始まりの陽(真島夢)
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今日は休暇である為、名無しは蒼天堀の街を歩いていた。
仕事では無く用事があっての事である。
招福町南にあるほぐし快館と言う整体の店に先月初めて訪れた。
肩凝りが酷いのだが自覚が無い。
気付いた頃にはガチガチで整体に行ってみた所、羽が生えたかの様に肩が軽くなり快感だった。
次の予約を取ろうと直接店に訪れる予定で仕事は無いが蒼天堀を歩いていた。
ほぐし快館の入口に着き、階段を一段上った時だった、誰かが勢い良く下ってくる音がした。
名無しはその人物に道を空けようと下がって入口前に戻るが勢い良く出て来た男がよく見知った人物だった為声をかける。
「真島さん!?」
「…!?…名無しか!何でここにおるんや!?」
「整体の予約を取りに…」
「ぁあ、そうなんか…いや、待て!今はあかん」
今、ほぐし快館の中には真島によって気絶させられたヤクザ数名と銃で撃たれ血を流した店長が倒れている。
そんな現場に名無しを行かせるわけにはいかない。
「良いからこっちや!」
「ぅわっ真島さん!どうしたんですか!?」
急に真島に手を引かれ名無しはドキッとしてしまった。
少し走ると1人の女性がヤクザに取り囲まれ車に乗せられそうになっているのが見えた。
「おった!!お前はここにおれ」
真島は名無しから手を離し直ぐ様ヤクザに向かって行った。
「どこのヤクザか知らへんけど、こっちもその女渡すわけにはいかへんのや。返してもらうで!」
疑問は数々あるが真島がヤクザと闘っている間に名無しは隙を見てヤクザの手から離れた女性に近付いた。
「こっち!!」
声をかけてもこちらを向いてくれない。恐怖からかオロオロしている女性の手を引き建物の影に隠れる。
名無しは真島が奮闘する姿を見つめながらこの女性が盲目だと気付いた。
事情は分からないがさっきの真島の言葉から彼女をこのヤクザ達から守らなければいけないのだろう。
考えている内に真島がヤクザ達を倒しこちらに向かって来る。
「おい!大丈夫か!!」
「その声…さっきのお客さんですか?あの、一体何がどうなって…」
盲目の女性が怯えながら口を開いた。
「クソが…その女は渡さへんで…すぐに仲間が、駆けつける、さかい…」
真島に倒された巨漢のヤクザがそう言って気を失った。
「しつっこいのう…!説明は後や。とにかくここを離れるで」
そう言いながら真島は名無しと盲目の女性の肩を掴んで覆い被さった。
「な、何!?」
「シッ、静かにせえ…」
パニックになる盲目の女性に真島は注意を促す。
「あ、兄貴!!」
バタバタと数人の人が走り寄って来る。気絶しているヤクザ達の仲間が駆けつけた様だ。
「おい、女はまだ近くにおるはずや、直ぐに探すで!応援呼ばんかい!」
増援のヤクザ達はバラバラと捌けて行った。
この緊迫した状況からか真島にすっぽりと覆い被さられているからか名無しの心臓は鼓動を早めていた。
「やっかいなことになったで…」
そう呟く真島の大きな体に守られる中、名無しは肩口からチラリと様子を伺う。
「もう…誰もいなそうです」
「そうか。名無しはしっかり着いて来いよ」
真島は盲目の女性の手を引き走り出す。
街中にはさっきのヤクザ達が蔓延り、身を隠しながら移動するにも限界があった。
ヤクザに見つかる度に身を挺して闘う真島だった。
どれだけ走っただろう。
気が付くと夜が明けており3人はある倉庫に避難していた。
「あの、何があったんです?何で私がこんな…」
埃だらけのソファに座らされた盲目の女性が真島に問う。
「そりゃこっちのセリフや。ヤクザ連中が名指しでお前狙うとる。心当たり無いわけないやろ」
「そんな事言われても…」
この状況を黙って見ていた名無しだったが今の真島を見ていると何となく余計な事を耳にしない様にした方が良いと判断して一旦席を外す事にした。
「私、外見張ってますから」
「ああ、頼むわ」
あの女性が真島の何なのかも分からないしどう言う状況なのかも分からない。
聞きたい気持ちもあるが部外者が口を挟まない方が良いだろうと思った。
「気になるけど…仕方ない。真島さんが話してくれるまでは」
呟いて倉庫の外で突っ立っているとオデッセイの山形がやって来た。
「1人外に出させられてどないしたんや?あんただけ仲間はずれか?」
「…山形さん、すみません。倉庫を貸して頂いて」
「オデッセイでもほとんど使わん物置や。…しかしあんたんとこの支配人さんは中で女と何しよるんやろなぁ」
「…そ、そうですよね……」
苦笑するが真島の事が好きな名無しには笑えない冗談だ。
「山形…朝早くにすまんかったな」
ガラガラと倉庫の扉を開ける音と共に真島が中から出て来た。
「かまへんで。けど女閉じ込める為に部屋貸せなんて、あんたも良い趣味してんなぁ」
「女の事は他言無用や」
真島と暫く話し込んだ末、山形は「あんたの秘密の趣味は俺の胸にしまっとくわ」と言い去って行った。
最後まで勘違いしていたのか本当は何か勘付いているのかは分からないが真島がどうでも良さそうだったので名無しは特に突っ込まない様にした。
「すまんかったな、名無し。怖い思いしたやろ」
真島がやっとこっちを向いてくれた様な気がして嬉しかった。
「大丈夫です。それより彼女は怪我とかしてないですか?」
盲目の女性だ。きっと自分よりも怖かったはずだ。
「大丈夫や。俺はちょっと行くとこがある。中であの女の話し相手になったってくれ」
意外なお願いに少し驚いたがわかったと返事をすると真島は走って行ってしまった。
ガラガラと思い扉を開く。
倉庫の中に入ると正面のソファに座る彼女の姿が見えた。
山形の言う真島の秘密の趣味での何かが行われた様な痕跡もなく少しホッとした。
「だっ誰ですか!?」
心底怯えた様に発する彼女に出来るだけ優しく話した。
「さっき一緒にいた者です。名無しと申します」
「あ……マキムラ、マコト…と申します」
名無しはマコトの近くに腰掛けた。
「さっきの人は行く所があるみたいなので私とお話しして待ってましょう」
「……はい」
困った。早速沈黙だ。
「マコトさん。その服、ほぐし快館の?私、先月お世話になりましたよ。店長しかいらっしゃいませんでしたけど。今度マコトさんにお願いしたいなぁ」
「来て下さってたんですね。店長みたいなパワーは無いですがぜひ、機会があれば」
少し警戒が解けた様で安心した。
営業スマイルかもしれないが柔らかく笑って話してくれる。
その後は、色んな話をした。趣味や特技の事…年齢の事も話し同い年だと知った。
名無しから話題を作る方が多かったがマコトも名無しに興味を持ち色々と聞いてくる様になった。
何も不安な事を考えなくても良い若い女の子達が普通に話す様な他愛もない話をした。
ガラガラと扉が開く音がして真島が帰って来る。
「おとなしくしとったか。名無し、お前そろそろ出勤の準備せなあかん時間やな」
「おかえりなさい。もうそんな時間ですか!?じゃあ…マコトさん。失礼します」
「あ…ありがとう……」
「いえ」
見えていないだろうが名無しはマコトに丁寧にお辞儀をした。
真島に手招きされ一緒に外へ出る。
「助かったで。良い話し相手になってくれた様やな。…ずっと気になっとったやろけど話しとかなあかんな」
ようやくこの謎が解ける時が来た。
「あの女は、俺が殺さなあかんターゲットや」
「……え…!?…真島さんが…殺し…?」