パルクール青年と出会った日
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「杉浦、悪いんだけどタバコ買ってきてくれ」
そう八神さんは言って多目の金を僕に渡す。
「ついでに好きな物買って良いから頼む」
そう言われるとパシリ…いや、お使いも満更でもなくて「うん。良いよ」と返事をして事務所を出た。
最近の八神さんは忙しい。
お陰で僕も仕事が貰えるわけだけど人手が足りないと感じる時もしばしばある。
その分、八神さんが身を削ってこなしている様だ。
アドデック9の件、姉貴の事件が八神さんの力で解決し僕は正式に八神探偵事務所の一員になった。
と、同時に八神さんは貧乏探偵を卒業した。
噂を聞きつけ大きな仕事が次々と舞い込んでいる状況だ。
まぁそんな状態だからこそ僕はここに残らざるを得ないって感じだったわけだけど…
「えっと……八神さんのタバコは……」
コンビニのレジに並ぶ沢山のタバコを前にお目当ての物を見つけると店員に声をかけた。
同時に自分用のお駄賃である棒アイスをレジに並べた。
会計を済ませ店を出ると同時に棒アイスを頬張る。
少し歩くとキャッチの男に迫られるスーツを着た女の子が目に入った。
この街では良くある光景だし神室町の女の子は大抵が自分で断る力を持ってる。
特段気に留める様な事ではなかった。
「君だったらロリ系もイケる顔してるし1本だけでもかなり稼げるよ!」
男のゲスい声が聞こえる。AVのキャッチだろうか…。
「ぁ…あの…別に良いです」
「ちょっと待ってよ!」
立ち去ろうとする女の子の腕を掴むキャッチの男。
「い、いやや!話して下さい!」
その手を振り解こうと腕を振る彼女だったけど男の力には敵わない。
それより気になったのは彼女が咄嗟に発した懐かしい関西弁。
昔、関西で働いていたからか何となく気になってしまって気付いたら男の腕を掴んでいた。
「てめっ何すんだ!?」
男は女の子から腕を離し僕に拳を振るう。
避けた拍子に咥えていた棒アイスが落ちた。
一瞬、勿体ない気持ちになったけど目を丸くする女の子の腕を掴んで走った。
「こら!!待ちやがれーー」
男が鬼の形相で追いかけて来る。
僕に引っ張られ、なされるがままで走っていた女の子に「こっち」と足場を登り高いところを目指す。
キャッチの男は意外にしつこく、余程この子に大金を感じたのか必死で追って来る。
僕は高所から飛び降り、取り残され上でオロオロする女の子に向かって両手を広げて言った。
「おいで!こっち!」
追いかけて来る男の声が近づいて来るのを背中に感じ僕と後ろを交互に見る彼女。
「大丈夫!受け止めるから!」
僕の言葉に意を決して女の子がダイブした。
それと同時に見えた男の顔。
「くそっ」と吐き捨ててすぐに諦めて姿を消した。
それを認識したのも束の間、体にかかる衝撃。
飛んで来た女の子を受け止めたは良いがそのまま体制を崩してしまった。
「痛った……」
一瞬、時が止まった様な感覚になったけど今の状況を理解する。
僕は仰向けに倒れた。そして腕には受け止めた女の子。
頭だけを上げて無事を確認したらぎゅっと力強く僕の服を掴んでしがみ付き、僕の上でうつ伏せになる彼女が目に入ったから表情は見えなかったけど無事だと安堵の溜息をついて頭を寝かせて上を見た。
あー…女の子…柔らかいな……。
そんな事を考えて空をぼーっと眺めていたら恐怖でしばし放心していたのかちょっと間が空いて僕の上の女の子は顔を上げた。
「ごめんなさいっ……」
状況を理解したのか顔を真っ赤にして慌てて僕の上から離れた。
「あの…お怪我は!?!?」
かなり動揺して僕を覗き込むから上体を起こして「大丈夫」と返事をした。
正直言って女の子を抱きしめるなんていつぶりだろう…
久しぶりの感覚に何となく名残惜しい気持ちになった。
僕を心配そうに見るその大きな瞳にはうっすら涙が溜まっていてかわいそうに…怖かったんだなと思った。
「よしよし、頑張ったね」
そんな彼女の頭に手をやり数回撫でて乱れた髪を整えてあげる。
「君、関西の人?神室町は初めて?」
「……っはい。神室町には初めて来ました」
僕の問いに頬を赤くしながら答える彼女の言葉でこの街に不慣れな理由がわかった。
「ありがとうございました。私、神室町の事全然知らなくて…」
深々と頭を下げる彼女を見ながら問いかける。
「どうしてここへ?」
「私、探偵助手をしていましたが前に働いていた事務所が畳まれてしまったのでこの街の探偵事務所を紹介してもらったんです。そこへ行く途中でした」
なーんとなく、あれ?と思いながら案内してあげようとどこの事務所か聞いてみる。
「八神探偵事務所です」
うん。やっぱそうだね。八神さん何も言ってなかったから彼女が来る事忘れてるな。
女の子が入ってくれたら海藤さんも万々歳だね。
テンション上げまくりで喜ぶ海藤さんの顔が浮かんで思わず口端が上がる。
不思議そうな顔をする女の子の腕を掴んで立ち上がった。
「案内してあげるよ。着いてきて!」
一瞬驚いた顔をした彼女はふわりと微笑んで立ち上がり「心強いです」と笑った。