パルクール青年と青い日常を
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「おーい!!名無しちゃんまだかー?」
ドア越しに海藤さんの急かす声が聞こえる。
私は今、事務所のトイレにいる。
しかも女子高生のコスプレをしてだ。
「こ、これは我ながら違和感しかない…」
先程、八神さんから渡された啓光学院の制服。
トイレに入って着替えてみたは良いものの洗面台についた鏡でその姿を確認し残念な気持ちになる。
渡された制服はこの学院らしいおしゃれなオリジナルのセーラー服で、確かに学生時代はどこそこの学校は制服が可愛いとかで少しばかり憧れたりはしたけど…
「おーい。名無しちゃん。勿体ぶってないで早く出て来いって!!」
また海藤さんの声が急かす。
私は渋々トイレのドアを開け、体を隠す様に顔だけを覗かせる。
そして目に入ったのはブレザー姿の杉浦くんだった。
いつものジャケットを制服のブレザーに変えてパーカーの上から着こなす姿は普段とあまり変わりないからか凄く似合っている。
「杉浦くん凄く似合ってるね!!」
同い歳なのにこうも着こなしに差が出るか…て内心ショックを受けながら「名無しちゃんも似合ってるよ!」何て杉浦くんに言われて自分が知らぬ間にトイレのドアから飛び出していた事に気付く。
彼の制服姿に食いつき過ぎた事に後悔しながら杉浦くんの台詞で一斉にこっちを見る八神さんと海藤さんの視線が痛い……
「あー…あの……すみません。違和感しかないです」
恥ずかしい。めちゃくちゃに。
「いや、こりゃ行けんな!なぁ、海藤さん」
「ぁあ、2人とも完璧じゃねーか」
八神さんと海藤さんが話している。
「えっと……変、ですよね?」
私はおずおずと尋ねる。
「何言ってんの。凄く可愛いよ!」
杉浦くんの優しい言葉に顔が一気に熱くなるのを感じた。
「よし!こうなりゃ話は早い。改めて……君達2人に啓光学院潜入調査を頼む」
八神さんは私達の目をしっかり見て言った。
これは信頼してくれてるって証。
でも、私の内心は不安でいっぱいだった。
そんな気持ちをたぶん皆は知っている。
「大丈夫。僕が付いてるよ」
隣にいた杉浦くんに私の目線まで腰を屈めて顔を覗かれ、そして彼は私の頭を撫でてくれた。
この人はきっと学院内で大人気のモテモテ男子になるだろうと確信した私だった。
それから話はとんとん拍子に進み、正式に学校からの依頼を受ける事に決定した。
私は残された時間を今時の女子高生について知識を得る事に費やした。
今の流行、ファッション、メイク…勉強も。
高校の勉強ってこんなに難しかったっけと苦戦した。
潜入初日まで後2日、今日も八神さんは啓光学院からの依頼者と忙しそうに連絡を取っている。
そんな中、事務所で女子高生に人気のファッション誌を見ながら時計を見た私はそろそろだなと立ち上がる。
「海藤さん、美容院に行ってきます。髪を切って黒く染めてきます。八神さんにお伝え下さい」
「…は、はぁ……?」
不思議な返事をする海藤さんに今、高校生の間で流行ってるらしいアニメを携帯で見ていた杉浦くんが「僕も明日、黒に染める予定だよ」と言った。
「ぁあ、そう言う事か。気を付けてな!」
海藤さんの見送りの言葉を背に出発しようとした時、杉浦くんが送ってあげると声をかけてくれた。
壁にかけてある事務所の車の鍵を取った杉浦くんと一緒に事務所の階段を降りた。