始まりの陽(真島夢)
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名無しは昨夜から起こっている謎の出来事を真島から説明されていた。
佐川からマキムラマコトと言う人物を殺す様言われている事、そのマキムラマコトはあの盲目の女性だった事、殺せず今ここにいる事。
「ほぐし快館に行ったんや。店長がマキムラマコトやと思ったんやけど違うかった」
真島は悩んでいた。
目の前にいる名無しにこの事を話しても良いものか…
そう言う考えがチラチラと頭を過ぎりながらここまで関わった彼女にどうする事も出来なかった。
「マコトさんを殺せなかったら真島さんが殺されるんじゃないの?」
名無しにそう言われ真島は一瞬、背筋が凍った。
佐川に殺されたくなかったらマキムラマコトを殺すべきだと言っているのだろうか。
やはり間違いだったか…彼女は佐川の娘同然の存在だ。佐川に知らせるかもしれない。
目を見開き固まった様に口を紡ぐ真島に名無しは言った。
「私、佐川さんがそう言う人だって分かってるし……でも、真島さんがこう言う人だって事もよく分かってます」
名無しは悲しみを含む様な微笑みで真島を見つめる。
彼女は真島を慕っている。悪い様にはしないはずだ。
そう真島は信じたかった。
けれど、それを確認する事が何となく怖い気もした。
「お前を巻き込むつもりは無かった。あの時、ほぐし快館にはマキムラマコトを狙ったヤクザと撃たれたあの店の店長が倒れとった」
「店長が!?大丈夫なんですかっ」
「ああ、さっき会って来たんや。あいつはマキムラマコトを庇っとる。俺に協力しろと言いよった」
少し沈黙した後、名無しは安堵の表情を浮かべて言った。
「……そっか…良かった……。真島さんには仲間がいたんだね。1人じゃなくて安心しました」
「仲間なんか…?…まぁ…そうやな…」
面白い返答に少し苦笑いしながらそろそろ時間だと名無しを仕事に向かわせる。
「名無し!!」
歩き出した彼女は名前を呼ばれ立ち止まりゆっくり振り向いた。
「信じとるで…お前の事」
願う様にかけた真島の言葉に返す様に名無しは微笑んで強く頷いた。
名無しはオデッセイの倉庫から離れ、仕事の為グランドへ向かう。
真島が大切であるが故に彼がこれからどう行動するのか考えると怖くなる。
優しい真島に人殺しはして欲しく無い、かと言って真島に勿論死んで欲しくは無い。
マキムラマコトを殺す?いや、彼には出来ないだろう。
名無しが知っている真島はそんな人間では無い。
彼らの事を心底心配しながら何故かモヤモヤした気持ちを持ってしまう。
好きで堪らない真島の前に突然現れた女性に本当は嫉妬しているんじゃ無いだろうか…
自分は何を考えているんだと頭を振って雑念を払い、グランドへ真っ直ぐ向かった。
マコトが殺し屋の真島に心を開き、真島もまたマコトに複雑な感情を抱く様になるとは今の名無しには知る由もない。
*******
グランドが開店して少し経った頃に出社し、すぐ中国人の客の相手をしその人物と少し話した真島は客席に名無しを呼び寄せた。
「はい。どうしましたか?支配人」
「名無し、すまんがここの接客頼むわ。俺は行かなあかんトコがある」
真島は立ち上がり名無しに耳打ちした。
「マコトの事でほぐし快館の店長に呼び出されとるんや。この客はそれを伝えに来た。こいつの相手はお前に任せるで。変な事せんか見張っとれ」
「わ…わかりました。支配人、お気を付けて」
「ああ。あと、会計は俺の奢りや。ほな、任せたで」
名無しは去り行く真島の背中を見つめた。
「さすが太っ腹ね。支配人さん、私、あなた大好きよ!」
ほぐし快館の店長の使いと言われる中国人のお客が隣で何か言っていたが真島の心配をする名無しの耳にその大声は入っていない。
それ以降、その日は真島を見る事はできなかった。
翌日、出勤前のメイク中名無しはテレビのニュースを見て驚愕する。
『今日未明 蒼天堀川で発見された若い女性の遺体は……マキムラマコトさん20歳とみられます』
「マキムラ、マコト……遺体?マコトさんが死んだ!?」
まさか、真島は殺ったのだろうか。
そんなはずは無い…彼はそんな人では無いと信じたい反面これで真島が佐川に殺される事は無いと思うと正直少しホッとする気もした。
兎に角グランドへ行って真島に会うしか無い。
*******
今日も大勢の客で賑わうグランド。
出勤する真島の姿を見たかと思えばすぐにまた出て行ってしまった。
真島が出て行ってから10分も経たない内に派手な出立ちの客が入店して来た。
「支配人さんいるかーー!!」
大声でそう叫ぶ男は受付の従業員に札束を持って迫った。
「金ならなんぼでも出す。この店貸切にしてくれや」
その男の異様な雰囲気に逆らえずグランドは男の貸切にする事を余儀なくされた。
程なくして貸切になった店内で男は出勤しているグランドのホステスを集め目の前に大量の札束をばら撒いた。
ホステス達の歓喜の声が上がる。ここまで派手に金を使う客はそういない。
この男が真島に用がある事がわかっている為名無しは警戒しながら男から離れた所に座る。
金目当てのホステスは我先にと男の隣にくっついた。
「真島君はおらんのか?」
男に呼び出された店長は「出かけております」
と返答する。
「まぁ、行先は分かっとるわ。ちょっと電話貸してくれ」
そう言って懐から札束を出し、隣に座るマキに手渡すと彼女の胸元に手を入れた。
名無しの先輩に当たるマキ。
手渡された額に満足したのか満更でも無い表情で男の手を受け入れる。
「あの娘はこれで死んだ事になった。あんたの雇い主もこれで納得やなぁ?あんたが消される心配はもう無いっちゅうわけや。感謝してもらわな」
どうやら電話が真島に繋がったらしく男はマキの胸を揉みながら楽しそうに話す。
「いやん。もう、ちょっとぉ」
マキの楽しそうな声を聞きながら男は言った。
「ええ店やなぁ真島君。ワシここ気に入ったでぇ!今から一緒に楽しもうやないかぁ」
「あんたも早よおいでぇ……」男は不気味にそう呟くと電話を切った。
この男がマコトを殺したのか…いや、死んだ事になったとこの男は言っていた。
名無しは他のホステスが気にも止めていない、男が真島に話す内容を必死で盗み聞いていた。
男の指示で高い酒が数々注文され、テーブルの上は瞬く間に豪華な装いとなる。
「ほらぁ、ここええやろぉ?」
男はマキの胸をひたすら揉み続けていた。
その光景に流石に名無しも眩暈がした。
「ああ、アカン!ワシのも触ってぇな!」
そう言って男はマキの手を掴み自分の股間へ持って行く。
1万円で1秒男の股間を揉む条件を付けて尚も金を落とす様にさせるマキはプロ根性か名無しには到底理解出来なかった。
そこへカツカツと強い足取りで近づいて来たのは真島だった。
「当店は淫らな行為は禁止です。お客様」
真島の顔は相当怒っており、マキは慌てて隣の男から離れた。
場がシラけた…そう言う男に真島はそれが当店のルールですと断定的に発言した。
「えろうすいませんでしたぁ。支配人怖いな?なぁ?」
ホステス達の顔を覗き込んで伺う男に静かに頷く彼女達。
その中で名無しだけが男に睨みを利かせていた。
店を貸切にしてもらったと真島に言う男は手前に積んだ大量の札束を指差し、ホステス達を退席させる。
「ワシらの会話…あんたも他のモンに聞かれたないやろと思てな。人払いしといたんや。これでも気ぃ使てるんやでぇ?」
他のホステスが店を一旦出て行った中、名無しは離れた所から様子を伺っていた。
真島が男の正面に座り、何やら話し込んでいる。
広い店内とは言え人が居なくなり静まり返ったグランドでは2人の会話は名無しにも聞こえた。
男は鬼仁会の西谷。
マキムラマコトの死体を作って死んだ事に偽装し、マコトを殺す事が目的では無いが彼女を狙っている。
一通り話した後、彼らは立ち上がったかと思うと向かい合い西谷はドスを抜き出した。
真島も構えを取る。
「ほないくでえ?真島君…がっかりさせんなやぁ!!」
西谷は掛け声と共にドスで真島に斬りかかった。