アイノカタチ
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「ただいま」
夕飯の準備がちょうど終わった頃、ピアーズが帰宅した。
「お帰りなさい」
リビングに入るピアーズの方にニコリと振り向いた名無しはすぐキッチンに向き直ってしまった。
夕飯の盛り付けをしている忙しそうな名無しを後ろから抱きしめる。
「フフッお腹空いたの?」
照れ臭そうにでも嬉しそうに問う。
「そうみたいだ」
名無しの首元に顔をうめていたピアーズは彼女の頸に軽くキスをして料理が盛り付けられた皿を運ぶ。
元々良くできた旦那だったが妊娠してからピアーズは本当に名無しを気にかけていた。
夕飯中
「あのさ……」
ピアーズが口を開いた。
その表情から良い話ではないと名無しは予想がついた。
もっと言えば帰って来たくらいから少し夫は変だったのだ。
「どうしたの?遠慮なく話してよ」
妊娠中は何かと精神状態が不安定になりやすい。
それを考慮してか彼は何かを言いにくそうにしていた。
ピアーズは一瞬黙った後話し始めた。
「任務でイドニアに行く事になった」
何を言いにくそうにしているのかと思えば任務の話。
「そっか。寒いから気を付けて」
いつもの事だと思い、笑顔で送り出そうと思った。
全く心配ないわけじゃない。
けど彼の腕を信じてるしお互い様だから。
「新種のB.O.Wが見つかった」
その言葉に名無しは食事をする手を止めてしまった。
「新種…?危険なの!?」
危険じゃないB.O.Wなんていない。
「まだわからないが…心配するな。大丈夫だよ」
勇気付けるように言われた。
私、妊娠中なのよ!?そんな危険な任務…赤ちゃんはどうなるの!?
なんて本当は言いたいけれどそんなルール違反は犯せない。
私は笑顔で送り出すしか許されない。
そう自分に言い聞かせた。
*******
ピアーズがイドニアの任務へ出て行ってから数日。
そろそろ彼はイドニアでのB.O.W殲滅を終え帰ってくる頃だろうか…
そんな事を考えながら名無しは内心気が気ではない気持ちで仕事をする。
今回は任務中にほとんどピアーズから連絡が無かった。
それだけ激しい戦いであったのか…
新種のB.O.W…一体どんなクリーチャーなのだ。
色々と思考を巡らせながらクレアを見た。
彼女はどう思っている?
実兄がバイオテロに関わり続け、直接戦いに行っている間、いつもどんな気持ちでいるのだろう。
「クレアさんは慣れっこなのかな…」
そう思ってクレアを目で追っていた時に彼女の携帯が鳴ったようだった。
携帯を耳に当てた彼女の顔は青ざめて行く。
名無しはその姿を見て恐ろしく不安な気持ちになった。
電話を切ったクレアが名無しの元へやって来てこう言った。
「兄さんのチームが…兄さんとピアーズ君以外全滅したって…」
耳を疑ったと同時に夫の生存にはホッとした。
だがそれだけの被害だ…体は大丈夫なのだろうか……。
「兄さん…B.O.Wの攻撃を受けて意識不明だって…ピアーズ君が連れ帰ってくれた」
泣きそうな表情をするクレアを見て驚いた。
こんな弱々しい表情をする彼女は初めて見たのだ。
名無しは思わずクレアに抱きついた。
「良かった…命は無事だったんですね」
「ピアーズ君のお陰よ。ありがとう」
クレアに礼を言われ夫の優秀さを誇りに思うと同時にクリスを助けた事に感謝した。
2人はその後、早退しクリスの入院する病院へ向かった。
「兄さん!!!!」
クレアが勢いよく病室のドアを開けた。
中にはベッドの上で眠るクリスの傍らに多少の怪我はあるものの無事だったピアーズの姿が。
「ピアーズ!!」
名無しは走りよりピアーズに抱きついた。
「……ただいま」
そう言ってピアーズは強く抱き締め返し名無しの頭を撫でる。
「クレアさん、隊長は頭を打って今は眠っていますがその内目を覚ますはずだと医者に言われました」
「ピアーズ君、ありがとう。兄を守ってくれて」
ピアーズからの報告にクレアは感謝し頭を下げた。
しばらく話した後、クレアは2人に言った。
「私はもう少しここに残るから2人は帰って!ピアーズ君はよく休んでね」
クリスが心配だったがクレアに任せニヴァンス夫妻はとりあえず病院を後にした。
名無しは車を運転しながら助手席のピアーズから話を聞いた。
守秘義務があるので詳しい事は聞けないが2人以外の隊員がB.O.Wとなり襲いかかって来たと言う。
気を失ったクリスを引きずりながらB.O.Wと化した仲間を殺す…
どれだけ体力的にも精神的にも辛かった事かと名無しは思った。
よく生き残ったと思う。
夫の精神力の強さと能力の高さに改めて心から感謝した。
ああは、なりたくない…ピアーズは窓の外をぼうっと見つめながら呟いた
その夜名無しはピアーズと一緒に風呂にいた。
ピアーズの脚の間に座り泡風呂に浸かる。
後ろから覆う形になるピアーズは名無しの少し膨らんだお腹に手を伸ばす。
「これからどんどん大きくなると思うよ」
「それは楽しみだな」
ニッコリ笑顔で名無しと目を合わせると耳にキスをした。
「ふふっ…くすぐったいってばー」
名無しがいやいやと首を振る。
名無しはピアーズの方に向き直り、深くキスをした。
舌を絡ませるピアーズに必死に応えると銀色の糸が伝って湯船に落ちた。
「…はっ……口で…していぃ?」
息を荒げ大きな潤んだ瞳でピアーズを見つめた。
「……っ……大変だろ?」
色気のある名無しの仕草に興奮してしまう。
「いいの…私がしたい」
そう言ってピアーズの手を取りバスタブの淵に座らせた。
既に主張しているそれを何の迷いもなく名無しは口に含んだ。
ピアーズに頭を撫でられながら丁寧に時には激しく舐め続けた。
次の日、仕事中のクレアの携帯が鳴る。
ピアーズからの着信だった。
「もしもし?ピアーズ君?」
「クレアさん。落ち着いて聞いて下さい…隊長が行方不明になりました。」
「………。……えっ!?」
一瞬飲み込めなかった。
「俺達チームが隊長を必ず探し出します。だから安心して下さい」
その言葉を聞いた後、電話を切ったクレアは自分のデスクから勢い良く走り出した。
名無しは休憩所でコーヒーを飲んでいた。
そこへクレアが勢いよく駆け込んでくる。
「名無し!!」
「クレアさん!?どうしたんですか!?」
「兄さんが行方不明で…もう…世話が焼ける人なんだから」
そんな緊急事態にも関わらず意外にクレアは冷静だった。
行方不明の兄を心配するのはこれが初めてではないからなのか…
「ピアーズ君がチームで探すって言ってくれてて…」
「そっか…皆さんなら必ずやってくれます!私達にも出来る事、探しましょう」
これは大変な事になってしまった。
経験も能力もずば抜けて高いクリス隊長がいないチームが心配だ。
クリスの元で任務をこなすピアーズに何の心配もしていなかったのはクリスの存在も大きいのだから…
その日を境にピアーズは忙しい日々が続く。
任務はクリスの代わりに自分が指揮を取り、任務のない日はクリスを探す。
毎日遅い帰宅が続いていた。
寂しい…今更ながらそう思い、過ごす事ももちろんある。
ピアーズが帰って来られない日は身重の体を心配してクレアや後輩のモイラが遊びに来てくれた。
「ピアーズ君、無理してると思うから兄さんを探してくれるのは本当にありがたいんだけどもういいよって言おうと思う」
ある日クレアが名無しにそう言った。
「クレアさん…あの人もチームの皆さんもクリスさんの事が大好きだからいても立ってもいられないみたいなの」
名無しはどこか寂しそうで…でも芯のある目でクレアに言う。
「だから…どうか夫の好きな様にさせてあげて下さい。お願いします」
そう。色々な事に覚悟を持ってピアーズ・ニヴァンスと言う男と結婚したのだ。
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