
「俺好みの女でよかったなぁドクターさんよ。お陰で五体満足だ」
彼がリーダーらしい。ゴースト隊長のクランタ。
全員男。
己を女と認識した瞬間、彼らの表情の作り方が変わった。
アルゴスはとっくに予想がついていた。
地上まで展開した視界に、まだ人影は映らない。
一方、イグゼキュターは引き続き捜索を続けていた。
「これは……水の落ちた跡……?何故ここにだけ……」
そして見付けていた。
アルゴスが残した痕跡を。