パルクール青年と出会った日
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「ここの2階ね」
事務所の入るビルの下に着いて1階の入り口、ガラス戸を開ける。
「あ、すみません…」
ぺこりと頭を下げながらそそくさと中に入る彼女。
「えっと…道案内ありがとうございました。助けて頂いたし今度、お礼させて下さい」
「そう?じゃあ楽しみにしてる」
そう返事をして階段を上がる。
不思議な顔をしながら数歩下から見上げる女の子はたぶん僕も事務所に向かっている事を疑問に思っている表情だろう。
彼女は目をパチクリさせながら僕に着いて来て事務所の扉前まで辿り着く。
僕は何も言わず扉を開いた。
「杉浦!おかえり。遅かったな」
一番に目があったのは海藤さん。
「ただいま。八神さん!はい、これ!」
僕は扉前から自席に座る八神さんにタバコを投げた。
「助かったよ」
八神さんはそう言って見事にキャッチした。
それを見た僕は後ろに隠れるように立ちすくむ彼女に「どうぞ」と扉を大きく開けて中へ促す。
「はい…」
彼女はびっくりしただろうな。八神さんと知り合いだったとは思ってなかっただろうね。
中に入った彼女を見て八神さんが「…あっ」と声を出した。
「申し訳ない!!今日だったね。こちらへどうぞ!!」
八神さんは慌てた様に海藤さんが座るソファの前へ彼女を誘導して自分も海藤さんを端に追いやり隣へバタバタと腰かけた。
「ター坊…何だ一体!?」
「今日、面接だったんだよ。と言っても真冬からの紹介だから働いてもらうのは決まった様なもんだけど」
「はぁ!?!?聞いてねーぞ!女の子が来るなんて!!」
嬉しそうな海藤さんの声色を聞きながら僕は冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出しコップに注いで女の子の前に出した。
「忘れてたんだよね、八神さん」
ニヤリとしながら八神さんに言うと苦笑いしている。
「えっと… 名無しさんだったよね。真冬から話は聞いてるよ。ウチとしては是非来てもらいたいんだけど」
顔色を伺う様に尋ねる八神さん。
でもそんな心配そうな八神さんを他所に彼女は言った。
「正直、私には実績と呼べる実績もありませんしむしろ拾って頂けるのなら全力で頑張ります」
元気に応える彼女を見て何かいいじゃんと思って、八神さんを見ると嬉しそうな顔をしている。
「よっしゃー!!名無しちゃん!俺は海藤だ。よろしくな」
そらきた。やっぱり海藤さんのテンション爆上がりだ。
「助かるよ。こんな男ばかりの中、紅一点で申し訳ないけど女性と人手が欲しいと思ってたからさ。よろしくお願いします」
八神さん、やっぱり最近忙しくしてたから人を増やそうと思ってたわけだね。
「よろしくお願いします」
彼女は深々と頭を下げた。
1人増えた八神探偵事務所。これから賑やかになりそうだ。
僕は改めて、彼女と真っ直ぐ向き合って言った。
「僕は、杉浦。杉浦文也だよ」
「杉浦さん…先程は本当にありがとうございました。こちらの事務所の方だったんですね。凄い偶然」
びっくりしましたって言って少し眉を下げて笑った。
「うん。実はそうだったんだよね。よろしくね。名無しちゃん」
それは偶然か…?それとも運命か……?
僕らが出会った日のお話。