2021年御礼企画小説
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『もしも夢主のお尻が魅力的だったら?』
「貴様らもっと気合いを入れて登らんかっ!!遅いぞっ!!」
キース教官の怒号飛び交う中、104期訓練兵は三人一組み対抗で、十五メートル登坂の訓練を行っていた。
垂直に吊るされたロープを腕の力だけで十五メートルまで登り、降下した後、次の者とバトンタッチしてそれを三周繰り返す。上位で終えた班程多く加点を貰えることになっている為、いつになく訓練場は白熱した雰囲気に包まれていた。
「ひっひぃっ…ミッ、ミカサ、エレンごめんっ、僕のせいで遅れが…」
同じチームのミカサとエレンに、アルミンは三周目最後のロープ登坂を終えて、地面に崩れながら謝る。
「問題ない。私が巻き返す」
ミカサはゼエゼエと地面に四つん這いになって息を上げているアルミンにぐっと親指を立てて見せると、地面を蹴ってロープに勢い良く飛びついた。
現在一位はライナーとジャン、そしてハルの班だった。既にアンカーのハルはロープを五メートル程まで登っており、ミカサはその後を追う形になった。
隣の班のミカサがロープを登り始めたのを確認したジャンは、ロープを必死に登るハルを見上げ、両手をメガホンのようにして声を掛ける。
「ハル!ミカサが登り始めたぞっ!!」
「頑張れハル!その調子で登って行くんだ!!」
ライナーもジャンと一緒になってハルに声援を送る中、エレンも負けじとミカサを見上げて声を掛けた。
「頑張れミカサ!!お前なら追いつけるぞ!!」
「っ!(エレンにっ、応援されている!!)」
エレンの声援はミカサにはドーピングするよりも効果的であり、ハルはふと刺すような視線を感じて目線を下に下ろすと、ミカサが両目の瞳孔を開いて自分を睨み上げながらロープを登ってくる光景が目に飛び込んできた。それに思わずハルは「ひっ」と喉を引き攣らせる。
「(怖い怖い怖い怖いっ…!!)」
ハルは半泣きになりながら再び視線を上げ、十五メートル地点に赤い印が付けられている場所を目指して、必死にロープを登り始めた。
ロープ登坂の訓練はかなり厳しい訓練の中の一つであり、腕を伸ばし体を上へと引き上げる度に、体の重みが段々と増していき、握力も失われていく為、少しでも気を抜けばロープから手が滑ってあっという間に下へと落下してしまう。
ジャンとライナーの奮闘のおかげで首位を維持出来たまま順番が回ってきたが、自分の後を追いかけて来ているはあのミカサだ。五メートル距離が離れているところで、全く安心は出来ない。
「これだけ離れていれば、ハルが先に上に着くか…?」
ライナーがハルとミカサの間に空いた距離を見上げながら言うと、エレンは「どうかな」と口元に挑発的な笑みを浮かべた。
「いや、ハルの筋力はミカサに大分劣ってるからな…油断してると抜かされちまうぜ?現に距離も縮まって来てるからな」
そんなエレンに、ライナーの隣に立っていたジャンが「はあ!?」と声を上げてエレンの胸倉に掴み掛かった。
「なんだよエレンっ!?うちのハルを舐めてんじゃねーぞっ!?」
「はあ?うちのハルってなんだよ!お前はハルの親父か!?」
二人が何時もの如く額をグリグリと押し付けて言い争いを始めたのを横目に、アルミンとライナーはミカサとハルの勝負を冷静に見守っていた。
「凄いよミカサっ…、かなり距離が詰まってきた!」
「流石ミカサだな…。だが、もう少しでハルも十五メートルに到達するぞ」
アルミンとライナーの実況に、エレンとジャンの二人も一度争いを止め、一緒になってミカサとハルを見上げた。
そして、ふと口を引き結び、静かになる。
「「……」」
「…?あれ、みんなどうしたの?急に静かになって…」
アルミンは急にライナー達が押し黙って、二人の姿をじっと見上げているのに、怪訝な顔で首を傾げると、ライナーが「あ、ああ…」と少し答えを躊躇するように腕を組んで言った。
「…良い光景だなと、思ってな」
「え?」
ライナーが歯切れ悪くそう言うと、アルミンは傾げていた首を今度は反対側に傾げる。すると、ジャンは顎に手を当てて、ミカサとハルの、主に『お尻』を交互に見比べながら悩ましげに言う。
「ミカサの引き締まった尻もいいが、ハルの細ぇのに柔らかそうな尻も魅力的なんだよな…、堪んねぇよな」
「…あ、そういうこと」
「おっ、おい何言ってんだよお前ら!?変な話してんじゃねぇよ!?」
アルミンがライナーとジャンの顔を見て呆れた様子で肩を竦める中、エレンは純粋にも顔を赤くして慌て始めた。
それにジャンはエレンをギロリと睨みつけると、身を乗り出すようにして言った。
「おいエレン、お前それでも男か!?あの光景に浪漫を感じねぇのかよ?!」
「はあ!?なんだよそれ!?」
エレンが顔を顰めて訳が分からないと声を上げると、ジャンは肩を竦めてやれやれと首を横に振り、軽く舌を打った。
「っち、お前に同意を求めた俺が馬鹿だったよ」
「ジャン、俺は激しく同意だ」
そんなジャンにライナーは肩を組んで言うと、ジャンはぐっとライナーに親指を立てた。「流石ライナー、お前ならわかってくれると思ってたぜ」。
そして二人は笑みを浮かべながら拳を突き合わせるのを、エレンは当惑した様子で見つめながらアルミンに問いかける。
「なあアルミン、アイツら一体何やってんだ?」
「さ、さあ。別に気にすることないんじゃない」
それにアルミンは苦笑して答えると、突然訓練場に強い風が吹き抜けた。
ビュオーっ!!
「!?」
最近雨が降っていなかったため、その風は訓練場の土を舞い上げながらエレン達に襲いかかった。それはロープを登っていたハル達も例外ではなく、ハルはまさに十五メートルの赤い印に手を伸ばした時に風に吹かれてしまった為、ロープが大きく揺れ、ずるりとロープを握っていた片手が滑ってしまい、体が地面に引き込まれるように落ちてしまう。
「うわぁ!?」
「「ハル!!」」
手を滑らせて落ちてくるハルに、エレンとジャンは反射的にハルの下へと滑り込んだ。
しかし、幾ら二人掛とはいえ、十五メートル上から落ちてくる人間を受け止めることは容易ではない。
エレンとジャンはハルを受け止めるというよりは結果的に押し潰される形になり、蛙が潰れたような声を上げた。
「おいハル!?平気か!?」
「ハルっ、大丈夫かい!?」
ライナーとアルミンは落ちてきたハルの元へと駆け寄る。
ハルは「いてて」と腰を摩りながら、心配顔で自分を見下ろす二人を見上げた。
「びっ、びっくりしたっ…な、何とか平気だよ。…って、」
しかしそう言いながらお尻の下に違和感があり、ハッとして視線を下に落とすと、ジャンとエレンが自分の下敷きになって仰向けに倒れていて、ハルは慌てて飛び上がった。
「ジャン!?エレン!?ごっ、ごめん二人共!血がっ、鼻血が出てるじゃないか!!?」
お尻に敷いてしまっていたジャンとエレンの鼻からは鼻血が流れ出ていて、ハルは青褪めた顔でジャンとエレンを見下ろす。背中に青空を背負ったハルの顔を見ながら、心此処に在らずといった様子で、ジャンとエレンは仰向けに倒れたまま答えた。
「い、いや、大丈夫だ…」
「こ、こんなことどうってことねぇーよ」
「そんな訳ないって!!っ教官!!キース教官ーっ!!」
ハルは酷く慌てながらキース教官の方へと走って行くのに、ライナーがエレンとジャンの傍に屈み、顔を覗き込んだ。そんなライナーの顔は、二人を心配しているというよりは、何処か羨ましそうであった。
「…おいエレン、ジャン。どうだった?」
その問いに、エレンとジャンは横たわったまま顔を見合わせると、ぐっと親指をライナーに立てて、言った。
「「最高だった」」
完
追記→仕置人様へ
リクエストありがとうございました!!あざらし的にも夢主のお尻の魅力を書いてみたかったので、とても良い機会を頂けて嬉しかったです!ありがとうございます!^^ あざらしより。