2021年御礼企画小説
名前変換設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ハルは朝一番でシャーディス教官に状況報告に行った後食堂へと戻ってきたが、ハルは食事も喉に通らないといった様子で、テーブルと同化したように突っ伏していた。
「ハル、ま、まぁ元気、出せよ…?な?」
コニーがそんなハルの肩を叩いて何とか元気付けようと試みるが、ハルのショックは相当なものであり、テーブルにはみるみると涙の水溜りが広がって行く。
「ううっ、どうしようっ、ずっとこのままだったら…も、元に戻らなかったらっ…」
「ハル、大丈夫!きっとすぐに元に戻るよ!」
「クリスタ…、ありがとう」
ハルは背中を摩ってくれるクリスタに鼻を啜りながら顔を上げると、クリスタの手を握ってお礼を言う。するとクリスタの顔が目に見えて一気に赤くなった。
「うっ!?ううんっ、いいの!ハル!」
そして何故か鼻を摘みながら激しく首を横に振るクリスタを見て、ユミルが眉を吊り上げてテーブルに座っているハルを見下ろし、クリスタを抱きしめて不機嫌そうに言った。
「くそっ、おいハル!クリスタから離れろ!」
「ごっ、ごめんユミル。…そうだよね、気持ち悪いよね、急にこんな体になった私なんて…はは」
それにがくりと両肩を落として、地面に沈んでいきそうな勢いで落ち込むハルに、ユミルはぴくりと片眉を震わせて、顔を引き攣らせた。
「い、いや…別にそういう意味じゃねぇけど…」
ユミルはハルにときめいていたクリスタに嫉妬しただけであって、別にハルを気味悪がっていたわけでなかったため、珍しく落ち込んでしまっているハルに、不本意そうに言い淀む。
「よぉ、ハル」
「ハルおはよう」
そんな中、ライナーとベルトルトが食堂へとやってきた。
二人の表情を見る限り、どうやらすでに風の噂で、ハルの話は耳に入っているようだった。
「話には聞いてるぜ、ハル。しかし、…本当に男になっちまったのか?」
「ぁあ、本当だ。男の子になってる…」
「また随分と色男になったな」
ライナーとベルトルトがマジマジと落ち込んでいるハルの顔を覗き込みながら言うのに、ハルは複雑そうに表情を曇らせて、「あまり嬉しくないよ」と項垂れる。
と、次には食堂に物凄い勢いで走り込んできたミカサが、その勢いのままハルの元へと駆け寄り、座っているハルの両肩をガシリと掴んで前後に揺さぶる。
「ハル!?本当に男になってしまったの!?他に、他に悪いところはない!?一体どうしてこんなことに!!」
「うっ!?ミッ、ミカサ!ちょっと落ち着いて、首が取れるぅ!?」
ガクガクと激しく体をミカサに揺さぶられてハルの首が取れそうになっていると、近くの柱に背中を寄せて様子を見ていたアニが、ミカサの肩を掴んで止めに入った。
「ミカサ、アンタちょっと落ち着きな。多分だけど、こうなった原因は昨日、サシャがハルに食べさせたキノコだと思う…」
「「え!?」」
その言葉に周りにいた全員が素っ頓狂な声を上げて、そういえばと先程から少しハルとは離れたテーブルで息を潜めるようにしてパンを食べていたサシャの方へと視線を向けた。
いつもならハルにベッタリと張り付いている筈なのに、何故か気配を殺していたサシャに、ライナーは首を傾げて問いかけた。
「キノコって…なんだそれは」
「う…」
「昨日の山中訓練の帰りに、サシャが道端に生えてた怪しいキノコを、ハルの口に放り込んだんだ」
サシャが肩を竦めて話すのを躊躇していると、アニが代わりに事の次第を皆に向けて話した。
ミカサはそれに、縮こまっているサシャの元へと歩み寄ると、少々凄みながらいつもより低い声で問い詰める。
「何でそんなことをしたの、サシャ」
サシャはミカサの威圧感にゴクリとパンを飲み下して、冷や汗を額に滲ませながら慌てふためき、ミカサを見上げて必死に弁解する。
「ちっ、違うんですよ!あれは不可抗力でっ!足元にあった石に躓いて転んだ拍子に、ハルの口にキノコが入ってしまったんです!」
その話を聞いて、ベルトルトが額を抑えながら「そんなベタな…」と溜息混じりに溢すと、食堂の廊下からもうすっかり耳馴染んでしまったある二人の言い争いが聞こえてきた。
「っエレン!!てめぇの所為でっ、全然っ眠れなかったじゃねぇかよ!?なんで俺の腹に足乗っけて寝てやがんだよクソが!」
「仕方ねぇだろ!?お前だってたまにイビキかいてんだろ!?こっちだって迷惑してんだ!!そのくらい大目に見ろよ馬面!!」
「あぁ!?何だと!?」
「何だよ!?」
「ちょっ、もう二人とも朝からやめなよぉ」
ジャンとエレンが器用に胸倉を掴み合いながら食堂へと入ってくるのを、アルミンが一生懸命諌めようとしていたが、ふとハルを取り囲むようにしてテーブルに集まっているミカサたちを見て首を傾げた。
「あれ、皆?集まってどうしたの?」
「それがな…ハルが男になっちまったんだよ」
ライナーが胸の前で腕を組み神妙な面持ちでアルミンの問いに答えると、三人は同時にぽかんと口を開けて呆然とする。
「「え?」」
それから、ジャンとエレンがアルミンに覆い被さるようにして、前のめりになって驚愕の声を上げた。
「ハルが男に!?」
「何馬鹿なこと言ってんだよ!?そっ、そんなことあるわけねぇだろ!?」
「ちょ、重いよ二人とも!」
それにアルミンが抗議の声を上げる中、身を乗り出しているエレンとジャンに向かって、ベルトルトは真面目な表情で頷いた。
「いや。本当なんだよ」
それにジャンとエレンは青褪めて、椅子に座っていたハルの傍へとバタバタと駆け寄る。
そこでハルの姿を見て、二人は再び驚愕した。
確かに少し体つきが骨張っているし、喉仏も出来ている。元々中性的な顔立ちだったため顔つきに変化はあまり感じないが、丸みがあった輪郭が角ばっているようにも見える。
「ハルっ!?お前一体どうしちまったんだ!?」
ジャンがハルの傍に片膝をついて、両腕を掴んで詰め寄ると、ハルは眉をハの字にして言った。
「朝起きたらこんなことになってたんだ。…ごめんジャン、驚かせてしまって…」
そう言うハルにジャンは驚きつつも、本人がかなり落ち込んでいるということが伝わってきて、ジャン自身も動揺した心を落ち着かせようと深呼吸して言った。
「い、いやっ…お前が大丈夫なら、俺はいいけどよ…」
「っありがとう、ジャン」
それにハルはほっと胸を撫で下ろしたようにジャンに微笑みを浮かべて見せる。
「!?」
その笑顔にジャンがドキッとして胸を抑え赤面したのを、周りに居たミカサ達は、剣呑な表情でジャンを見つめていたのだった。
※
結局訓練が始まって終わるまでの間に、ハルの身体が元に戻ることはなく、キース教官の指示で今晩だけは食堂のベンチに敷布団を敷いて、寝ることになったハルは、一人暗く広い食堂の端に横たわり、高い天井を見上げなが寂しげに呟いた。
「うう、広過ぎる…それに寒いし、気味悪いしっ…皆と一緒に寝たい…」
「ハル?」
「うわぁ!!?」
そんな時、突然名前を呼ばれて、ハルは悲鳴を上げて布団から飛び起きると、食堂の扉を開けて、ハルの方を見るランタンを持ったジャンの姿があった。
「…そんな驚かなくてもいいだろ」
「ごっ、ごめん…!」
ジャンは不本意そうに顔を顰めるのに、ハルは顔を硬らせ、動揺を隠すように頭の後ろを触りながら苦笑を浮かべた。
そんなハルの顔を見て、そういえばハルは幽霊沙汰にはかなりのビビリだったことを、ジャンは思い出していた。
ジャンはランタンを足元に置くと、廊下から毛布を持ってきて、ハルの傍へと歩み寄った。
「寒くないか?毛布、持ってきたぞ」
「うわっ、ありがとうジャン!助かるよ…此処凄く寒くてさ」
ハルがジャンを拝みながら感謝すると、ジャンは「だろうな」と苦笑しながら、ハルの上に掛かっていた薄い掛け布団の上に持ってきた毛布を掛ける。
そんなジャンに、ハルは首を傾げて問いかけた。
「もしかしてジャン、心配して様子、見に来てくれたの?」
それにジャンはハルの傍に片膝をついて座ると、首の後ろを少し照れ臭そうに触りながら言った。
「別に。…俺達の部屋に毛布が余ってたから、マルコが持ってけって言うんで来ただけだ」
少しぶっきらぼうな言葉になってしまったが、ハルは嬉しげに微笑みを浮かべると、「ありがとう」とジャンに向かって頭を下げる。
そんなハルの頭に、ジャンはポンと手を乗せて顔を覗き込むようにして問いかけた。
「これで、少しは眠れそうか…?」
ジャンが問いかけると、ハルは小さく頷きながらも、少し言うのを躊躇するように、小さな声で言った。
「…うん。…でも、その…ちょっと、寂しい…かな…なんて」
「!」
ハルがこういうことを素直に口にするのは珍しいことで、ジャンは少し息を呑んだ。しかしハルに頼られるのは嫌な気分でもなくて、ジャンはハルの頭をわしわしと撫で回した。
「…寝るまで傍に居てやるから、さっさと寝ろよ」
その言葉に、ハルは嬉しげに目を細めて笑い、こくりと頷くと、布団の中に体を埋める。
「ありがとう、ジャン。…明日には、治ってるといいなぁ」
「…そうだな」
寝そべるハルの頭を撫でながら、ジャンが穏やかな声で頷くと、ハルは安心した様子で目蓋をゆっくりと閉じ、そしてジャンの服の袖を控えめに指先できゅっと摘んで言った。
「ジャン…ここ、眠るまで掴んでいてもいい?」
それにジャンは苦笑して、自分の服の裾を掴むハルの手を握った。
「掴むなら、こっちにしろよ」
それにハルは閉じていた目蓋を少し驚いたように開けたが、すぐに破顔して、「ありがとう」と囁くようにお礼を言って、再び目を閉じた。
ハルの手は指先まで冷えてしまっていたが、握っていると段々と温かくなってきて、やがて規則正しい寝息が聞こえてくるようになった。
ジャンはそんなハルの寝息を聞いていると、なんだか急に抗い難い眠気に襲われて、そのまま壁に寄り掛かるようにして、寝入ってしまった。
そして朝、目が覚めると、食堂にはガラス窓から朝日が差し込んでいた。
「っさっむ。…おい、ハル。朝だぞ起きろー」
ジャンは軽く身震いしながら、眠気の含んだ声で、スヤスヤと寝ているハルを起こそうと体を揺さぶると、ハルは薄い目蓋を震わせて、ゆっくりと目を開けると、ベンチから上半身を起こした。
「ん…おはよ、ジャン…」
そう言って目元を手の甲で擦ると、ハルの体に掛かっていた掛け布団が、ずるりと地面に滑り落ちた。
そしてその時、ハルの肌けたシャツの胸元が露わになって、ジャンはギョッと目を見開いた。
第二ボタンまで開いてるシャツの隙間から、ハルのふんわりと柔らかそうな膨らみと谷間が見えた。
「っ!?」
ジャンは一瞬にして顔に熱が駆け上がってくるのを感じながら、反射的にハルから顔を逸らして言った。
「ハルっ…!わ、悪ぃっ!ま、前っ!ちょっと閉めてくれっ…も、元にも戻ってっからっ(っつーか、ハルってあんな胸あったか?!めちゃくちゃ柔らかそうなんだが!?)」
「え?」
ハルは徐に胸元を見下ろして、胸の膨らみが戻っていたことに安堵していたが、真っ赤な顔をして顔を手で覆っているジャンの横顔を見て、はっと慌てふためく。
「ごっ、ごめん!し、下着脱いでいたから…っうわぁ!?」
「なっ!?」
焦ったハルは細いベンチに寝ていたことを忘れてしまって、バランスを崩し地面に落ちてしまう。
それにジャンは考えるよりも先に体が動いてしまい、ハルの体を抱き止めると、自分の胸元にハルの胸が押しつけられる感触に、思考が宇宙の彼方へと飛んで行く。
「っご、ごめんジャン!大丈夫…って、ジャン?」
ハルは身体をジャンから離し、ジャンの顔を見ると、鼻からダラリと血を流して失神していた。
その後ジャンは朝食を取るため食堂へとやってきたライナー達に医務室へと運ばれ、目が覚めたのはその日の正午を過ぎた辺りだった。
完
追記→パピコ様・飯島様へ
リクエスト企画に応募してくださってありがとうございました!1ページに納めようと思ったのですが思いの外かなり長くなってしまいました(汗 きっとジャンの愛は夢主が男になっても変わらない筈!!←w そしてハルは普段はサラシなので普段の見た目よりは胸があったという事に、勝手にしましたw
あざらしより