短編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私には好きなヒトが居る。
同僚の、マルバス先生だ。
サラサラとした黒髪、ほんわかとした雰囲気、拷問学の先生というギャップ。
どれもどれも、本当に素敵。
この世の素敵を全て詰め込んだんじゃないかと思ってしまう。
マルバス先生のおかげで毎日職場に来るのが楽しい。
書類を渡すだけで胸が高まる。
質問があるだけで頬が染まる。
近くを通るだけで意識してしまう。
…ただ、あまりこの気持ちを出しすぎてしまうと、仕事に支障が出るので抑えてはいる。
他の皆と態度は変えないように。
話しすぎたりしないように。
できる限り自分の行動を制限する。
欲に忠実である悪魔がよくやってると思う、本当に。
誰にも相談せず、隠し通している気持ちだった。
「名無しさん先生さあ、マルバス先生のこと好きなの?」
ポロリ
吸っていたタバコを落としてしまう。
隠していたはずの私の気持ちを暴露してきたのは喫煙仲間のイフリート先生。
2人で一服していたところ、そんなことを言われ、動揺してしまった。
「え、な、何でですかーイフリート先生?」
落としてしまったタバコを拾いながらそう聞けば、イフリート先生はふーっと煙を吐き、答える。
「んー?何となく?マルバス先生よく見てるよねーって思ってさ」
「あ、はは、…」
皮肉めいたような顔で口角を上げているイフリート先生に対して必死で繕ったように笑う。
どっどっと心臓の音が自分の中に響く。
大きすぎて聞こえてしまうんじゃないかってほどに。
悪いことでは無いはずだが、今まで隠していたせいで、なんだかバツが悪い。
モゴモゴと、どう答えようか言い淀んでいると、顔の右横にイフリート先生の腕が伸びてきた。
「…ねえ、名無しさん先生」
所謂片手壁ドンの状態で、イフリート先生は空いている手に持っていたタバコを焼き消した。
いつもより近い距離に、また別の意味で心臓が跳ねる。
静かに私の名前を呼び、目を細める様子が、とてもセクシーで、直視できない。
「僕、名無しさん先生のこと愛してるんだ」
「…え」
驚いてイフリート先生の方を向けば、熱情を孕んだ瞳と視線が絡まった。
これは、冗談では出せない顔だ。
私も、恋をしているから分かる。
「付き合ってくれない?」
「あの、…!」
返事をしようと口を開いた瞬間、イフリート先生は私の首に手をかける。
彼の表情は変わらないまま、私を見ている。
背筋に汗が伝う。
でも、断らなければ、いけない。
「ご、ごめんなさい!イフリート先生とは、付き合えませっ…ぐっ!」
イフリート先生の行動に怯まないように、断りの返事をしようとした矢先、首にかけていた手に力を込められる。
息が、できない。
気道が狭まり、パクパクと口を開く私を見ながら、イフリート先生は言う。
「聞こえなかった。もう1回言って?」
「ごめ、な…っ!」
拒否は受け取らないとでも言うように、私の返事の途中で更に手の力を込めるイフリート先生。
必死で首を振ろうとすると、じゅう、と焼けこげる音がした。
遅れて、皮膚の焦げた匂いと痛みが襲ってきた。
イフリート先生は自身の火を手から出し、私の首を絞めながら、少しずつ焼いているのか。
痛みと苦しさで目の前がチカチカとしだす。
ああ痛い痛い痛い苦しい痛い苦しい熱い痛い。
叫びたくても口からは細い息が漏れるだけで、何の役にも立たない。
ギリギリ酸素が脳に回るせいで、意識を飛ばすことも出来ず、虫のごとく呻く。
しにたくない。
恐怖や痛みで私の顔はぐちゃぐちゃだろうに、それを見るイフリート先生の恍惚とした表情。
これは、きっと私が彼の望む返事をするまで続くのだろう。
しにたくない。
拒否をすればするほど、苦しい思いをしてしまうのだろうか。
しにたくない。
しにたくない。
しにたくない。
「ぅつ、きあい、ます」
細く、小さく肯定の言葉を呟けば、イフリート先生はぱあ、と顔を明るくして、首にかけていた手を離す。
急に支えをなくした力の入らない体は、壁に沿ってズルズルと落ちていく。
そんな私の前にイフリート先生はしゃがみ、回復魔術をかけ、両頬に手を添えた。
「本当かい?良かった。断られたらどうしようかと思ってた」
ちゅ、と軽いリップ音と共におでこに柔らかい感触。
好きでもない男からのキスに、ぶわりと全身に鳥肌が立つ。
これから、恐怖に縛られながら、嫌悪と戦わなければならないのか。
…でも、私が悪いのだ。
「愛してるよ、名無しさん」
熱を帯びた瞳の中に、真っ黒な激情を隠していた彼に、早いうちに気付けなかった、私が悪いのだ。
「ふふ、嬉しいなあ…これで君と、ずっと一緒だ」
後日、イフリート先生は職員室で交際を発表したようで。
たくさんの先生から祝福の言葉をいただいた。
その言葉の中には、大好きな彼からのものもあった。
同僚の、マルバス先生だ。
サラサラとした黒髪、ほんわかとした雰囲気、拷問学の先生というギャップ。
どれもどれも、本当に素敵。
この世の素敵を全て詰め込んだんじゃないかと思ってしまう。
マルバス先生のおかげで毎日職場に来るのが楽しい。
書類を渡すだけで胸が高まる。
質問があるだけで頬が染まる。
近くを通るだけで意識してしまう。
…ただ、あまりこの気持ちを出しすぎてしまうと、仕事に支障が出るので抑えてはいる。
他の皆と態度は変えないように。
話しすぎたりしないように。
できる限り自分の行動を制限する。
欲に忠実である悪魔がよくやってると思う、本当に。
誰にも相談せず、隠し通している気持ちだった。
「名無しさん先生さあ、マルバス先生のこと好きなの?」
ポロリ
吸っていたタバコを落としてしまう。
隠していたはずの私の気持ちを暴露してきたのは喫煙仲間のイフリート先生。
2人で一服していたところ、そんなことを言われ、動揺してしまった。
「え、な、何でですかーイフリート先生?」
落としてしまったタバコを拾いながらそう聞けば、イフリート先生はふーっと煙を吐き、答える。
「んー?何となく?マルバス先生よく見てるよねーって思ってさ」
「あ、はは、…」
皮肉めいたような顔で口角を上げているイフリート先生に対して必死で繕ったように笑う。
どっどっと心臓の音が自分の中に響く。
大きすぎて聞こえてしまうんじゃないかってほどに。
悪いことでは無いはずだが、今まで隠していたせいで、なんだかバツが悪い。
モゴモゴと、どう答えようか言い淀んでいると、顔の右横にイフリート先生の腕が伸びてきた。
「…ねえ、名無しさん先生」
所謂片手壁ドンの状態で、イフリート先生は空いている手に持っていたタバコを焼き消した。
いつもより近い距離に、また別の意味で心臓が跳ねる。
静かに私の名前を呼び、目を細める様子が、とてもセクシーで、直視できない。
「僕、名無しさん先生のこと愛してるんだ」
「…え」
驚いてイフリート先生の方を向けば、熱情を孕んだ瞳と視線が絡まった。
これは、冗談では出せない顔だ。
私も、恋をしているから分かる。
「付き合ってくれない?」
「あの、…!」
返事をしようと口を開いた瞬間、イフリート先生は私の首に手をかける。
彼の表情は変わらないまま、私を見ている。
背筋に汗が伝う。
でも、断らなければ、いけない。
「ご、ごめんなさい!イフリート先生とは、付き合えませっ…ぐっ!」
イフリート先生の行動に怯まないように、断りの返事をしようとした矢先、首にかけていた手に力を込められる。
息が、できない。
気道が狭まり、パクパクと口を開く私を見ながら、イフリート先生は言う。
「聞こえなかった。もう1回言って?」
「ごめ、な…っ!」
拒否は受け取らないとでも言うように、私の返事の途中で更に手の力を込めるイフリート先生。
必死で首を振ろうとすると、じゅう、と焼けこげる音がした。
遅れて、皮膚の焦げた匂いと痛みが襲ってきた。
イフリート先生は自身の火を手から出し、私の首を絞めながら、少しずつ焼いているのか。
痛みと苦しさで目の前がチカチカとしだす。
ああ痛い痛い痛い苦しい痛い苦しい熱い痛い。
叫びたくても口からは細い息が漏れるだけで、何の役にも立たない。
ギリギリ酸素が脳に回るせいで、意識を飛ばすことも出来ず、虫のごとく呻く。
しにたくない。
恐怖や痛みで私の顔はぐちゃぐちゃだろうに、それを見るイフリート先生の恍惚とした表情。
これは、きっと私が彼の望む返事をするまで続くのだろう。
しにたくない。
拒否をすればするほど、苦しい思いをしてしまうのだろうか。
しにたくない。
しにたくない。
しにたくない。
「ぅつ、きあい、ます」
細く、小さく肯定の言葉を呟けば、イフリート先生はぱあ、と顔を明るくして、首にかけていた手を離す。
急に支えをなくした力の入らない体は、壁に沿ってズルズルと落ちていく。
そんな私の前にイフリート先生はしゃがみ、回復魔術をかけ、両頬に手を添えた。
「本当かい?良かった。断られたらどうしようかと思ってた」
ちゅ、と軽いリップ音と共におでこに柔らかい感触。
好きでもない男からのキスに、ぶわりと全身に鳥肌が立つ。
これから、恐怖に縛られながら、嫌悪と戦わなければならないのか。
…でも、私が悪いのだ。
「愛してるよ、名無しさん」
熱を帯びた瞳の中に、真っ黒な激情を隠していた彼に、早いうちに気付けなかった、私が悪いのだ。
「ふふ、嬉しいなあ…これで君と、ずっと一緒だ」
後日、イフリート先生は職員室で交際を発表したようで。
たくさんの先生から祝福の言葉をいただいた。
その言葉の中には、大好きな彼からのものもあった。