□ いっしょ
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主人公
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「ハゼ。
君の血を、もう少し分けて欲しい」
自分の名前が決まって、早速、モーゼスが呼んできた。
そして回りくどい言葉。
「血だけで構わないのですか?」
「ああ。……僕たちは人の血を糧にしている存在だ
しかし…人は殺したくない」
「そうですか。
では、死なない程度にどうぞ?」
「……ありがとう、ハゼ」
モーゼスのお礼を受けて、私はさっき戻した袖をもう一度まくった。
階段とかで割と豪快に擦っちまうと服の上からでも普通に血がボタボタ出るのな。
さっき差し出した時にはすでに袖の繊維を巻き込んで血は止まりかけていたが、
改めて少し爪を立てれば蓋を失った体液がツウッと零れた。
その腕を差し出せばモーゼスはすぐに私の指先を両手で取り、ディスマスとゲスタスを呼んだ。
双子はすぐにやってきた。
「ディスマスからだ。ソーンはディスマスの方が酷い。
いいなゲスタス」
「当然だ」
「すまない」
「歯は立てるなよ」
「わかってる」
そんなやり取りを終え、ディスマスが私の腕を掴んだ。
そのまま彼女は、私の傷口を啜った。
アダルトやでぇ。
感じるディスマスの口内の感触に、私は宇宙へ意識を飛ばしたりした。
さて。
そんな感じで。
おはようございます……あれ?
目が覚めて初めて、意識を失っていたことに気が付いた。
暗くて静か。
とりあえず目元をこすろうと腕を動かしたら、腕いてェし。
そしてもう一つ気付いた。
体勢どないやねん。
「お…気が付いたか?」
……どないやねん。
生き物の気配がすればそりゃー微睡んだ脳が一気に覚醒するだろう。
私を抱き込んで座っている長身のグラサン……
グ……グドリフ…だっけ?
の、腕の中でおはよう。
彼の上着だろう修道服を羽織らされていて、
彼の膝の上に私は座っていて、
抱き寄せられていて、
その胸板に頭を預けて眠っていた私と。
今すぐ上にあるグドリフの顔が。
俯いて私の様子を伺っている。
えぇ…。
まって混乱して来た。
ええと。
とりあえず声をかけてくれたグドリフには返事をしないと。
「どうも。おはようございます」
「おう、おはよう。…で、いいのか?」
「それであってます。ありがとうございます」
私の言葉を確認し、グドリフは顔を上げた。
「お前ら、ハゼの意識が戻ったぞ!」
どうやら私は結局ディスマスに歯を立てられ気絶したらしい。
確かにあの後チクッとしてスーッと血の気が引いてふわっと…
…そういえばここ数日2~3時間睡眠だったっけ。平日ならいつものことだが。
けど倒れたのはそれが一番の原因だな。
周囲の景色を見れば、
意識失う前は街中に居たはずだが、ここは打ち捨てられた廃屋のようだし。
集まってきた面々にそれを伝えたら、
詳しい話はあとでしよう とか もう少し寝てろ とか言われて解散された。
…え?
このまま?
え?
思わずグドリフの顔を見上げる。
「ええと…」
「俺はグドリフだ。どうした?」
「グドリフ。
あの、なんで私はあなたの腕の中に居るのですか?」
「お前の機微にすぐ反応できるし、いざとなったら守れるだろ?」
「なんで守る必要なんかあるんですか」
「お前は俺達の希望だ。」
口説かれた。
とも受け取れるが、無意識なんだろうなあ。
グドリフが背中を優しく叩いてきた。
「さ。守っててやるから……詳しいことはもう一眠りしてからだ」
「……でも起きましたよ?」
「日は昇ったが、あれからまだ三時間も経ってない。
気にするな、どのみち俺達も日暮れまではここを動けないんだ。
ただでさえ血を失って具合が悪いはずだ……人は八時間眠らなくては支障を来すのだろう?」
「……まあ、一般論では」
「どんな生活を強いられていたかは聞かねえよ。
けど、全然眠らせないという拷問があることぐらい俺達も知っている。……ゆっくり休め」
ゆうて現代日本で八時間睡眠とか休日しかできんわな。
まあ眠れることはありがてぇが。
「じゃあ、その前にお水飲みたいんですけど……あります?
失った水分だけでも補給しておきたいのですが」
「無えな。
食えるものや飲めるものを調達する前に日が昇って来ちまって、そんな時間はなかったんだ」
「そうでしたか。なら大丈夫です」
「おう。寝とけ寝とけ」
また背中を優しく叩かれ、私はグドリフに身体を預けた。
頬を硬い軍服に包まれた胸板に摺り寄せて、目を閉じた。
落ち着いた鼓動が聞こえた。
かけられた修道服やグドリフの身体にはすっかり暖が移っており、多少の寒さは紛れた。
…ああ、だから表面積のあるグドリフがこの役目なのか。