隣で見る景色
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「はー、おもしろかった」
「いまハッキリと言ったよね。
ハッキリと俺の醜態をバカにしたよね」
「してない、してな、ブッ」
「オイそこになおれ。
俺がその根性たたきなおしてやる」
帰り道、寒空の下でふたりで肩を並べて、先程のアクシデントを振り返っていた。
銀さんは頭から水をかぶったので、拭いてもらったとはいえ、それはそれは寒いだろう。
いまにも凍えそうである。
「帰ったら風呂直行だなこりゃ。凍っちまう」
とぼやく銀さんに同意をしながらも、やっぱり思い出して笑いをこらえきれなくなった。
思わず「あははっ!」と声が出てしまった。
あ、やべ、叩き直される。
と思ったのに、隣でフッと笑った声が聞こえた。
そしたら唐突に銀さんが私の手を「冷てえな」って握ってきた。
「………え、あの、銀さん?」
先程までの雰囲気とは一変して、なんだかむず痒い空気が流れる。
銀さんは赤いマフラーに顔半分を埋めて、前を向いたまま。
少しだけ見えている耳が赤いのは
寒さのせいだろう。
「お前冷え性か?女ってのは大変だな」
「う、うん…」
「ほら、こうすりゃ温まんだろ」
そう言って自分のはんてんのポケットに
私の手を突っ込む。
「~~っ」
感情の読めない銀さんとは逆に私はもう、顔一面真っ赤すぎて、また何も言えない。
隣を歩く銀髪のその人は、いつもの調子で「パチンコ勝ったらお前にもなんか奢ってやるよ」なんて言ってるけど、握ってる手は離さなかった。
ーーー
万事屋に戻ると銀さんは速攻でシャワーを浴びにいって、若い衆は姿を消していた。
台所をよく見ると「アネゴのところで新年会してくるアル」と書き残されたメモが置かれていた。
「…私たちは呼んでくれないんだ」
「いーじゃねーか、どーせダークマターしか出てこねーんだから」
「……お妙ちゃんにコロされるよ」
ホカホカと湯気を立てながら、私の言葉を鼻歌交じりに流した。
それからチョイチョイ、と私を手招きした。
……お風呂の匂い、イイニオイ。
「どうしたの?湯冷めするよ」
「ん、ちょっとだけな」
そう言ってベランダに出る銀さん。
なにか話があるなら、早くしてあげないとほんとに風邪をひいちゃう。
私は慌ててベランダ用サンダルを履いて隣に並ぶ。
「わ、綺麗」
そして顔を上げると、オレンジの空が眼前に広がっていた。
「新年初夕焼けだな」
そのあとに続くことばが来る気配がなかったので、これを私に見せたかったのかと気付く。
本人に問うように覗き込むと、その横顔がひどく輝いていて、私は目が離せなくなった。
すると不意に横目でとらえられる。
「なに?見惚れちゃった?」
「…っ、ち、ちがうっ!」
慌てて顔を前に戻す。
クツクツ笑っている銀さんにムッとしながらまた夕陽を見ると、
それはもう、言葉にできない美しさだった。
彼のとなりで見る夕陽はこんなにも綺麗なのか。
好きな人の隣で見る夕焼けはこんなに暖かいのかと。
私は幸せを噛み締めた。
ーーできれば来年も、この人の隣で。
心の中で合掌していると、私の肩になにやら重さがかかる。
おまけにフワッとシャンプーの匂いがした。
つまりは銀さんが私の肩に頭を乗せてきていた。
「青葉、今年もよろしくな。…大好きだぞ」
って、寝ぼけたような声で言うもんだから、私、頭真っ白!
「銀さん、起きてる!? 今、なんて!?」
「ん~? 寝言だよ、寝言。
…でも、半分本気かもな」
って、ニヤニヤしながらまた目を閉じる。
銀さんのペースに振り回されっぱなしだけど、この甘々なお正月、最高に幸せだった。
おしまい。
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