パルクール青年と青い日常を
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私と杉浦くんは違うクラスに配属された。
それぞれ被害者の女の子がいたクラスだ。
杉浦くんはあまりの美青年…いや、美少年具合に学年ではすぐに存在が広まっていた。
あまり目立ちたく無いだろう彼の気持ちとは裏腹に…。
杉浦くんと離れると正直不安になるけど、彼が目立ってしまう今の状況では地味に私が頑張らなければと思う。
「ねぇ、名無しさん。隣のクラスにも転校生の男子がいてめちゃくちゃカッコいいけど喋った?」
杉浦くんのお陰か…こんな具合で女子が寄ってくるから打ち解けるのは思ったより簡単だった。
一緒のタイミングで転校してきたものだから杉浦くんと話すチャンスがあった事、彼がどんな人なのかを一部の女子からは探られた。
「うん…まぁ少しだけ話したよ。でもほんと少しだけだから」
まぁこんな感じで適当に返す。
事務所に帰ったら海藤さんに報告して一緒に杉浦くんをからかおうとか考える。
ここ、啓光学院はお嬢様、お坊ちゃん達、比較的裕福な家庭の子が好んで通う敷居が高い高校。
そんな啓光学院にて起こったある事件。
女子生徒が3人、校内で何者かに襲われスカートや服を破られた。
女子生徒達は全員、犯人の顔は見ていないと言う。
校長先生の話では警備のきちんとしているこの学園で外部の者による犯行は考えにくいとの話だった。
私と杉浦くんは生徒や他の先生達には秘密で転校生として校内に潜入する事になった。
そんな依頼を受けた初日の潜入だった。
私達は学校帰りに八神探偵事務所へ寄って本日の報告をする。
「私のクラスの被害にあった子は学校を休みがちで会える日がほとんど無いと友人達からの話でわかりました。その子達は時々被害者の子の家へ行って会っているそうなのでそこから接触を図る事しか……」
被害者に話を聞くのは心が痛むけれど何とか直接会えたら…
杉浦くんの情報に期待して彼を見る。
「被害者の1人が美術部にいる事を突き止めたよ。名無しちゃんのクラスの子とは違って多少の傷は負いながらも毎日学校に来ているらしい」
「杉浦くん!凄い。初日でそこまで情報を仕入れるなんて」
流石だ。彼の行動力には目を見張るものがあったけどやっぱり凄い。
「よし。よくやった杉浦。じゃあその子に接触するしか無いな」
「八神さん。私、明日から美術部に入部します」
杉浦くんの話を聞いた瞬間によぎった事を八神さんに言った。
「私、美術は得意でした!違和感無く入部できると思います!」
「まぁ、女の子に近付くなら名無しの方が良いだろうな。わかった、しっかりやってくれ」
八神さんに期待の籠った表情で見つめられ「はいっ」と大きく返事をした。
不思議な眼差し。やる気が漲る気がする。
「2人共、疲れたろ?今日はもう帰れ。早く寝て明日に備えてくれ」
八神さんに帰宅を促され、私達は帰る事にした。
「お疲れ」
八神さんの声を背中に受けながら事務所の扉を閉めた。
「送るよ」
杉浦くんにそう言ってもらったのでお言葉に甘える事にした。
「杉浦くん。今日は貴重な情報集めてくれてありがとうね」
隣を歩く杉浦くんの顔を見上げて感謝した。
あー…やっぱり黒髪も似合うなぁ…こりゃ校内で噂になるよね…なんて考えながら。
「名無しちゃん、気をつけてね。女の子なんだからいつ犯人に襲われてもおかしくないんだから」
「う、うん…でももっと可愛い子狙うよきっと」
心配してくれてる優しい杉浦くんを嬉しく思いながらまさか私なんかと苦笑した。
「僕が傍にいるんだから1人で無茶しないでね。いつでも助けるからさ」
突然両肩を掴まれ真正面に向かされる。
いつもキリッと上がる眉毛が珍しく下がっていてドキッとしてしまった。
「うん。ありがとう。杉浦くんの事、本当に頼りにしてるよ」
素直に本心を伝える。彼にこれ以上こんな表情をさせるのは心が痛む。
杉浦くんはうんと頷いて私の肩から手を放し、優しい笑顔を向けてくれた。
そんな彼の表情に自分の顔が赤くなるのを感じたから慌てて目を逸らして話題を変える。
「あー…そう言えば私達、高校生カップルに見えるかな…八神さん言ってたけど」
とっさに出た話題とは言えもっと他に無かった物かと自分で言って照れ臭くなり苦笑いした。
「じゃあさ、今度記念に制服デートしよっか」
「記念って!!冷静に考えたらかなり痛いコスプレだよー、これ」
「そうかな?名無しちゃん凄く似合ってるし可愛いから良いじゃん」
さらっと明るい表情でそんな事を言うもんだから彼らしいと思いながらも照れてしまった。
私は杉浦くんが好きだ。
こうやって彼の表情、言葉一つ一つにどきどきしている事なんて彼はきっと知らないだろう。
ただ、可愛いだなんてさらっと言ってくれた杉浦くんの言葉は私の口元を酷く緩ませた。
「あー…明日、体育なんだよ。この歳で体育、絶対辛いー!」
嬉しさでニヤけてしまうのを誤魔化す為に杉浦くんから視線を外してまた話題を変えた。
「杉浦くん、窓から見えても笑わないでね」
半分泣きそうになりながら杉浦くんに頼み込む。辛い。高校生と体育なんて地獄すぎる。
「えっ……ちょっ何そのプレイ!?」
「いや、からかわないでよ!そんなんじゃ無いでしょー!ブルマじゃないんだから」
変な事を言う杉浦くんに全力で突っ込む。
20代後半の体操服姿なんてなんだかみっともない……
私の全力の突っ込みを受けて大爆笑する杉浦くん。
こう2人で歩いていると本当に高校生カップルになったみたいで…当時彼氏もいなかった私はこんな高校生は憧れだなーと巡らせ思わず笑みが溢れた。
ー次の日ー
授業中に教室の窓から名無しのクラスが体育で校庭にいるのを見ていた杉浦だった。
「あ、名無しちゃん……っ!?!?」
名無しを見つけたは良いが発達途中の高校生の中で一際、謎の色気を放つ彼女の体操服姿に目を見開く。
「破壊力ありすぎでしょ…」
そう呟きながら前を向き直して黒板を見るが彼女と同じクラスの男子高校生達の視線が気になって授業内容は殆ど頭に入らなかったとか…