judge eyes
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【Your Song】
海藤さんと杉浦くんは仕事で出てる為、八神さんと事務所で2人きりのある日のAM9:30。
「今日、午後休取ってデートしない?」
静かにノートパソコンを叩いていた私に八神さんが突然言った。
「………えっ」
思わずぽかーんとする私。
脈絡も無く突然デートに誘われたのでは無い。
勿論、私達は付き合っている。
憧れの八神さんにようやく想いが伝わり晴れてカップルになった。
何故にぽかーんとしてしまったかと言うと、とにかく珍しい。
八神さんは本当に休まない。
事務所に寝泊まりしてる為もあるけどお休みの日にも1人で事務所を開けている。
そんな仕事人間…と言うかそれが彼の日常であるからカップルになってからまともなデートなんてした事が無かった。
「海藤さんに後は任せてたまには名無しと一緒に休めって言われたんだよな」
「良いんですか!?」
海藤さんがそんな事を言ってくれるなんて感激だ。
流石、部下の事をよく見ている兄貴である。
「どうする?」
デスクトップPC越しに目を細めて口角を上げる八神さんがカッコ良すぎてドキッとした。
「行きます!!」
私は思わず立ち上がって返事をした。
*******
「八神さん!お待たせしました」
海藤さんにお礼を行って仕事を任せた私は先に事務所を出ていた八神さんと喫茶アルプスで待ち合わせていた。
「お疲れ。何食べる?」
先に席に着いていた八神さんはメニューを私に渡した。
昼食はここで済ませて神室町ヒルズで買い物でもして過ごす予定である。
互いに食べるものを決め、お店の人に注文した。
ガシャーン
急に大きな音がしてそちらを見るとテーブルからカップが落ちて割れた様で、そのテーブルに座る客は女性の店員を怒鳴りつけていた。
その客はいかにも柄の悪そうな小太りの男。
「どーしてくれんだよ!この服!!」
男は怒鳴りながら自分の服に付いた茶色いシミを店員に見せた。
コーヒーだろうか…なかなか目立つ汚れだ。
「で、でもそれはお客様がご自分で…」
女性の店員が何か言っている…もしかしてこの男に難癖をつけられているのでは…!?
「うるっせー!口答えするたぁこりゃ体で償ってもらわねーと気がすまねぇな」
「きゃあっ」
女性の腕を掴み無理矢理引っ張った。
「離して下さい!」
「これからホテルに連れてくんだから大人しくしろよ」
ぐいぐいと腕を引かれ、必死で抵抗する女性を見て私はどうしようと八神さんの方を向いた。
すると彼は既に立ち上がっており、男と女性店員の方へ歩いて行った。
「待てよ」
そう言って男の腕を掴む八神さん。
「あー?何だテメェ」
「他のお客さんの迷惑になるから出てってくれない?」
「ヤクザ舐めてやがんのかっ」
男はそう言って八神さんの胸ぐらを掴む。
全く動じない八神さんは呆れた様に溜息を吐いた。
「さっき警察に電話したから。ヤクザがカタギに手出しちゃダメでしょ」
八神さんは男の手を掴んで自分の胸ぐらから離した。
「……くそっ」
そう吐き捨てると店の椅子を蹴り飛ばし男は出て行った。
八神さんが全く動じないので諦めたのだろう。
当然だ。彼はヤクザに慣れてる。
「ありがとうございますっ」
店員の女性は八神さんに頭を下げた。
八神さんが警察に電話したと言うのは嘘で、その後アルプスのゴタゴタは完全に落ち着き食事を済ませた私達は中道通を神室町ヒルズに向かって並んで歩いていた。
『さっきの店員さん、八神さんに惚れてた…絶対に』
あの店員さんが八神さんを見る顔を思い出してそんな事を考えているとちょっと不安になって来る。
そしてその不安をますます高める様に色んな人が八神さんに話しかけるし、遠くからはお水ぽい女性が笑顔で手を振っている。
メイドの様な格好をしたおっぱいの大きい女の子や路上ライブをするギターを抱えた女の子、その他色々な麗しい女性の数々…
八神さん、いつの間にこんな沢山の女性とお知り合いに!?
私の頭の中では複雑な感情がぐるぐる回っていた。
そんな時、目の前を飛んで行った謎の茶色い塊。
一瞬、おばけかと思ってギョッとしたけどすぐ後ろから走ってくる派手な白い服を着たスキンヘッドの人が見えた。
「助けてぇぇえ」
テレビで見た事ある……確かアイドルの……
「名無し、悪いっヒルズで待ち合わせで!」
そう言って八神さんは突然走り出しその茶色の塊を追いかけて行った。
「ボクの帽子〜」
そのスキンヘッドアイドルも八神さんを追いかけてあっという間に2人の姿は消えてしまった。
賑やかな神室町の中ぽつんと1人取り残される。
「え…どう言う事……?」
あまりに唐突で一瞬の出来事だった為、私の頭は真っ白だった。
けれど急に酷く虚しくなってしまった。
八神さんと歩く神室町の街には私の知らない彼の知人が沢山いた。
色んな人に話しかけられて色んな人に頼られていた。
私より可愛い女の子やセクシーな女性も皆八神さんの事が好きな様に見えた。
……皆の八神さんだった……
気付けば私はゆっくり歩き出していた。
先に神室町ヒルズに行っておこうかとも思ったけどそんな気にはなれなかった。
私はビルの屋上へ上がった。
一応言っておくのだけどショックで飛び降りしようとかそう言うのでは無い。
神室町の事、私はそれ程知らない。
八神さんが尽力する決して美しく無いこの街を見渡してみたかった。
見渡すならミレニアムタワーが最適なんだけど人が多いのでやめた。
楽しくて賑やかで下品な街…
昼間の為、独特の雰囲気は鳴りを潜めている。
「…やっと八神さんの彼女になれたのに全然実感ないままだよ」
この街のどこかでカツラを追いかけて走り回っているであろう彼に聞こえないかと思って呟く。
あの人はデート中にどっか行っちゃう酷い人だ。
きっと私より街の人の方が大切なんだ。
良い歳してヤキモチ妬く子供みたいな事を考えていた。
今更だと自分を説き伏せてみる。
いつも仕事ばっかりでデートもまともに出来ない事くらい最初から分かっていた。
けど、街の人の為に何かする八神さんが一番輝いていたのを知っている。
結局、そう言う八神さんに惚れたのかもしれない。
ハァァと私は大きな溜息を吐く。
一度呟いてみよう…スッキリするかもしれない…
「八神さんなんて…大っ嫌い……」
言って虚しくなった。
そんな事ないのに…本当は大好きなのに…
「俺は好きだよ?」
突然後ろから聞こえた声に振り返ると八神さんが眉を下げて微笑みながら立っていた。
ポロリと一粒の涙が頬を伝う。
この涙は一体何だろう…下らない事で拗ねた自分の愚かさを悔いているのかもしれない。
そう思った時には私は八神さんに引っ張られ、彼の腕の中にいた。
八神さんのタバコと香水の香りで心地の良い空気に包まれる。
彼のライダースをぎゅっと掴んだ。
「嫌いとか言うなよー…ショックだわ」
八神さんの胸に顔を擦り寄せた。
「だって…八神さん…人気者で…可愛い女の子のお友達も沢山いて…」
彼の胸に顔を埋める私の頭がそっと撫でられた。
「もしかして妬いてる?」
どくんと心臓が跳ね上がり自分の気持ちがバレた事に激しい羞恥心が込み上げた。
「ちっ違うもん!八神さんが皆に平等なのは知ってるけどもっと私との時間とって欲しいな…と思っただけ」
八神さんに重いと思われたく無いのにこれは完全に嫉妬していますと言っている様なもの。
しまったと絶望しながら八神さんの顔を見上げると目を丸くしていた。
そして眉を下げ一瞬穏やかな表情をすると再び抱き締められた。
「待って名無し、可愛過ぎんだけど……」
ぎゅうっと音がしそうなくらい強く抱き締められて、私達ってこんな事すら無かったなと思うと幸せだった。
「仕事で毎日会ってるから勘違いしてたけどデートもまともに出来てないよな」
八神さんの胸から顔を離して見上げると彼はフッと笑った。
「今日さ、名無しん家、帰っても良い?」
「えっ……」
「明日、一緒に出勤しない?」
八神さんが私の家に来るなんて初めてだ。
しかも…明日一緒に出勤すると言う事は泊まって行くと言う事…?
色々考えてしまった私は嬉しさ半分照れ半分で俯き頷いた。
それを合図に、行こうと言われて手を引かれた。
街の人達に嫉妬した。
八神さんは私より皆が大事なんだと思った。
「八神さん、ごめんなさい。私ヤキモチ妬いたりなんて…」
引っ張られる様に歩いていた私は八神さんに並んで彼を見上げて言った。
正直に。嫉妬していたと。
「いや、俺も悪かったよ。カツラ追いかけて勝手にどっか行ってしまって。あの人とはちょっとした知り合いでさ。皆にも今度は名無しの事紹介するよ」
「…えっ」
「俺の彼女だってな」
八神さんは私に目を合わせて笑った。
私は嬉しくて彼の腕にしがみついた。
こうやって触れられるのは自分だけなのに街の人達に負けた気になって嫉妬していたのが本当にバカみたい。
行動を起こさないで諦めて待っていただけの自分に深く反省した。
「今日も私の為に仕事を休んでくれたもんね」
腕にしがみつく私の頭を彼の大きな手がポンポンと撫でた。
「世界中の誰もが敵でも俺は味方だよ」
「…?…何か言いました?」
「いや、今夜は覚悟しとけよ」
その意味を理解して、彼を見上げる私の顔は夕日に照らされ一層赤くなっていた。
それを見た八神さんはケラケラ笑った。
八神さんはモテると思うから時々不安になる時もあるはず。
けれどその時に2人で一緒に時間を作って行けたならきっとずっと…
…私はあなたのそばにいます…
end
海藤さんと杉浦くんは仕事で出てる為、八神さんと事務所で2人きりのある日のAM9:30。
「今日、午後休取ってデートしない?」
静かにノートパソコンを叩いていた私に八神さんが突然言った。
「………えっ」
思わずぽかーんとする私。
脈絡も無く突然デートに誘われたのでは無い。
勿論、私達は付き合っている。
憧れの八神さんにようやく想いが伝わり晴れてカップルになった。
何故にぽかーんとしてしまったかと言うと、とにかく珍しい。
八神さんは本当に休まない。
事務所に寝泊まりしてる為もあるけどお休みの日にも1人で事務所を開けている。
そんな仕事人間…と言うかそれが彼の日常であるからカップルになってからまともなデートなんてした事が無かった。
「海藤さんに後は任せてたまには名無しと一緒に休めって言われたんだよな」
「良いんですか!?」
海藤さんがそんな事を言ってくれるなんて感激だ。
流石、部下の事をよく見ている兄貴である。
「どうする?」
デスクトップPC越しに目を細めて口角を上げる八神さんがカッコ良すぎてドキッとした。
「行きます!!」
私は思わず立ち上がって返事をした。
*******
「八神さん!お待たせしました」
海藤さんにお礼を行って仕事を任せた私は先に事務所を出ていた八神さんと喫茶アルプスで待ち合わせていた。
「お疲れ。何食べる?」
先に席に着いていた八神さんはメニューを私に渡した。
昼食はここで済ませて神室町ヒルズで買い物でもして過ごす予定である。
互いに食べるものを決め、お店の人に注文した。
ガシャーン
急に大きな音がしてそちらを見るとテーブルからカップが落ちて割れた様で、そのテーブルに座る客は女性の店員を怒鳴りつけていた。
その客はいかにも柄の悪そうな小太りの男。
「どーしてくれんだよ!この服!!」
男は怒鳴りながら自分の服に付いた茶色いシミを店員に見せた。
コーヒーだろうか…なかなか目立つ汚れだ。
「で、でもそれはお客様がご自分で…」
女性の店員が何か言っている…もしかしてこの男に難癖をつけられているのでは…!?
「うるっせー!口答えするたぁこりゃ体で償ってもらわねーと気がすまねぇな」
「きゃあっ」
女性の腕を掴み無理矢理引っ張った。
「離して下さい!」
「これからホテルに連れてくんだから大人しくしろよ」
ぐいぐいと腕を引かれ、必死で抵抗する女性を見て私はどうしようと八神さんの方を向いた。
すると彼は既に立ち上がっており、男と女性店員の方へ歩いて行った。
「待てよ」
そう言って男の腕を掴む八神さん。
「あー?何だテメェ」
「他のお客さんの迷惑になるから出てってくれない?」
「ヤクザ舐めてやがんのかっ」
男はそう言って八神さんの胸ぐらを掴む。
全く動じない八神さんは呆れた様に溜息を吐いた。
「さっき警察に電話したから。ヤクザがカタギに手出しちゃダメでしょ」
八神さんは男の手を掴んで自分の胸ぐらから離した。
「……くそっ」
そう吐き捨てると店の椅子を蹴り飛ばし男は出て行った。
八神さんが全く動じないので諦めたのだろう。
当然だ。彼はヤクザに慣れてる。
「ありがとうございますっ」
店員の女性は八神さんに頭を下げた。
八神さんが警察に電話したと言うのは嘘で、その後アルプスのゴタゴタは完全に落ち着き食事を済ませた私達は中道通を神室町ヒルズに向かって並んで歩いていた。
『さっきの店員さん、八神さんに惚れてた…絶対に』
あの店員さんが八神さんを見る顔を思い出してそんな事を考えているとちょっと不安になって来る。
そしてその不安をますます高める様に色んな人が八神さんに話しかけるし、遠くからはお水ぽい女性が笑顔で手を振っている。
メイドの様な格好をしたおっぱいの大きい女の子や路上ライブをするギターを抱えた女の子、その他色々な麗しい女性の数々…
八神さん、いつの間にこんな沢山の女性とお知り合いに!?
私の頭の中では複雑な感情がぐるぐる回っていた。
そんな時、目の前を飛んで行った謎の茶色い塊。
一瞬、おばけかと思ってギョッとしたけどすぐ後ろから走ってくる派手な白い服を着たスキンヘッドの人が見えた。
「助けてぇぇえ」
テレビで見た事ある……確かアイドルの……
「名無し、悪いっヒルズで待ち合わせで!」
そう言って八神さんは突然走り出しその茶色の塊を追いかけて行った。
「ボクの帽子〜」
そのスキンヘッドアイドルも八神さんを追いかけてあっという間に2人の姿は消えてしまった。
賑やかな神室町の中ぽつんと1人取り残される。
「え…どう言う事……?」
あまりに唐突で一瞬の出来事だった為、私の頭は真っ白だった。
けれど急に酷く虚しくなってしまった。
八神さんと歩く神室町の街には私の知らない彼の知人が沢山いた。
色んな人に話しかけられて色んな人に頼られていた。
私より可愛い女の子やセクシーな女性も皆八神さんの事が好きな様に見えた。
……皆の八神さんだった……
気付けば私はゆっくり歩き出していた。
先に神室町ヒルズに行っておこうかとも思ったけどそんな気にはなれなかった。
私はビルの屋上へ上がった。
一応言っておくのだけどショックで飛び降りしようとかそう言うのでは無い。
神室町の事、私はそれ程知らない。
八神さんが尽力する決して美しく無いこの街を見渡してみたかった。
見渡すならミレニアムタワーが最適なんだけど人が多いのでやめた。
楽しくて賑やかで下品な街…
昼間の為、独特の雰囲気は鳴りを潜めている。
「…やっと八神さんの彼女になれたのに全然実感ないままだよ」
この街のどこかでカツラを追いかけて走り回っているであろう彼に聞こえないかと思って呟く。
あの人はデート中にどっか行っちゃう酷い人だ。
きっと私より街の人の方が大切なんだ。
良い歳してヤキモチ妬く子供みたいな事を考えていた。
今更だと自分を説き伏せてみる。
いつも仕事ばっかりでデートもまともに出来ない事くらい最初から分かっていた。
けど、街の人の為に何かする八神さんが一番輝いていたのを知っている。
結局、そう言う八神さんに惚れたのかもしれない。
ハァァと私は大きな溜息を吐く。
一度呟いてみよう…スッキリするかもしれない…
「八神さんなんて…大っ嫌い……」
言って虚しくなった。
そんな事ないのに…本当は大好きなのに…
「俺は好きだよ?」
突然後ろから聞こえた声に振り返ると八神さんが眉を下げて微笑みながら立っていた。
ポロリと一粒の涙が頬を伝う。
この涙は一体何だろう…下らない事で拗ねた自分の愚かさを悔いているのかもしれない。
そう思った時には私は八神さんに引っ張られ、彼の腕の中にいた。
八神さんのタバコと香水の香りで心地の良い空気に包まれる。
彼のライダースをぎゅっと掴んだ。
「嫌いとか言うなよー…ショックだわ」
八神さんの胸に顔を擦り寄せた。
「だって…八神さん…人気者で…可愛い女の子のお友達も沢山いて…」
彼の胸に顔を埋める私の頭がそっと撫でられた。
「もしかして妬いてる?」
どくんと心臓が跳ね上がり自分の気持ちがバレた事に激しい羞恥心が込み上げた。
「ちっ違うもん!八神さんが皆に平等なのは知ってるけどもっと私との時間とって欲しいな…と思っただけ」
八神さんに重いと思われたく無いのにこれは完全に嫉妬していますと言っている様なもの。
しまったと絶望しながら八神さんの顔を見上げると目を丸くしていた。
そして眉を下げ一瞬穏やかな表情をすると再び抱き締められた。
「待って名無し、可愛過ぎんだけど……」
ぎゅうっと音がしそうなくらい強く抱き締められて、私達ってこんな事すら無かったなと思うと幸せだった。
「仕事で毎日会ってるから勘違いしてたけどデートもまともに出来てないよな」
八神さんの胸から顔を離して見上げると彼はフッと笑った。
「今日さ、名無しん家、帰っても良い?」
「えっ……」
「明日、一緒に出勤しない?」
八神さんが私の家に来るなんて初めてだ。
しかも…明日一緒に出勤すると言う事は泊まって行くと言う事…?
色々考えてしまった私は嬉しさ半分照れ半分で俯き頷いた。
それを合図に、行こうと言われて手を引かれた。
街の人達に嫉妬した。
八神さんは私より皆が大事なんだと思った。
「八神さん、ごめんなさい。私ヤキモチ妬いたりなんて…」
引っ張られる様に歩いていた私は八神さんに並んで彼を見上げて言った。
正直に。嫉妬していたと。
「いや、俺も悪かったよ。カツラ追いかけて勝手にどっか行ってしまって。あの人とはちょっとした知り合いでさ。皆にも今度は名無しの事紹介するよ」
「…えっ」
「俺の彼女だってな」
八神さんは私に目を合わせて笑った。
私は嬉しくて彼の腕にしがみついた。
こうやって触れられるのは自分だけなのに街の人達に負けた気になって嫉妬していたのが本当にバカみたい。
行動を起こさないで諦めて待っていただけの自分に深く反省した。
「今日も私の為に仕事を休んでくれたもんね」
腕にしがみつく私の頭を彼の大きな手がポンポンと撫でた。
「世界中の誰もが敵でも俺は味方だよ」
「…?…何か言いました?」
「いや、今夜は覚悟しとけよ」
その意味を理解して、彼を見上げる私の顔は夕日に照らされ一層赤くなっていた。
それを見た八神さんはケラケラ笑った。
八神さんはモテると思うから時々不安になる時もあるはず。
けれどその時に2人で一緒に時間を作って行けたならきっとずっと…
…私はあなたのそばにいます…
end