始まりの陽(真島夢)
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蒼天堀の外れにある倉庫の中で真島は柱に繋がれていた。
その体には痛々しい痣が無数に付き露出した肌の殆どの部分は青紫色に変色し、鼻や口からは血を流している。
昨夜、ほぐし快館の前に辿り着いた真島とマコトは李と合流した。
李が用意した車のエンジンをかけると同時に車が爆発し、吹き飛ばされた真島とマコトは地面に激しく叩きつけられた。
朦朧とする意識の中、気を失ったマコトを連れ去る謎の男を見た。
佐川によって李は車の爆破で殺され、真島は捕まり佐川によって何処ぞやの倉庫で暴行されていた。
「ちくしょう!」
佐川はマコトを連れ去られた腹癒せの様に真島の腹に重い蹴りを入れる。
酷い暴力の連続で真島の体は見るに耐えない様となっているにも関わらず彼は声も上げずポーカーフェイスを貫いていた。
「おい!連れて来い」
倉庫の奥から突然現れた佐川の手下であろう男が佐川の命令によって1人の女を引きずる様に連れて来る。
佐川の前に放り出された女はそのまま膝を突いて倒れた。
佐川は女の髪を掴んで顔を上げさせる。
「…っ名無し……」
「ま、じま……さん……」
佐川に捕まった様だが名無しの命が無事だった事に真島は安心した。
けれど彼女の体には傷、顔にも青痣が見受けられた。
「真島ちゃん、お前がこいつを囮に使ったせいで商売道具がこんな事になっちまった」
名無しは囮として逃げ惑う際、何人もの男に取り押さえられ強く掴まれた腕には痣が、大人しくさせる為に殴られた顔にもそれが出来ていた。
「えらく抵抗するからこんな事になっちまってなぁ…でも、まぁ仕方ないよな。お前ら仲良く俺を騙してたんだから」
佐川を裏切った報いがこれだ。
真島にとっては自分の痛みなぞ屁でも無いが名無しが傷付けられた姿は非常に心を抉られた。
そして目の前にはバットを持った佐川。
殴られるのだろうか…数年前、数々の拷問に耐えた真島だがこれは当たりどころが悪いと死ぬかもしれない。
そう頭を過ぎるがあの無力な盲目の女を殺すよりはマシかと思った。
「お前はマキムラマコトを殺せなかった」
そう言って佐川はバットを振り上げた。
「やめて!!!」
名無しの叫びと同時に佐川のバットは真島目掛けて飛んだ。
ヒュと風を切る音が耳に入ったかと思うと顔の真横でバットが停止していた。
眼帯側の為、距離感はよく分からないが恐らくかなりギリギリの距離。
佐川はふっと嫌な笑みを浮かべながらバットから手を離す。
カランカランとバットが冷たい床に落ちる音がした後、真島の耳元に佐川が顔を近づける。
「お前の事は、必ず殺すよ」
不敵な笑みを浮かべながら発する恐ろしい言葉に名無しは目を見開き、真島は睨む様に眉を顰めた。
「その前にあのマキムラマコトを盗んで行った泥棒猫を始末しねえとなぁ?」
*******
「…っ…めちゃくちゃしよるで、佐川の奴」
「真島さん、あんまり無理しないで…」
名無しがフラつく真島を支える。
散々暴行を受け、監禁されていた倉庫から解放された真島と名無しは蒼天堀の街に戻って来ていた。
解放されたのは西谷を探す為。
真島が爆発に巻き込まれ朦朧とする意識の中、マコトを攫った白スーツの男。
その男が西谷同様マコトを殺すのが目的では無い様に感じた真島は西谷との関係を探る。
「名無し、もう大丈夫や…」
「はい……」
ずっと泣きそうな顔をしている名無しはゆっくり真島から手を離す。
佐川の暴行により青紫色になった真島の肌が脳裏に焼き付いて離れない。
思い出すだけで痛くて恐くて涙が溢れそうになった。
「名無し、大丈夫か?見してみぃ」
そう言って真島は彼女の顔を覗き込んだ。
頬骨の辺りに出来た青痣を見て真島は溜息を吐いた。
「ハー……ホンマこれで済んで良かったわ。女の子の顔は大切やけどな…命には変えられん」
安堵の表情を浮かべる真島を見て名無しは胸が締め付けられた…
「でも、真島さんの体…」
…自分の方が酷い目に遭ったにも関わらず、他人の心配をする彼の姿に。
「俺はええんや。痛みには強い」
ふっ…とクールに微笑む真島は肉体的にも精神的にも非常にタフな事が唯一の救いだった。
「西谷の事務所は蒼天堀通東の第三並木ビルやったな…お前は家戻っとれや」
「嫌です!真島さんから離れない!!」
名無しは逃がすまいと真島の腕を抱き抱えた。
「おっお前…危ないっちゅうんがわからんのか!?」
あまりの気迫と突然腕を強く抱きしめられた驚きで真島は腕を掴まれたまま少し後退る。
「きっと真島さん、無理するもん……マコトさんの為なら…きっと…」
「…どう言うこっちゃ…?」
伏し目がちに言う名無しの言葉が真島は気になったがすぐにはぐらかす様に彼女は言った。
「と、とにかく…私が真島さんの歯止め役をします!」
ムッと少し怒った様な表情で見上げる。
少しの沈黙を経て真島が口を開く。
「しゃあないな…」
そう言うと真島は名無しの腕から自分のそれをするりと抜き、彼女の手を握った。
「行くで」
ハッと真島の顔を見上げた名無しだったがぐいと手を引かれ、引っ張られる様に歩き出す。
強く握るその手は妹を護るかの様な強い想いか、はたまた恋人の手を大切に握る様な愛情か。
名無しにはわからないがどちらとも取れる温もりを感じ、そっとその大きな手を握り返した。
第三並木ビルまでの道のりは短い。
目的地に辿り着く最後まで互いに手を離す事はなかった。
「ここですね」
第三並木ビル前で名無しはそれを見上げる。
あまり立ち寄る事のない建物だ。
「…行ってくるわ」
流石にヤクザの事務所へ一緒に乗り込む事は出来ないと名無しは「気を付けて」と真島に声をかける。
それを背に受け、真島はビルの階段を上って行った。
事務所のある3階まで上がると躊躇無く扉を開いた。
「ま…真島…!?何でオメエが……!?」
「おう、マキムラマコトはどこや?」
事務所にいる組員は3名。
事務所で寛いでいた様だが真島の突然の訪問に驚き立ち上がった。
「俺んとこからあの娘を盗んだ男、ありゃあ西谷のお仲間やろ?今、あの娘はどこにおんねん!」
「何の事やらさっぱりわからんなぁ。せやけど…例え知っとってもお前に教えるはずないやろ!」
話が進みそうに無い状況に真島は眉間の皺をより深くし言った。
「そらぁ拳で聞けっちゅう事か?あの娘の居場所知っとんのか?知らんのか?どっちやねん」
「知っとっても知らんでも、生きて帰さへんで、ワレ!」
やはり素直に教えてくれる状況にはならなかった為、真島は拳を握る。
「しゃあない。ほんならこの際知っとる事全部吐いてもらうで!」
臨戦態勢を取る真島を前に3人の組員は武器を取り出し飛びかかって行った。
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