短編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
悪魔学校で仲良くなった名無しさんさん。
彼女は魔界生物学を専攻していたようで、そこでよく話すようになった。
僕の外見にも臆さずに話しかけてくれた彼女との距離が近づくのに、そう時間はかからなかった。
会う度にお互いに惹かれていき、交際を始めた。
「シチロウくん、明日、暇かな?」
僕の手を取り見上げる名無しさんさん。
くりんとした、まん丸で大きな目。
僕より数回りも小さい華奢な手。
どちらも、とても弱々しくて、壊れてしまいそう。
彼女のことはとても好きだ。
もちろん、先ほど挙げた目や手だって好きだ。
でも、思うんだ。
目だけあっても、名無しさんさんのものではあるけど、名無しさんさんではなくて。
手だけあっても、名無しさんさんのものではあるけど、名無しさんさんではなくて。
名無しさんさん、というものは何をもって本当の名無しさんさんになるのだろう。
口?足?臍?踵?羽管?心臓?肘?胸?指?
…どれがあったとしても、それだけだと寂しいし物足りないし、名無しさんさんではない。
本当の、名無しさんさんは、どこにあるんだろう…。
もし、もし輪切りにして、体中を探したら見つかるのだろうか…。
「もー、シチロウくん聞いてる?」
「え!?あ、聞いてるよ!うん!大丈夫!」
いけない、考えすぎてトリップしていたようだ。
「じゃあ明日楽しみにしてるよ!」
またね、と手を振る名無しさんさんを見送り、帰路につく。
「輪切り…」
呟いた自分の言葉に吃驚し、僕はブンブンと頭を振り、先ほど考えていたことを取っ払った。
翌日、名無しさんさんとのお出かけは繁華街だった。
彼女の買い物に付き添い、いい時間になったのでカフェでひと休みする。
小さな口で甘いスイーツを頬張る様子が可愛らしい。
「シチロウくん、ひとくち食べる?」
スプーンにその甘味を掬い、こちらに差し出してくる名無しさんさん。
僕は少し照れつつも、それを受け入れる。
名無しさんさんと喋って、一緒に過ごしていると、またあの考えが頭をよぎる。
こうして、喋り、体を動かしている器官は脳…ということは、脳みそが本体なのかな…
でも、もしそうなら直接触ると壊れてしまう。
僕に、好意的な気持ちを持ってくれているということは、心が本体なのだろうか。
ただ、そうとなると見えないし、触れない。
名無しさんさん、本当の君はどこなの?
「あ、そうだ。シチロウくん、あのね…」
名無しさんさんが鞄から、ラッピングのされた紙袋を取り出す。
それを僕に差し出してきたので、そのままおずおずと受けとった。
「ほら、付き合ってもうすぐ1年だから。お休みの日のうちにお祝いしたくて」
開けてみて?と言われ、言葉のままに袋から中身を取り出す。
これは…
「万年筆?」
「うん、これなら学校でもどこでも使えるなあっておもったから」
含羞みながら答える彼女にお礼を言うと、紙袋の中にまだ小さな紙が残っているのを発見した。
それを取り出し、見てみると、彼女からの心からのメッセージだった。
「とっても、嬉しいよ。ありがとう」
もしも、もしも輪切りにして、
本当の名無しさんさんをみつけたとして、それを手に入れた時、
本当の名無しさんさんを見つけるなんて寓言が叶ってしまった時、
僕はまだ彼女が好きなんだろうか。
本当の、名無しさんさん、ってなんだろう。
僕はきっと、永遠にこの自分の知識欲と戦っていかなければいけない。
彼女は魔界生物学を専攻していたようで、そこでよく話すようになった。
僕の外見にも臆さずに話しかけてくれた彼女との距離が近づくのに、そう時間はかからなかった。
会う度にお互いに惹かれていき、交際を始めた。
「シチロウくん、明日、暇かな?」
僕の手を取り見上げる名無しさんさん。
くりんとした、まん丸で大きな目。
僕より数回りも小さい華奢な手。
どちらも、とても弱々しくて、壊れてしまいそう。
彼女のことはとても好きだ。
もちろん、先ほど挙げた目や手だって好きだ。
でも、思うんだ。
目だけあっても、名無しさんさんのものではあるけど、名無しさんさんではなくて。
手だけあっても、名無しさんさんのものではあるけど、名無しさんさんではなくて。
名無しさんさん、というものは何をもって本当の名無しさんさんになるのだろう。
口?足?臍?踵?羽管?心臓?肘?胸?指?
…どれがあったとしても、それだけだと寂しいし物足りないし、名無しさんさんではない。
本当の、名無しさんさんは、どこにあるんだろう…。
もし、もし輪切りにして、体中を探したら見つかるのだろうか…。
「もー、シチロウくん聞いてる?」
「え!?あ、聞いてるよ!うん!大丈夫!」
いけない、考えすぎてトリップしていたようだ。
「じゃあ明日楽しみにしてるよ!」
またね、と手を振る名無しさんさんを見送り、帰路につく。
「輪切り…」
呟いた自分の言葉に吃驚し、僕はブンブンと頭を振り、先ほど考えていたことを取っ払った。
翌日、名無しさんさんとのお出かけは繁華街だった。
彼女の買い物に付き添い、いい時間になったのでカフェでひと休みする。
小さな口で甘いスイーツを頬張る様子が可愛らしい。
「シチロウくん、ひとくち食べる?」
スプーンにその甘味を掬い、こちらに差し出してくる名無しさんさん。
僕は少し照れつつも、それを受け入れる。
名無しさんさんと喋って、一緒に過ごしていると、またあの考えが頭をよぎる。
こうして、喋り、体を動かしている器官は脳…ということは、脳みそが本体なのかな…
でも、もしそうなら直接触ると壊れてしまう。
僕に、好意的な気持ちを持ってくれているということは、心が本体なのだろうか。
ただ、そうとなると見えないし、触れない。
名無しさんさん、本当の君はどこなの?
「あ、そうだ。シチロウくん、あのね…」
名無しさんさんが鞄から、ラッピングのされた紙袋を取り出す。
それを僕に差し出してきたので、そのままおずおずと受けとった。
「ほら、付き合ってもうすぐ1年だから。お休みの日のうちにお祝いしたくて」
開けてみて?と言われ、言葉のままに袋から中身を取り出す。
これは…
「万年筆?」
「うん、これなら学校でもどこでも使えるなあっておもったから」
含羞みながら答える彼女にお礼を言うと、紙袋の中にまだ小さな紙が残っているのを発見した。
それを取り出し、見てみると、彼女からの心からのメッセージだった。
「とっても、嬉しいよ。ありがとう」
もしも、もしも輪切りにして、
本当の名無しさんさんをみつけたとして、それを手に入れた時、
本当の名無しさんさんを見つけるなんて寓言が叶ってしまった時、
僕はまだ彼女が好きなんだろうか。
本当の、名無しさんさん、ってなんだろう。
僕はきっと、永遠にこの自分の知識欲と戦っていかなければいけない。