王様
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ふとしたとき、彼のことが王に見える。
国を抱える国王様ではなく、王。
百獣の王 的なニュアンス。
王様の様だと私は思っている。
たとえば、今のように。
混沌とした山々の中心で、無機質な光をじっと見つめているとき。
そのモニターの向こうで万物が形作られるとき。
優れすぎた人間。
この部屋、この分野の王。
バルチカに通された研究室のドア。
彼は掃除があると言って応接室に戻ってしまった。
ノックするよう書いてある札を無視して、そのドアを静かに開ければ。
すぐに気が付き、奇声を上げるなり迫力なく怒ってきたりするかと思ったのだが。
モニターに向かったままで、こちらに全く気が付いていないようだった。
その姿に――気圧されたように、見とれている自分が居て。
同時に、私の存在に気付いたときの反応を期待してしばらく佇んだ。
「うびゃおああああ?!!!」
目が合った瞬間、王様はその椅子から情けなく転げ落ちた。
「ナイスリアクション!」
期待以上のリアクションに思わず親指を立てる。
「い、い、いつからそこに……うわああ!?」
積んであった何かの資料がバサバサと崩れ、なお慌てる姿がまた、可愛らしかった。
満足、満足。
そして私は勝手な入室を謝り心配する素振りをしつつも、内心はご満悦に、崩れた資料を拾う手伝いにかかった。
コミュ障で、謙虚で、親しみ深い、嗜虐心を擽るのが上手な、素敵な王様。
地球に思い残すこともなく、元の名前を捨てたというところまでお揃いと知ったときは仲間意識がすごかった。
だから人嫌いな私でも、この人のことを好きになれたのだ。
数日前のとある雑談を思い出す。
『一致がすごい。チャネルだったら結婚おめ案件ですわこれはもう結婚するしかないっすね』
『ふぇあ!?いや、その!わ、わ、私!39歳ですけど!?』
『ああ運命ですよね。私の両親も、結婚したとき22歳と39歳だったんですよ』
『ひぃぃいえぇえ!?』
そんなふうに、冗談半分にからかえる(もし本気で受け取られても嫌ではない)程度には彼の事が好きだし、わりと仲良くなってきた自覚はあるのだが。
それでもいつまでたっても、慣れてくれないのだから、この人は本当に可愛らしい。
散らばった資料のナンバリングや重なり具合を確認しつつ拾い集めた資料を元の配置に戻し終えれば、お礼を言われた。
驚かせた私のせいなのに、律儀な人だ。
依頼しておいた書類を受け取りながら、今日もこの王様を愛らしく思うのだった。
「はい、確かに受領しました。次は2日後のこの時間に、カカシ受け取りに来ますね」
「…ええ。お手数お掛けします」
――いずれ、私の本性を彼に打ち明け、ありのまま接したとして。
もし幻滅や軽蔑をされたとしても、きっとこの王様は、私を真っ向から拒否することはないのだろう。
そんな日が来るのか、そんな転機が訪れるのか。
それはまだ、わからないのだが。
国を抱える国王様ではなく、王。
百獣の王 的なニュアンス。
王様の様だと私は思っている。
たとえば、今のように。
混沌とした山々の中心で、無機質な光をじっと見つめているとき。
そのモニターの向こうで万物が形作られるとき。
優れすぎた人間。
この部屋、この分野の王。
バルチカに通された研究室のドア。
彼は掃除があると言って応接室に戻ってしまった。
ノックするよう書いてある札を無視して、そのドアを静かに開ければ。
すぐに気が付き、奇声を上げるなり迫力なく怒ってきたりするかと思ったのだが。
モニターに向かったままで、こちらに全く気が付いていないようだった。
その姿に――気圧されたように、見とれている自分が居て。
同時に、私の存在に気付いたときの反応を期待してしばらく佇んだ。
「うびゃおああああ?!!!」
目が合った瞬間、王様はその椅子から情けなく転げ落ちた。
「ナイスリアクション!」
期待以上のリアクションに思わず親指を立てる。
「い、い、いつからそこに……うわああ!?」
積んであった何かの資料がバサバサと崩れ、なお慌てる姿がまた、可愛らしかった。
満足、満足。
そして私は勝手な入室を謝り心配する素振りをしつつも、内心はご満悦に、崩れた資料を拾う手伝いにかかった。
コミュ障で、謙虚で、親しみ深い、嗜虐心を擽るのが上手な、素敵な王様。
地球に思い残すこともなく、元の名前を捨てたというところまでお揃いと知ったときは仲間意識がすごかった。
だから人嫌いな私でも、この人のことを好きになれたのだ。
数日前のとある雑談を思い出す。
『一致がすごい。チャネルだったら結婚おめ案件ですわこれはもう結婚するしかないっすね』
『ふぇあ!?いや、その!わ、わ、私!39歳ですけど!?』
『ああ運命ですよね。私の両親も、結婚したとき22歳と39歳だったんですよ』
『ひぃぃいえぇえ!?』
そんなふうに、冗談半分にからかえる(もし本気で受け取られても嫌ではない)程度には彼の事が好きだし、わりと仲良くなってきた自覚はあるのだが。
それでもいつまでたっても、慣れてくれないのだから、この人は本当に可愛らしい。
散らばった資料のナンバリングや重なり具合を確認しつつ拾い集めた資料を元の配置に戻し終えれば、お礼を言われた。
驚かせた私のせいなのに、律儀な人だ。
依頼しておいた書類を受け取りながら、今日もこの王様を愛らしく思うのだった。
「はい、確かに受領しました。次は2日後のこの時間に、カカシ受け取りに来ますね」
「…ええ。お手数お掛けします」
――いずれ、私の本性を彼に打ち明け、ありのまま接したとして。
もし幻滅や軽蔑をされたとしても、きっとこの王様は、私を真っ向から拒否することはないのだろう。
そんな日が来るのか、そんな転機が訪れるのか。
それはまだ、わからないのだが。