二匹目
「おや、リョーチン。どうしたんだ?」
珍しくリョーチンがてっちゃんと椎名、おやじ相手に、葉子という女の事をまくし立てていた。
簡潔に纏めると、正真正銘の本格的冷血女───ということだ。
案外子供の勘は侮れない物だが、さて、実態はどうなのやら。
椎名は黙って頷き、感心していた。
てっちゃんと私は、半ば呆れてその悪口雑言を聞いていた。
「まったく、あんな女が自分の嫁さんだなんて、毎日が地獄だよな!」
「私は会ったことはないけど、噂位なら、ね。旦那さんの方はキツい嫁さんによく仕えてる、出来た人っていうのは知ってるけど。
ちなみに出所は秘密」
「…相変わらずの情報だよな」
「うん。“彼ら”のパイプは広いからね」
「やっぱり女は、やさしーのが一番だよなっ!」
リョーチンがさらに興奮していったのを聞いて、じいちゃんとガラコが笑った。
───ああそうですよ。優しくないし女っ気も無いですよーだ。どうせ私は男っぽいですよー……
等と内心拗ねていると、椎名はこう言った。
「##NAME3##は十分可愛いよ」
「はっ!!?」
椎名の心を覗いたかのような発言に、うっかり狼狽えてしまった。
(……そういう反応するから椎名が喜ぶんだと思うんだけどなー)
「話は変わるけど、富田さんは、何であんなやつと結婚したんだ?富田さんみたいな、明るくて優しい人に、あんなやつ、似合わねえよ」
「人の恋愛観はそれぞれだし、それに私達は口出し出来ないよ」
と、椎名に私が言い返す。
「ほんとに…どこがよくて、一緒になったんだろうなぁ…」
私の母さんは…あんまり覚えてないけど、素直じゃない人だったなぁ……
そういや父さんは“ツンデレ”って言ってたな。
例えば、今度遊園地に行こっか。
べ、別に行きたいとかじゃないんだから!!
貴女達が行きたいって言ってたから!!的な。
……性格って似るのかな。
「ひひひひ…因縁よ…」
───因縁、ねぇ……
「いんねん?
いんねんってなんだ?」
「その人間の善し悪しに関わらずに付いて回る結びつき。
私は縁とかそう言う時もあるけど。
不幸な結婚をする人間も、大体その前世からの因縁を背負ってるらしいよ。合縁奇縁って言葉もあるようにね」
「ふーん」
「まぁ、そういう縁もあるって事。縁はいつの間にか繋がってる物だから」
例えば、私とあの人のように───
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