このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

四匹目・第二章





元の薄暗がりに戻った病室。



先程の雷を発生させた事による精神的な疲労に、ため息を吐いて壁に寄りかかった。
そんな私を除けば、三人はポカンと口を開けたまま、あの余韻に浸っていた。
そして、椎名は呟いた。



「そうか……おやじが言った、『リョーチンの力』って、こういう事だったんだ。俺やてっちゃんは、女達を退治することばかり考えてた。でも、リョーチンと##NAME3##には分かったんだ。女達の悲しみが。女達が、助けなきゃならないものだってことが。だから、思った。助けたいって、心から。リョーチンは、その思いを、力に変えられたんだ。その力に、菩薩が応えたんだ……」



『……私は手伝っただけだ』



そうして、ふと目を反らした先。
椎名とてっちゃんは、あっと声を上げた。
竜也さんが、呆然としている。



その時、大砲を撃ったような衝撃が、部屋全体を震わせ、その所為か部屋全体が傾いた。



「開いた───っ!!開きました!
先生!!……あ、あれっ!?」



わぁ。



病室の床は、三メートル程も落ち込んでいた。
ベッドは三つとも巻き込まれて、穴の中で逆さまに突っ立っていた。
雨雲の切れ目から顔を覗かせた満月。
その光に、煌々と照らされた穴底。
ベットの下に、累々と死体の山があった。
白骨になったもの、屍蝋と化したもの、バラバラに崩れたもの…コンクリートと土に塗れ、眼球の無い顔を月明かりに晒して…



大人達は凍り付き、絶句した。



「……女ども……!」



てっちゃんは呻き、私とリョーチン、椎名は目を閉じ、小さな手をそっと合わせた。



そして、腕に着けていた水晶の数珠を横目で見る。
紐すらも、全て斑な漆黒に染まり、砕け散っていた。



───ちゃんと、逝けたようだね。



そう、心中で呟いた。


.
3/7ページ
スキ