二匹目
今回は、美麗さんにお礼を言うためにてっちゃんとリョーチンの手には菓子折り、私の手には重箱に入った手作りの和菓子と洋菓子詰め合わせ(ちなみに椎名達にせがまれて時々作っている)があった。
「やあ!裕介くん、リョーチンくん。いい天気だねえ。おっ、まるもいるね」
「富田さん……!」
椎名とリョーチンが、ハモって彼──富田さんを呼んだ。
彼が、富田さんなのだろう。
外見は優しそうな、いい人だ。
だけど…私はあまり好きになれない。
こういう人(外面も愛想も好い人)に限って、何か抱えている場合もあるからだ。
ああ、ゲスいな。私って。
「君は、てっちゃんだろう、そうだろう、はははは!裕介くんから噂は聞いてるよ。ケンカが強いんだってねえ、うらやましいよ。僕は、からっきしでねえ、アハハッ!」
そう、てっちゃんの肩をぺしぺし叩いて言った。
そして、椎名の後ろにいる私に気づいたのか、私の方を見た。
「君は…##NAME3##、くんかな?」
「どうも……」
また誤解された。
まぁ、今回はこの前と同じ服装に目深に被ったキャップという、男の子に見える格好の私にも、非はあるだろう。
「すいません、こいつ人見知りなんで」
「…………」
「…どうしたんだよ、##NAME3##」
「私、あの人苦手かも」
それにしても、どうして私はこんなにも人が怖いんだろうか。
ぽそっとそう呟いた私の頭を椎名が背伸びして、ポンポンと撫でた(私と椎名の身長差は12㎝)。
……可愛いな、何か。
「僕も今日は、友達と遊びにいくんだよ。ひさしぶりでねえ。豊は、葉子が見ててくれるし。さあ───っ、今日は思いっきり遊ぶぞお!」
リズミカルに彼が去ったあと、てっちゃんが「……いい人なのになあ……」と呟いた。
せっかく美人で優しい美麗さんに会いに行くのに、富田さんの顔を見て、てっちゃんとリョーチンは、元気を無くしている。
椎名も、同じだ。
ただ、私は嫌な予感に身を震わせていた。
「……##NAME3##?どうしたんだよ、寒いのか?」
「嫌な予感がする。でもとりあえずパーカー着よう」
そう言って、ポシェットからお気に入りの黒いパーカーを取り出して着た。
「そのパーカー毎回持ってんのか?」
「まぁね」
「よう、イタズラ大王」
背後から掛けられた声に、私を含む四人+一匹が振り返った。
三田村さんは、非番だからか、セーターにジーパン、女物のつっかけを履いていた。
「……ミッタンか」
「どうしたんだ、元気ねえな」
「……まぁ」
主に私は嫌な予感の所為だけど。
「おっ、だんご屋は、今日は開いてんな。どうだ、だんごでも食うか。おごっちゃるぞ」
「ホントだなっっ!!」
見事にハモった三人は、もう何時もの三人だった。
「しまった……!」
「……私のは、自分で払いますよ」
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