49 また眠りながらに話をする
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ふと気が付けば、独房ではない場所に横たわっていた。
はて、自分が眠ったのか移動されたのか。
判断は簡単。
前者だ。
鼻につく、気化した鉛のにおい。
気化した鉛が少量含まれた煙の臭い。
はんだのにおい。
そして、
頬を撫でる柔らかな毛布の感触。
横向きの姿勢であることが理解できた。
気配がする。
あの場所かと一瞬、ひやりとした。
が、気配の感じが違う。
それに、近い。
あたりを見渡してみようとまず瞼を上げれば、やはりそこは何もない黒。
身を起こそうと思い立ったそのとき。
しかし私の動きは止まった。
背後からやってきた手の甲が、私の頬をスリスリと撫でている。
感触は人の手。筋肉が薄付いた少し硬めの指。大きな手だが、手つきは女のように優しかった。
「お目覚めのようだ。小さき友よ」
背後から聞こえた声は、発声の仕方が少し違うが、良く知った声。
「クフフ」
私がその手を捕まえる前に、それはするりと引っこんだ。
身を起して振り向けば、30cmもないほどすぐそこに居た。
高い座高が、黒い手袋をはめ直しながら私を見下ろしていた。
「こんにちは」
「はいこんにちは」
骸が死んだシナリオはどうなるのかと思っていたが。
「生きていたとは」
しぶとい。
「その言葉。心外ですね」
「それは失礼」
そんなやり取りの間に私は片足を抱えるように座りなおした。
片足を立てて座る彼に合わせるように。
「フ…もしかして食事中に感づきましたか?僕がグイド・グレコの中に居たことを」
「いや。別に」
「ああ。ならば、まるで必然と疑う程に出来過ぎた幸運というわけですね
小さくとも流石は僕の友だ。理屈ではない大きなモノ(運)を…分け与えるほど持っている」
「えーと?それは、どういう?
中に居たって言いますけど…グイドは間違いなく死んでいましたが」
「ああ。流石の僕も死人に憑依することはできませんよ」
「ですよね」
「彼は確かに死んだ。殺された部屋は、僕の思念が通り抜けられないよう遮断されていた。
そのせいで僕は僕に還ることもできず、本来ならグイド・グレコと共に死んでいたでしょう。」
「はい」
「そこで、僕の友…すなわちこの時代の火下咲久几の出番というわけだ」
「今の私は過去の私ですが」
「君は、白蘭の元へ向かう直前のグイド・グレコと接触し、欠片を飲ませたんですよ。」
「欠片?」
「この時代の君は、手足以上に炎を使いこなしていました。
その炎の欠片です」
「はい?」
「それはほんの小さな錠剤ほどの粒でしたが、
まさか死ぬ気の炎を物体…個として確立させてしまうほどに圧縮するとは。
…死んだほど大変だったから二度とやらない、とは言っていましたが、それでも友はそんなことができました。」
「…はあ、つまりその欠片のおかげで生き延びたと?」
「ええ、驚きました。
その欠片が何かは聞かされてませんでしたから。」
「得体のしれないもの飲んだんすか」
「はい。それが効果を発揮して僕に触れた時初めてそれが何なのか理解できたのですから」
「変なもんだとは思わず飲んだんすか」
「友は役立つと言ってくれました。」
「疑わないんすか」
「友は僕のことも愛していましたから」
「……。
えーと、信頼してるから、と。」
「そういうことです。
元々は保険として弟子を呼んでいたのですが、何をしくじったのかそいつは到着せず白蘭との戦闘になってしまった。」
「白蘭の能力は知ってるよ。大変だったでしょ」
プライドとか。
「ええ…お恥ずかしながらなすすべがなくなり、本当に死んで、消滅すると思っていた。
しかし僕の意識はなぜか砕けることなく留まっていた。
君が僕に飲ませたあの石ころ…実体を持つ重い物体が、この僕の意識にくっついて、離さなかった。」
「あーーー……くっつく性質」
「万策尽きていた僕は喜んでその石の中に隠れましたよ。
ただ今度は困ったことに、その石から離れたくとも離れられなくなってしまった。
もし…この石が砕かれたら本当に死が訪れるのか、埋葬されたりしたら永遠にこのまま縛られ続けるのか…なんて考えたりもしました。
しかし間も無くしてあなたが来てくれた。これが幸運一つ目」
「…石なんてあったかな」
「胃壁に張り付いていたはずです。君は最低限の咀嚼でほとんど飲むように人を食らうから…気付かなかったのでは?」
「あー…じゃあたぶんそれかなぁ」
「ここで石を噛み砕かれなかったことが、友が僕にくれた二つ目の幸運ですかね。クフフフフッ」
「二つともそれ私関係ない あなたの幸運ですよね」
「弟子が到着しなかった時点で僕の不運は証明されています。
なにより友は僕を愛していますから。愛する人を失うなんて不運、友に限って訪れるはずもない。」
「なんだその自信」
「事実です。僕は友が愛する多くの一人ですから」
「どういうやつなんだ私」
「クッフフフ…
友ですよ。僕の友。僕の愛する人を殺し、穏便に生きるため仕方なくマフィアに飼われる薄汚くも慈悲深く、冷酷薄情で優しい、憎くて愛しい僕の友」
「どういうことなの」