四匹目・第二章
第一病棟は、その夜のうちに、捜査の為に封鎖された。
そして患者達は他の病棟に移された。
私達は、あの夜、面会時間以外に患者の部屋にいたことを叱られただけで、事件に関しては何も聞かれなかった。
なぜなら、この事件は病院が建てられた当時まで遡る事が分かったからだ。
女達は十二人。
全員が殺されて、あそこに埋められたものだった。
「医者が怪しいんだってさ。
あそこを使ってた医者の一人で、行方不明になってるのがいるらしいぜ」
てっちゃん達は地獄堂で、三田村巡査から聞き込んできた情報で盛り上がっていた。
殆ど私は聞き流していたが。
「##NAME3##ってさ、何だかんだ言ってお人好しだよな」
『ちょっと待て!!』
ガバッと飛び起きて、そう呟いた椎名に詰め寄る。
『誰がお人好しだ!』
「いや、何だかんだ言ってさ、結局助けるじゃん」
『それは私の後味が悪いからだ!』
ギャーギャーと騒ぐ私達。
そんな日常が楽しくて、仕方がないんだ。
*
鷺川沿いの桜並木。
あの人の好きな吸い込まれそうな程に青い青空の下。
爽やかな風が運ぶ草の薫り。
午後の微睡みの下。
煌めく鷺川の青々とした草の土手で。
まるや三人が団子のようになっているのを眺めながら、私も昼寝の体制に入ってこう思った。
こんな日常も悪くないな、と。
嗚呼、何て戯言を。
私も変わってきた。
少しずつ、私にも変化があるんだな───
そう、目を閉じた。
今日は久しぶりに、いい夢が見れる気がする。
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