君を知りたい
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「すごいよハル!とっても美味しそうに焼けたね!」
食堂に甘い香りが漂う中、クリスタが大きな空色の瞳をきらきらと輝かせながら、胸の前でパチパチと手を叩いて弾んだ口調で言うのに、ハルもつられて笑顔になって、オーブンから取り出した焼き菓子の出来栄えに、満足気に頷いた。
「クリスタのも凄く美味しそうだよ!」
今日は珍しく訓練が午前中で終わった為、クリスタの提案で食堂担当のモニカさんに許可を貰い、昼食後の食堂を借りて焼き菓子を焼き、同期の女子達でお茶会をすることになったのだ。お茶はアンナとミーナが二人街に出た時に買ってきたオススメの紅茶があるらしく、是非ともお茶会で振る舞いたいとのことだったので、ハルとクリスタはお茶のお供の菓子担当となったのだった。
思っていたよりも美味しそうに焼き上がったクッキーの出来栄えに二人共満足していたが、動物の形や星の形など生地を作るのが面白くて夢中になっていた所為で、随分と焼き過ぎてしまった。
「ちょっと多かったかな…?」
ハルがそう言って苦笑を浮かべ、クリスタに肩を竦めてみせると、クリスタはうーんと考え込むように顎に手を添え、ややあって胸の前でポンと手を叩き、ハルにある提案をした。
「そうだ!ハル、残ったクッキー、ジャンにあげたらいいんじゃない?」
「…え?」
「ほら、前に言ってたでしょ?入院してた時、ジャンが足蹴くお見舞いに来てくれたから、そのお礼がしたいって。それとも、もう何かお礼したの?」
首を傾げハルの顔を覗き込むように問いかけてきたクリスタに、ハルは「う」と少々気後れしたように眉間に眉先を寄せ、ぽりぽりと頬のあたりを指先で触りながら、自分の焼いたクッキーに視線を落とした。
「確かに…まだお礼は出来ていないけど…」
「けど…?」
その先の言葉を促されて、ハルは苦笑する。
自分が去年の秋に脚の大怪我を負ってトロスト区の病院に半年入院をしていた時、ジャンは足蹴く見舞いに来てくれて、リハビリ等も手伝ってくれた。その時のお礼をしなければと思っていたのだが、中々その機会を得られず、またどういう方法でお礼をすればいいだろうかと悩んでいる内に、すっかり時間が経ってしまっていたのである。
クリスタの提案はジャンへ礼を果たすのに良いきっかけとなりそうだったが、ハルはそもそも、自分の焼いたクッキーでジャンが喜んでくれるのかが不安だった。
「う、嬉しいかな…」
ハルが首の後ろを片手で触りながら、自信なさげにぽつりと呟くと、クリスタがずいっとハルに身を乗り出して、声高く言った。
「そんなの嬉しいに決まってるよ!ハルのっ、手作りのっ!クッキーなんだよ!?」
「あはは…」
クリスタの言葉は嬉しいに尽きるが、ハルはクリスタに「ありがとう」と礼を言いながらも、やや不安を残したままだった。
その後、クリスタとハル、ユミルとアニに割り振られている部屋で開催されたお茶会には、お茶担当のアンナとミーナ、その他ミカサやサシャ達も参加して大勢で行われた。紅茶と焼き菓子を堪能しながら、他愛の無い話や、アンナのフランツの惚気話を聞いたりと楽しい時間を過ごして、その後夕食が終わった後、ハルは夜の厩舎当番だった為、防寒をして外へ出た。
季節は真冬––––
訓練場はあたり一面既に真っ白に染まっていて、元々何もない殺風景が、さらに真っ新になった。
冷たい風が山間から吹き抜けてきて、降り積もった雪の表面を攫い、本来なら見えない風の形を雪の粒が舞い上がって、目に露わにさせている。
太陽が沈んでぐっと気温も下がり、外に出て間もなく鼻先が悴んで、耳当てや手袋をしていても、耳と指先がじんじんと痛んだ。
ハルは白い息を吐きながら降り積もった雪中を掻き分けるように厩舎へ向かい、震える手で厩舎の扉の鍵を外すと、身を潜り込ませるように中へ入り、後ろ手に扉をばたりと閉めた。
厩舎の中は暖房設備があるわけではないが、馬達の体温でほんの少しだが温かい。
ハルは入り口のすぐ傍にある篝火に、防寒着の内ポケットから取り出したマッチで火を灯すと、今度は厩舎の突き当たりにある馬具置き場の傍の篝火にも同じように火を灯した。そうすると、薄暗かった厩舎の中が明るくなり、馬たちの様子が良く見えるようになった。この厩舎の中には十頭程の馬が居て、ハル達訓練兵が乗馬訓練をする時にいつも世話になっている比較的気性も穏やかな子達ばかりが集まっている。他にも厩舎は二棟あるが、他の二棟は一つ下の105期の訓練兵と、一つ上の103期の訓練兵がそれぞれに清掃を受け持っている。
本来ならば厩舎清掃は朝方に行うものなのだが、早朝に馬術訓練や行軍訓練等がある場合には、今回のように夜清掃をすることになっていて、ハル達104期の訓練兵は後者に明日は当て嵌まる。冬の行軍訓練は身体的にも精神的にもかなり厳しい為、恐らくだが同期達は今日、皆早めに睡眠を取る筈だろう。
ハルは清掃用のフォークを手に取ると、奥の馬房から順番に清掃に入る。清掃する馬房にいる馬に少しの間馬房を出てもらい、手際良く藁をフォークで掻き積み上げて、汚れをボロ入れにかき集め、汚れて撤去する分の藁と同量の新しい藁を広げる。
これがかなりの重労働であり、慣れないうちは時間がかかってしまって馬達に「早く」と鼻を鳴らされていたが、今ではすっかり体に馴染んで、急かされることも無くなった。
身体を動かしていれば些か寒さも和らいだが、ふと足を止めて一息つくと、汗が一気に冷えて体温をみるみる奪われていくのが分かった。
ハルは日頃お世話になっている馬達に気を配りながらも、身体を冷やさないようせかせかと動いて馬房掃除を終え、ボロや汚れた寝藁を一輪車に積み上げると、ふうと一息吐いて、厩舎の上部にある小さな窓を見上げた。
掃除を始めた頃はそんなに降っていなかった雪が激しくなり、風もそれなりに出て来たようで、ひゅおおと厩舎の中にどこからともなく風の通り抜ける音が響いていた。
ハルは手にしていたフォークの柄を脇に抱えるように持つと、分厚い手袋をはいた右手で防寒着のポケットに触れた。
すると、ポケットの中でかさりとビニールの袋が音を立てる。
中には、ナッツや小さく刻んだドライフルーツが混ぜてある、今日のお茶会の為に焼いたクッキーが、透明なビニールの袋に赤い紐で口を結んだ簡単なプレゼントの形になって入っている。
これは夕食時に、ジャンに渡そうと思っていたのだが、結局タイミングがなくて渡せなかったものだ。否…渡さなかったというのが、正しいのかもしれないが。
「…そもそもジャンは甘いもの…好き、なのかな…?」
ふと、自分の吐き出す白い息に紛れ込ませるように、ハルは一人言を呟いた。
ジャンが甘いものを食べているところは何度か見たことがあって嫌いではないはずだが、特段好きなように見えるわけではない。
そう考えて、ジャンの好きなものを、ハルはよく知らないことに気づく。
ジャンはオムレツが好きだと風の噂で聞いたことがあるが、その他に、何が好きなのか全く思いつかないのだ。
「ジャンの…好きなものって…なんだろう」
ハルはフォークの棒に顔の横を押し付けるようにして、再び呟く。
そんな時、「ブルルッ!」と傍にいた茶毛の馬が不満そうに鼻を鳴らした。
「ああ、ごめんごめん!」
その子は厩舎の一番扉側の馬房の子で、考えに耽っていて馬房の真ん前に捨てるボロや藁を載せた一輪車を置いていたため、気になって鼻を鳴らしたのだろう。馬はじれたように尻尾を振って首を上下に揺するのに、ハルは慌ててフォークを所定の位置に戻すと、防寒着のフードを被って、ずっしりと重い一輪車を押して厩舎の外に出た。
すると、激しい雪風が吹き付けてきて、ハルは思わず寒さに「ひやあ!」と声を上げた。
「さ、寒いっ…!」
視界は激しい雪の所為で二メートル先程しか見えず、雪が降り積もってしまって、一輪車を近くのボロ捨て場まで押していくのも一苦労だった。
被ったフードはあっという間に風で飛ばされて、首の後ろでばたばたと音を立てている。
一輪車は力一杯押しても少しずつしか進まない挙句、どんどんと前輪が雪の中に埋まっていくのに、ハルが四苦八苦していると、ふと後ろから一輪車の取っ手に手が伸びてきた。
「!」
自分よりも大きな手が重なって、背中にとんと軽い衝撃が走る。
毛布でも背中からかけてもらったような温もりを感じ、右の耳元に、はぁっと温かな吐息が掛かって、ハルは後ろを振り返る。
「頑張れ」
振り返った先には、雪に濡れたジャンの顔がある。お互いの鼻先が触れそうになって、ハルは驚いて身を引いた。
「ジャっ、ン!?どっ、どうして此処に…」
「外の見回り当番終わったトコ。取り敢えずこいつをどうにかしちまおうぜっ」
ジャンは驚いているハルの頭に積もった雪を払うようにわしわしと撫でると、見回り用に手にしていたランタンをハルの防寒着のベルトループに引っ掛け、一輪車の前に回って枠を掴んで引っ張った。ハルも取っ手を押すと、殆ど進まなかった一輪車が、嘘のように前進を始めた。
ジャンのおかげで無事ボロ捨て場に到着し、一輪車を傾げて中を捨てると、ハルは深々と疲労と安堵を含んだ溜め息を吐いて、ジャンに礼を言う。
「っありがとう…ジャン!本当に助かったよ」
それにジャンは「偶々見かけただけだから」と肩を竦めて、両腕を手で温めるように摩りながら言った。
「っにしてもすげぇ雪だなっ…!ちょっと厩舎ん中入れてくれっ、マジで寒ぃっ…!」
「うん!そうしよう…っ、あぁ、寒すぎる…!」
ハルとジャンは空になった一輪車を押して、パンを狙って追いかけてくるサシャから逃げるように厩舎へ向かった。
そして二人は厩舎の中に飛び込むように中に入ると、ジャンは防寒着に張り付いた雪をバシバシと両手でほろう。ハルも軽く雪をほろって、一輪車を戻すと、ジャンが腰に付けたランタンを取り外して、入口近くに置いてある木製のデスクの上に置いた。作業台として使われている長いデスクだったが、背の高いジャンはハルがランタンを置いた横にベンチがわりにして座った。
「あったけぇ…」
ジャンがブルっと身震いしながら息を吐くように言ったのに、ハルは念のため部屋から持ってきたタオルを布製のバッグから取り出す。
「サシャが今晩は荒れる気がするって言ってたけど…ここまで吹雪くとは思わなかったよね」
「ぁあ、こんな天気の日に厩舎当番と見回りなんてついてねぇな、俺ら。明日は雪中行軍だってのによぉ…」
「っ本当。…見回りお疲れ様、ジャン。良かったらこれ使っていいよ!頭濡れてるから、そのままだと風邪引いちゃうし。まだ未使用だから安心してね」
「あぁ。サンキュー…」
と、ジャンはハルから白いタオルを受け取る。そのタオルはふかふかで、洗い立てのようないい匂いがした。別に野郎じゃなくハルの使用後なら気にしない…なんて言ったら絶対に引かれるので思っても言わないが、ふと自分の頭を拭こうとして、ハルの頭も降り積もった雪が溶けて濡れてしまっているのが見え、ジャンは受け取ったタオルをハルの頭に押し付けた。
「って、俺の前にお前が使えっ!」
「うわぁっ!」
ジャンにわしわしと豪快にタオルで頭を拭かれて、ハルは驚いて声を上げる。
「人の心配する前に自分の心配しろ、ただでさえお前寒さに弱いんだからよ…」
「ぁ、ありがと…っ」
ジャンに「仕方ない奴」と呆れ声で言われ、ハルはタオルの下でくぐもった声で礼を言うと、乱れた前髪とタオルの合間から、切長な琥珀色の瞳とふと目が合った。
間近で見るジャンの瞳は、篝火の光を受けてより一層深い色になって、飴色のように瑞々しく輝いていた。その瞳を見つめていると、胸の奥がぎゅっと締め付けられるような気がして、ハルは目を細める。
「鼻先、赤くなってる」
そんなハルの心中を知ってか知らずか、ジャンはぼんやりと自分を見つめてくるハルにふっと破顔して、赤くなった小さな鼻を摘んだ。
「うっ」
「(あー…鼻だけじゃなくなった)」
すると、ハルの顔がみるみる赤くなっていくのがはっきりと分かって、擽ったいような、何ともいえない気持ちになる。
ハルは病院を退院してから、以前よりも自分に対していろんな感情を見せてくれるようになったと思う。
ただの友人から、仲の良い友達になって、そこから少し進歩できているようで嬉しいやら、恥ずかしいやらが胸の中で拮抗していた。
ジャン自身、直接的にハルへ好きだと伝えていないものの、恐らく気づかれているだろうなとも思っていたし、ハルの方もジャンが自分に好意を寄せてくれていることは、風の噂だが知っていた。同期達が二人の関係を散々いじり騒いでいれば、お互いの耳に入ってしまうのも自然なことだった。とはいえ、ハルはその件についてジャンに追求しなかったし、ジャンも現段階では気持ちを伝えようとはしていなかった。
それはお互いに、今の関係を壊したくないという気持ちが先立っていたからだ。
ハルはじっと自分を見つめてくる瞳を、落ち着かない心情で見つめながら、鼻を摘まれた状態のまま話し出した。
「ザン、はまいものすい?」
「…何だって?」
ジャンは何と言っているのか聞き取れず、小さな鼻を解放すると、ハルは鼻先をさすりながら、もう一度同じ問いを繰り返した。
「っジャンは、甘いもの好き?」
「甘いもの…?別に好きでも嫌いでもねぇけど…どうした?」
ジャンは怪訝そうに首を傾げるのに、ハルはとても迷ってしまった。ポケットの中にあるクッキーを今渡すべきか、それともやめるか。そうして悩んで、ハルは渡さないことを選んだ。何せ厩舎の掃除をした後だし、何となく厩舎の中で食べ物を渡すのは憚られたからだ。
ハルは頭に乗ったタオルを、今度はジャンの頭の上に乗せて、短い髪についた水気を拭いながら言った。
「気になったんだ。…それで、聞いてみた。私、ジャンが好きなものを、よく知らないなって思って…」
「…俺の、好きなもの?」
「うん」
ジャンはハルが優しく自分の頭をタオル越しに触れるのに少しドキドキしながらも、聡明なハルの瞳をじっと見つめる。
すると、視線が合う。それから、ハルは少し戸惑ったように瞳を震わせて、それから困ったように目を細め、肩を竦めて笑う。
「ずっと、お礼がしたかったんだ。でも、どうしたらいいのか分からなくて…その、ジャンが私のお見舞いとか、リハビリをたくさん手伝ってくれたお礼、なんだけど…」
「そんなの別に、気にしなくていい。俺がやりたくて、やってただけなんだし…」
「それでも、私はとても元気付けられたし、励みになったんだ」
ハルは瞳に真面目な色を湛えて、ジャンの頭を拭ったタオルを肩にかけると、真っ直ぐにジャンの顔を見つめる。ジャンはあまりにも真剣な眼差しを向けられて、反射的に背中を正した。
「だから、お礼は…失敗したくなくて。ジャンに喜んでもらえること、嬉しくなることって…何なんだろうって、沢山考えたんだ。でも、結局分からなくて。そうしたらこんなに、時間が経ってしまって…」
ハルは本当に悩んでいるようだった。今まで自分に対してそんな悩みを抱えていたことは知らなかったが、悪い気はしなかった。日頃自分の喜ぶことを考え、悩んでくれていたというのは、いつも自分のことを思ってくれていたということになる。口にしたら怒られるかもしれないが、ジャンにとってそれは嬉しいことでもあったからだ。
悩ましげに眉を顰めて、目を伏せてしまったハルに、ジャンは自然と微笑みを浮かべて、ハルの頭に片手をぽんと置いた。
「俺が好きなものは、お前が一番、詳しいだろ?」
「え?」
ハルの目が、驚いた猫のように丸くなる。その顔が、ジャンは可愛らしくて好きだった。
「嬉しい…わ、お前がそんなふうに思ってくれてたって、知れただけでも」
ジャンはついつい緩んでしまったようなふにゃりとした笑顔になって、わしわしとハルの頭を撫でる一方、ハルは煮え切らない顔をしていた。そんなハルの顔を少し覗き込むようにして、頭を撫でていた手で、ひんやりとしたハルの頬に触れる。
「ハルは、そんなに俺に興味があるんだな?」
少し揶揄ってやるつもりで言ったジャンは、きっと恥ずかしがって誤魔化してくるか、慌てるかのどちらかの反応が返ってくると思ったが、予想とは違う反応が飛んできた。
「興味、あるよ」
「!」
ハルは少し恥ずかしげに言った。思わずどきりとして息を呑んだジャンの、頬に触れている掌に、ハルは頬を僅かに擦り寄せて、じいっとジャンを見つめて言った。
「ジャンのこと、もっと知りたい。君を知って、君が笑顔になることを、たくさん…してあげたい」
「っ」
その言葉が、掌に触れるハルの頬の柔らかさが、冷たい肌が、徐々に熱を持ちはじめる感覚が––––
甘えるような、縋るようなハルの表情に、ジャンは体と感情が燃え上がるように熱くなるのを感じて、ごくりと唾を飲んだ。それは、その反応は、不意打ち過ぎるだろっ!
そう思った瞬間に、鼻の奥がつんと痛んで、それがだらりとこぼれ落ちてくるのを感じた。
ハルは突如、ジャンが鼻血を流し出したのを見て、思わずぎょっとする。
「なっ、ジャン!?はっ、鼻血が出てるよっ!?」
あわあわと慌てるハルに、ジャンは自身の鼻を摘んで、厩舎の古い板張りの天井を仰ぎながら、
「のぼせた…」
と、舌足らずに呟くと、ハルが怪訝な声音で「こ、こんなに寒いのに?」
と首を傾げて言った。
ハルは自分が喜ぶことが分からないと言うが、無意識にいつも、自分を喜ばせて、こうも浮かれさせているのを、本人は無自覚なのだ。それは同期や後輩、先輩達から『人誑し』と呼ばれているハルの特性なのかもしれないが…。
この調子じゃ心臓が持たないと思いながらも、こうやってハルに翻弄させることも、悪くないと思えるのは…きっとハルだからなんだろうと、心の中で思ったのだった。
『君を知りたい』
完
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